７（７）運命の歯車

1-7-7-1彼のうしろにドアの閉まったのを見るやいなや、ビルフォールの体からあらゆる力が抜けてしまった。1-7-7-2そして、ほとんど気を失ったように椅子の上にどっと倒（たお）れた。1-7-7-3しばらくすると、彼は《おお！》とつぶやいた。1-7-7-4《人生（じんせい）といい、運命（うんめい）といい、それは何と関係しているというのだろう！・・・・1-7-7-5もしも検事がマルセイユにいたとしたら、もしもおれの代わりに予審（よしん）判事（はんじ）が呼ばれていたら、おれはまさに破滅（はめつ）していた。 1-7-7-6おれは、この手紙、この呪うべき手紙によって深淵（しんえん）に叩（たた）きこまれるところだった。1-7-7-7ああお父さん、お父さん、あなたはこの世にあって、いつまでわたしの幸福の邪魔（じゃま）をしようとなさるのです？1-7-7-8わたしは永久にあなたの過去と戦わなければならないのですか？》 1-7-7-9たちまち、思いもかけぬ一道（いちどう）の光が、彼の心を貫（つらぬ）いたような気持がした。1-7-7-10彼の面（おもて）は輝きわたり、ひきつれた唇には微笑が浮かんだ。1-7-7-11ぎろぎろした眼は、一心（いっしん）に一つの考えの上に集中されているようだった。 1-7-7-12《そうだ》と、彼は言った。1-7-7-13《おれをあぶなく破滅させかけたあの手紙が、かえっておれの幸福を導き出してくれるかもしれない。1-7-7-14さあ、ビルフォール、仕事にかかった！》。 1-7-7-15そして、被告（ひこく）が玄関（げんかん）から出てしまったのをたしかめたあとで、検事代理は、自分もそこを出て、元気な足どりで許婚（いいなずけ）の家のほうへと歩いて行った。

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引用者：2016/6/7　（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会
通称「オリジナル教会」　初代代表者　笹倉正義
ささくら修道会・必読書