（４）サマリヤ （４）サマリヤ
| 出エジプト 20-79我らまたムーサーにお告げを下して、「夜の闇にまぎれわが僕どもを連れ出し、彼らのために海中に乾いた道を打ち開け。20-80追っ手を恐れることはない。（海も）怖がることはない」と命じた。20-81果してフィルアウンは軍勢ひきつれ彼らを追って来たが、大海にがぶりと呑まれて姿を没してしまった。要するにフィルアウンがその民を迷いの道に引きこんだのであった。よい道案内ではなかった。 荒野の日々 20-82これ、イスラエルの子らよ、かくて我らはお前たちを救い出し、かの山の右側でお前たちと約束を結び、お前たちの上にマナと 20-84だがそれでも、このわしは、悔い改めて信仰に入り、義しい行いにはげみ、遅ればせながら正道に立ち還って来た者にたいしては、できるだけえ寛大に罪を赦してやることにしておる。」20-85「ところでムーサー、汝、一体なぜそのように急いで民のもとを離れて来たのか。」20-86「あれ御覧なされませ、みなああして私のあとを追ってまいります。私が急いで来ましたのは、主よ、ただ御心にかないたい一心からでございます」と彼が言う。 20-87「汝の去った後、我らが汝の民を試練にかけた。例のサマリヤ人がみなを邪道に迷いこませた」との仰せ。 サマリヤ ---コーランの記者はサマリヤ人のいわれを知らない。西暦７０年にエルサレムが滅んだ後は、サマリヤ人は地上から消えた。サマリヤ人は、古代ユダヤ人の「サマリヤの山」信奉者（北王国イスラエルの末裔）に対する蔑称だったからである。 ---つまり、サマリヤ人は、旧北王国の子孫であり混血のイスラエル人、彼らは先祖のサマリヤの山を礼拝場所としたのでエルサレムの神殿を拝むユダヤ人に合流しなかった人々である。 20-88それを聞いたムーサー、怒りかつ嘆きつつ民のもとに帰り、20-89言うよう、「これ、皆の衆、神様があれほど有難いお約束をお前がたにして下さったではないか。決められた時まで待ちきれなくなったとでも言うのか。それともいっそ神様の御怒りを蒙りたくて、それでわしとの約束を破ったのか」と。 20-90「なにもわしらとて、好きこのんでお前との約束を破ったわけではない。だが、わしらはあの民族の装飾品の大荷物を背負い込まされていたものだから、それをどさっと（火の中に）投げこんでやったまでのこと。あのサマリヤ人だって投げ込んだもの」と一同は言う。かくて彼がみなに仔牛を作り出してやった、ちゃんと牛の形をして、モーモーと声を出すのを。それを見ると、みんなは、「これこそ本当の神だ。ムーサーの神もこれであったのに、彼は忘れてしまったのだ」と叫んだ。 20-91なんということか、あのようなものは何を言いかけても返事一つするではなし、毒にも薬にもならぬものだということが、彼らにはわからないのか。20-92この前にハールーンが、「これ皆の衆、これはお前たち試みられているだけのこと。が、本当は、神様はお情ぶかい方におわします。だからわしに従ってくれ、わしの言いつけをきいてくれ」と言ったのに。20-93彼らは、「わしらは、ムーサーが還って来るまでは、どんなことがあったってこれを守り通すぞ」と言い張った。 モーセ 20-94「これ、ハールーン」と彼が言う、「みんながみすみす迷いの道に踏み込んで行くのに、貴方は、なぜ私の言った通りにしなかった。なぜ、私の命令に背きなさったか」と。20-95「なあ、母さんの子、わしの髭や頭をそう摑まないでおくれ。わしはお前に『イスラエルの子らを分裂させ、私の言葉を守りませんでしたね』と責められるが怖かったのだ」と彼は答えた。 20-96「それから、これ、サマリヤ人、お前のことだが、一体これはどうしたことだ」と言えば、「実はみんなには見えないものがわしに見えたもので。つまり、天使の足跡を（見つけて、その泥を）一握り摑んで投げこんでやったのさ。ただなんとなくそうして見たくてたまらなくなってしまったので」と言う。20-97「出て行け。生きてこの世にあるかぎり、お前は（誰にでも）『（わしに）触ってはいかん』と叫ばなければならんぞ。そしていずれは、避けようのない対面の時が来よう。ま、とにかく見てごらん、ほら、お前が崇め通してきたこの神様、こんなもの火に叩き込んで、灰にして海の中に播きちらしてくれる。20-98よく聞け、お前たちの神といえば、アッラーだけで、そのほかに神はない。その御知識ありとあらゆるものに及ぶお方じゃ」と。 モーセのサマリヤ人 ---サマリヤ人は偶像崇拝を国是とした北王国の末裔に対するユダヤ人の蔑称である。北王国は、ユダ族とベニヤミン族以外の１０部族であったはず。それならなぜユダヤ人が１２部族なのか。それは、初期の２部族のユダヤ人が、それ以外の１０部族に合流を呼びかけたからである。しかし、その条件は礼拝場所を「サマリヤの山」からエルサレムの神殿に変えることであった。この呼びかけに応じず、「サマリヤの山」に固執した人々を、ユダヤ人が「サマリヤ人」と呼んだのである。蔑称である。この差別が、イエスの時代まで続いていたのである。 したがって、モーセがサマリヤ人を知るわけはないのである。 |
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