２． ２．
| ヨアリブ家の祭司 2-1そのころ、ヨアリブ家の祭司、シモンの子ヨハネの子マタティアはエルサレムを去ってモディンに居を定めた。2-2彼には五人の子があった。ガディと呼ばれるヨハネ、2-3タシと呼ばれるシモン、2-4マカバイと呼ばれるユダ、2-5アラバンと呼ばれるエレアザル、アフスと呼ばれるヨナタンである。 ---祭司は、レビ人の家系である。ユダはユダ族、エレアザルはアロンの息子の名前でレビ人の棟梁の血統の名前、ヨナタンはヘブル人の初代王となったベニヤミン族のサウル王の息子と同じ名前である。だとすると、名前だけではその部族を特定できないことになる。いずれにしても、ユダ族とベニヤミン族、それにレビ人とアロン家はユダヤ人の核となる名門である。律法を守ることに生命をかける値打ちがあると考える人々である。 ---ヨアリブ家は、口語訳聖書にその同じ名前がある。バルバロ聖書では、「エホヤリブ」という読みで書かれていた。 （歴代志上） 9-10祭司のうちではエダヤ、ヨアリブ、ヤキン、9-11およびヒルキヤの子アザリヤ、ヒルキヤはメシュラムの子、メシュラムはザドクの子、ザドクはメラヨテの子、メラヨテはアヒトブの子である。アザリヤは神の宮のつかさである。 （歴代志上） 24-7第一のくじはヨアリブに当り、第二はエダヤに当り、4-8第三はハリムに、第四はセオリムに、・・・、第二十三はデラヤに、第二十四はマアジヤに当った。24-19これは、彼らの先祖アロンによって設けられた定めにしたがい、主の家にはいって務をなす順序であって、イスラエルの神、主の彼に命じられたとおりである。 ---マタティアたちの故郷はモディンである。なぜエルサレムにいたのかは、福音書の記事が参考になる。マタティアの決起は、福音書の初め、ザカリヤの記事を遡ること１６５年前である。 （ルカによる福音書） 1-5ユダヤの王ヘロデの世に、アビヤの組の祭司で名をザカリヤという者がいた。その妻はアロン家の娘のひとりで、名をエリザベツと言った。1-6ふたりとも神のみまえに正しい人であって、主の戒めと定めとを、みな落度なく行っていた。1-7ところが、エリザベツは不妊の女であったため、彼らには子がなく、そしてふたりともすでに年老いていた。 1-8さてザカリヤは、その組が当番になり神のみまえに祭司の務めをしていたとき、1-9祭司職の慣例に従ってくじを引いたところ、主の聖所にはいって香をたくことになった。1-10香をたいている間、多くの民衆はみな外で祈っていた。 祭司の嘆き 2-6マタティアはユダとエルサレムで犯されている忌まわしい行いを見て2-7言った、「ああ、悲しいことだ、私は民の全滅と尊い町の滅亡を見るために生まれてきたのだろうか。町は異国人の手に渡されたのに、私は手をこまねいていなければならぬのか。 2-8神殿は卑しいもののようになり、 2-9名も高い飾り物は分捕り品となって奪い去られた。 幼い子は広場で殺され、 若者は敵の剣に打たれた。 2-10その権力を奪い取らず、 分捕り品を手にいれなかった国があったろうか。 2-11そのすべての飾りは奪い去られ、 自由だった国が奴隷となった。 2-12見よ、われらの聖なるもの、われらの美しさ、 われらの光栄は荒らされ 異国人によって汚された。 2-13なぜわれらは、 まだ生きているのだろう」。 2-14マタティアとその息子たちは服を裂き、袋を身にまとっていたく嘆き悲しんだ。 2-15そのころ、棄教させよと命じられて、王の使者たちがいけにえを強いようとしてモディンにやってきた。2-16イスラエルの多くはその人たちのほうについた。2-17しかし、マタティアと息子たちは彼らから離れていた。王の使者はマタティアに言った、「あなたはこの町の権力者で名誉をもつ偉大な人であり、多くの兄弟に囲まれている。