２（２２） ２（２２）
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| (2-752)(2-753)(2-754)(2-755)(2-756)(2-757)(2-758)(2-759) わたしはまず城壁と、さきほど通った暗い都門を調べ、それから、自分たちが来た闇の道を逆に辿（たど）り、瞳（ひとみ）をこらして調べていきました。いたるところ、恐怖がわたしの心を襲い、静けささえ、わたしを不安にさせました。わたしは家へ戻ってみました。ひょっとしたら彼女は、家へ帰ったのかもしれない。 わたしはそんな気がして、足が自然にそちらに向いました。だがそこにはすでにダナイ人が侵入し、あらゆる棟（むね）を占拠（せんきょ）していました。盛んな火が風にあおられて屋根の天辺（てっぺん）にまで巻き上がり、熱い炎が狂ったようにめらめらと天に向って立ち上がっていました。(2-752-759) (2-760)(2-761)(2-762)(2-763)(2-764)(2-765)(2-766)(2-767) わたしはプリアムスの館へ足をのばし、砦へ行ってみました。ユノ（ギリシャ神ヘラ：ゼウスの妻）神殿の長い歩廊には、ポエニクス（アキレスの軍師）や卑劣（ひれつ）なウリクセス（オデュッセウス）など選（え）り抜きの見張りが立ち、略奪品（りゃくだつひん）の番をしていました。ここへ、続々とトロヤの財宝（ざいほう：ガーザという）が集められていました。 内陣（ないじん：神殿の奥の間）に火が放たれ、神々のテーブルや純金の混酒器（こんしゅき：クラテルという）、剥（は）がされた壁掛けなどが積み上げられていました。その近くには、不安な表情をした母たちが子供たちの手を引き、長い列をなして並んで立っていました。(2-760-767) (2-768)(2-769)(2-770)(2-771)(2-772)(2-773)(2-774)(2-775) わたしは、かまわず大声をあげて闇に向かって妻の名を呼びました。わたしはこの叫びで道々を満たしていきました。わたしは、胸の張り裂ける思いで、クレウサの名を、何度も、何度も、声をはりあげ、空しく叫びました。こうして彼女に呼びかけながら、わたしは果てしなく町の家々のあいだをさまよっていました。 すると、わたしの目の前に、不幸な幻影が浮かび上がりました。それは、紛れもない、クレウサの影でした。彼女は、わたしが知っている時より、大きな姿になっていました。わたしは驚いて立ち止まりました。髪の毛が逆立（さかだ）ち、声が咽喉（のど）につまりました。すると、幻影はこう言って、わたしの心配を取り除こうとしました。(2-768-775) (2-776)(2-777)(2-778)(2-779)(2-780)(2-781)(2-782) 『どうしてそのように、悲しみに耽（ふけ）っておられるのでしょう。わたしのやさしい旦那（だんな）さま。神々のお許しがなければ、こうしたことは起きませんのよ。あなたが、クレウサをいっしょに連れてゆくことはありません。至高（しこう）の天（オリンポス）の支配者がそれをお許しにはならないのです。 あなたには、長い流浪（るろう）の旅が待っています。あなたは、果てしない海の荒波をのりこえて、西涯（せいがい：ヘスペリア：イタリアのこと）まで行くことになるのです。そこリュディア（エトルリア）の地では、人々の耕す肥沃（ひよく）な土地の上を、ティブリス（ティベリス：テベレ川）の大河（たいが）がゆったりと流れています。(2-776-782) (2-783)(2-784)(2-785)(2-786)(2-787)(2-788)(2-789) そこには楽しいことがいろいろありましてよ。王国やあなたの妻となるべき王女が、あなたを待っています。ですからもう、クレウサをなつかしんで泣かないで。わたしはミュルミドネス人やドロペス人の、勝ち誇った家々などは見にゆきません。ギリシャの母たちに仕えることもいたしません。 わたしはダルダヌスの女で、女神ウェヌスの嫁ですの。とにかくわたしを、神々の偉大な母神様（プリギュアの大地の女神キュベベ）がこちらの岸辺から離してくれませんの。さようなら、あなた。わたしたちふたりの息子を愛してくださいませ』。(2-783-789) (2-790)(2-791)(2-792)(2-793)(2-794)(2-795) 妻は言い終えると、わたしから離れていきました。わたしは涙が止まらず、まだまだ言いたいことがたくさんありました。しかし彼女は薄もやの中へ、すうっと消えていきました。わたしは三度（みたび）、この腕で彼女の首を抱こうとしました。 しかし三度とも、幻影はわたしの手から逃れ去りました。わたしは空（くう）をつかんだだけでした。それは軽い風のようでした。また、翼を振って飛び去る夢にさも似ていました。わたしは仲間のところへ帰りました。いつのまにか夜は終わりました。(2-790-795) (2-796)(2-797)(2-798)(2-799)(2-800)(2-801)(2-802)(2-803)(2-804) しかし、驚いたことに、仲間のところには新たな人々が押し寄せてきて、大変な数になっていました。婦人（マーテル）たち、男たち、民亡命のために集まった、憐れな群集でした。彼らは覚悟を決めて資財をまとめ、至るところからやってきました。わたしが目指すところなら、いっしょに海を渡って、何処（どこ）へでも行こうというのです。 すでにイダの山の上には暁（あかつき）の明星（みょうじょう：ルキフェル）が出ていました。一日（いちにち）が始まろうとしていたのです。ダナイ勢は、占領した部門の入口を確保し、それを取り返すすべは全くありませんでした。わたしはそこを去りました。父を背負って山を目指しました」。(2-796-804) 2015/5/15 第二巻（完）2015/9/19（土）読了 ○アポロドス「ギリシャ神話」（Ｅ）摘要から E-5-21そして武器を携えて市中に進み、家々に入って眠っている人々を討ちとった。ネオプトレモスは「内庭のゼウス」の祭壇に遁れて救いを求めたプリアモスを討ちとった。オディッセウスとメネラオスは家の中に逃げたアンテノルの子グラウコスを認めて武力によりこれを助けた。アイネイアスは父アンキセスを担いで遁れたが、ギリシャ人たちは彼の敬虔心のゆえに許した。 E-5-22メラネオスはデイポポスを殺した後ヘレネを船へ連れて行った。テセウスの母アイトラもまたデセウスの子デモポンとアカマスが連れ去った。というのは彼らは後トロイに赴いたと言われているからである。ロクリスのアイアスはアテナの木像に抱きついているカサンドラを見てこれを犯した。この木像が空の方をむいているのはこのためであるということである。 |
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2015/10/4 オリジナル教会（初代代表） 笹倉正義
正式名称：（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会
2016/10/19（次へのリンク先変更）