2-18ユダの人々、エルサレムに残っている人々、そしてすべての民がすでに行ったように、あなたがまず進み出て王の命令どおりにすれば、あなたと息子たちは王の友人に数えられ、銀や金の贈り物や土産物を受け、ほまれをえるだろう」。 祭司の聖なる憤り 2-19マタティアは大声で答えた、「王の支配下にあるすべての民が先祖の宗教をすてて服従し、その命令を受け入れても、2-20私と私の子らと兄弟は先祖の契約を守り行うつもりです。2-21私たちが律法と慣習とを捨てることのないように、天よ、守りたまえ。2-22私たちは王の命令に従いません。自分の宗教から右にも左にも迷いはしません」。 祭司の決起 2-23こう語り終えたとき、ひとりのユダヤ人が王の命令に従って、モディンの祭壇にいけにえをささげようとしてみなの前に進み出た。2-24それを見たマタティアは怒りに燃え、その腎はふるえた。聖なる怒りにかられた彼は、突き進んでその男を祭壇の上で殺した。2-25いけにえをささげよと強いていた王の使者も同時に殺し、祭壇を倒した。2-26こうしてマタティアはソロモンの子ザムリに対してピンハスがしたのと同じように、律法の名誉を守ってふるい立ち、2-27大声で町中に呼びかけて言った、「律法を守る熱意に燃え、契約を行おうとする者は私に従え」。2-28そののちすぐ、マタティアとその息子たちは財産をみな町に残して山に逃れた。 （民数記） 25-6モーセとイスラエルの人々の全会衆とが会見の幕屋の入口で泣いていた時、彼らの目の前で、ひとりのイスラエルびとが、その兄弟たちの中に、ひとりのミデアンの女を連れてきた。25-7祭司アロンの子なるエレアザルの子ピネハスはこれを見て、会衆のうちから立ち上がり、やりを手に執り、25-8そのイスラエルの人の後を追って、奥の間に入り、そのイスラエルの人を突き、またその女の腹を突き通して、ふたりを殺した。こうして疫病がイスラエルの人々に及ぶのがやんだ。 ああユダヤ人 2-29正義と公正を求める多くの人たちは、2-30その子らと妻と家畜のむれを連れて荒れ地に逃げた。彼らの上には災いがふりかかったからだ。2-31ダビドの町エルサレムにいた王の役人と守備兵に、ある者が王の命令を引き裂いて荒れ地に逃げたという知らせが入った。2-32兵隊が彼らを追い、追いついてその前で陣をしき、安息日に彼らと戦いを交えようとして2-33言った、「もうやめろ、出てこい、王の命令に従え、そうすれば命は助けてやる」。 2-34彼らは答えた、「出ていくものか。安息日を汚して王の命令に従うことはしない」。2-35そこで兵隊はすぐ戦いをおこした。2-36だがユダヤ人はそれに応戦せず、石も投げず、身を守ることもせず、2-37こう言った、「罪を犯さずに死のう。あなたたちが不正にも私たちを殺したことは天と地が証明してくれる」。2-38こうして安息日に攻撃をうけ、妻や子や家畜のむれとともに彼らは死んだ。その数は千人ほどだった。 安息日でも応戦する 2-39マタティアとその友人たちはその知らせを聞いて心を痛め、2-40こう言い合った、「私たちがみなあの兄弟たちにならい、自分の生命と慣習を守るために異国人と戦おうとしないなら、たちまちわれわれは地の面から滅ぼされてしまう」。2-41そこで、その日こう決心を立てた、「安息日に戦いをしかけるものがあれば、われわれは彼らと戦おう。あの兄弟たちのように隠れがで殺されたりはしない」。 ---安息日は、旧約聖書の創世記の冒頭に規定されている。天地創造は、宇宙の成り立ちを言っているのではなく、安息日を承認させるためのものである。エジプトで奴隷であったときに、彼らは休日というものが必要なことを知らなかった。そこでモーセは、有無を言わせぬ休日として、安息日を規定し、聖としたのである。 （ルカによる福音書） 13-14ところが会堂司は、イエスが安息日に病気をいやされたことを憤り、群衆にむかって言った、「働くべき日は六日ある。その間に、なおしてもらいにきなさい。安息日にはいけない」。13-15主はこれに答えて言われた、「偽善者たちよ、あなたがたはだれでも、安息日であっても、自分の牛やろばを家畜小屋から解いて、水を飲ませに引き出してやるではないか。13-16それなら、十八年間もサタンに縛られていた、アブラハムの娘であるこの女を、安息日であっても、その束縛から解いてやるべきではなかったか」。 ユダヤ抵抗軍を組織 2-42そのころ、一群のハシダイ人（注：パリサイ人らの祖）が彼らに加わった。この人たちはイスラエルでもっとも勇敢といわれており、律法を守ろうと決心している人たちだった。2-43また、迫りくる災難を逃れた人々も彼らに加わってその力を強めた。2-44彼らは軍隊をつくり、罪人を怒りのあまり殺し、悪人を討とうとし始めたので、恐れた人々は外国に逃げ出した。2-45マタティアとその友人は祭壇を倒そうとあちこち巡り、2-46イスラエルの国内で見つけた無割礼の子どもたちに強制的に割礼をさずけ、2-47高ぶるものたちを狩り出し、こうして彼らの指導のもとにことは順調に進んだ。2-48彼らは異国人と王の暴力の手から律法を守り、罪人の栄える機会を奪った。 ---「高ぶるものたち」とは・・・・ （エレミヤ書） 50-31主なる万軍の神は言われる、 高ぶる者よ、見よ、わたしはおまえの敵となる、 あなたの日、わたしがおまえを罰する時がきた。 50-32高ぶる者はつまずき倒れる、 これを助け起すものはない。 わたしはその町々に火を燃やして、 その周囲の者をことごとく焼き尽す。 （ハバクク書） 2-4見よ、その魂の正しくない者は衰える。 しかし義人はその信仰によって生きる。 2-5また、酒は欺くものだ。 高ぶる者は定まりがない。 彼の欲は陰府のように広い。 彼は死のようであって、飽くことなく、 万国をおのれに集め、 万民をおのれのものとしてつどわせる」。 （ゼパニヤ書） 3-11その日には、 あなたはわたしにそむいたすべてのわざのゆえに、 はずかしめられることはない。 その時わたしはあなたのうちから、 高ぶって誇る者どもを除くゆえ、 あなたは重ねてわが聖なる山で、高ぶることはない。 （マラキ書） 4-1万軍の主は言われる、見よ、炉のように燃える日が来る。その時すべて高ぶる者と、悪を行う者とは、わらのようになる。その来る日は、彼らを焼き尽して、根も枝も残さない。4-2しかしわが名を恐れるあなたがたには、義の太陽がのぼり、その翼には、いやす力を備えている。あなたがたは牛舎から出る子牛のように外に出て、とびはねる。4-3また、あなたがたは悪人を踏みつけ、わたしが事を行う日に、彼らはあなたがたの足の裏の下にあって、灰のようになると、万軍の主は言われる。 （イザヤ書） 2-11その日には目をあげて高ぶる者は低くせられ、 おごる人はかがめられ、 主のみ高くあげられる。 2-12これは、万軍の主の一日があって、 すべて誇る者と高ぶる者、 すべておのれを高くする者と得意な者とに 臨むからである。 マタティアの遺言 ---決起してまだ日は浅い。マタティアの死は老衰というわけではあるまいが・・・。 2-49死の日が近づいたとき、マタティアは息子たちに言った、「今は高ぶりと不正の世である。乱れた世、荒れ狂う怒りの世である。2-50子どもたちよ、律法を守る熱意にみち、先祖の契約を守るために命をささげよ。2-51先祖がその時代に行った偉業を思い出せ。そうすればおまえたちは偉大な光栄と不滅の名を与えられるだろう。2-52アブラハムは試練のとき、その誠実を認められ、そのことが彼の義として数えられたのではないか。2-53ヨゼフはみじめなときにおきてを守り、そしてエジプトのあるじとされた。2-54われらの先祖ピンハスは神への熱意に燃えていたので、永遠の祭司職の厳かな約束を受けた。 ---ピンハスの再出 （民数記） 25-7祭司アロンの子なるエレアザルの子ピネハスはこれを見て、会衆のうちから立ち上がり、やりを手に執り、25-8そのイスラエルの人の後を追って、奥の間に入り、そのイスラエルの人を突き、またその女の腹を突き通して、ふたりを殺した。 2-55神のみことばを果たしたヨシュアはイスラエルの判事（注：さばきつかさ、士師）となった。2-56カレブは集会のとき真実をあかしたので、約束の地の分け前を受けた。2-57ダビドは信心が厚かったので、永遠の国の王座を受けた。2-58エリアは律法を守るのに熱心だったので、天にあげられた。 ---エリヤは、生ける神から離れて建国した北王国イスラエルの預言者であった。王から、生ける神を捨ててバアルに帰依せよと迫られたのである。王の命令に従わないレビ人たちは迫害され殺された。 2-59アナニア、アザリヤ、ミザエルは信頼を失わなかったので、炎の中から救いだされた。2-60ダニエルは正しい人であったから、ししの口から救われた。 （ダニエル書） 1-1ユダの王エホヤキムの治世の第三年にバビロンの王ネブカデネザルはエルサレムにきて、これを攻め囲んだ。1-2主はユダの王エホヤキムと、神の宮の器具の一部とを、彼の手にわたされたので、彼はこれをシナルの地の自分の神の宮に携えゆき、その器具を自分の神の蔵に納めた。1-3時に王は宦官の長アシペナズに、イスラエルの人々の中から、王の血統の者と、貴族たる者数人とを、連れて来るように命じた。 1-4すなわち身に傷がなく、容姿が美しく、すべての知恵にさとく、知識があって、思慮深く、王の宮に仕えるに足る若者を連れてこさせ、これにカルデヤびとの文学と言語とを学ばせようとした。1-5そして王は王の食べる食物と、王の飲む酒の中から、日々の分を彼らに与えて、三年のあいだ彼らを養い育て、その後、彼らをして王の前に、はべらせようとした。1-6彼らのうちに、ユダの部族のダニエル、ハナニヤ、ミシャエル、アザリヤがあった。1-7宦官の長は彼らに名を与えて、ダニエルをベルテシャザルと名づけ、ハナニヤをシャデラクと名づけ、ミシャエルをメシャクと名づけ、アザリヤをアベデネゴと名づけた。 2-61代々にわたって考えるに、神に希望をおく者は滅びることがない。2-62罪人のおどしを恐れてはならぬ。彼らの光栄は肥料だめとうじ虫の中に滅びてしまうものだ。2-63不敬の者は今日おごり高ぶっているが、明日はもう姿を消す。彼はちりに帰り、そのくわだては消えうせる。2-64子どもたちよ、律法を守るには勇敢で強くあらねばならぬ。律法がおまえたちを光栄で満たしてくれるからである。 （１）シモン 2-65兄弟シモンのことを考えよ。彼は思慮のある者だと思う。いつも彼の言うことを聞け。彼がおまえたちに父の代わりとなってくれる。 （２）ユダが抵抗軍の指揮官 2-66若いころから勇ましかったマカバイのユダが軍隊の指揮官となれ。彼は異国の民と戦うだろう。 2-67律法を守る人たちをまわりに集め、民への不正の仇をとれ。2-68異国の民に対しては仇を仇で返し、律法のおきてを守れ」。2-69マタティアは彼らを祝福し、先祖たちのいるところに去った。2-70彼が死んだのは百四十六年のことで、モディンの先祖の墓に葬られた。イスラエルはこぞって彼の死を悼んだ。 |
| （注）赤字の文章は、口語訳聖書からの引用。 |
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