１７（７） １７（７）
| 1-17-7-1「さ、いいか。1-17-7-2記憶をすっかりかき集めるのだ。1-17-7-3告訴状（こくそじょう）が、どんな文句（もんく）で書かれていたかおぼえておいでか？」。1-17-7-4「ええ、ええ。1-17-7-5三度も読みかえしました。1-17-7-6一言（ひとこと）一言おぼえています」。1-17-7-7「それをひとつ聞かせてもらおう」。1-17-7-8ダンテスはしばらく考えをまとめていた。1-17-7-9「こうでした」と、彼は言った。1-17-7-10「一字（いちじ）一句（いっく）書かれていたとおりです。 1-17-7-11『検事閣下。1-17-7-12王室にたいして忠信（ちゅうしん）、信仰にたいして誠実なる小生（しょうせい）は、ナポリ、ポルト・フェライヨに寄港し、今朝（けさ）スミルナより着したる帆船（はんせん）ファラオン号一等運転士エドモン・ダンテスなる者が、ミュラーより簒奪者（さんだつしゃ）宛ての信書の寄託を受け、また簒奪者よりパリ・ボナパルト党本部宛ての信書を寄託せられたる事実を御注意申しあぐるものに御座候（ござそうろう）。1-17-7-13彼の罪証（ざいしょう）は彼の逮捕（たいほ）によって確かめらるべく、その信書は本人自身、或いはその父の住所或いはファラオン号上の彼の居室（きょしつ）において発見いたさるることと存じ候』」。 1-17-7-14司祭は首をすくめて見せた。1-17-7-15「まさに太陽のごとく明らかだな」と、言った。1-17-7-16「それが一目（ひとめ）でわからなかったとは、なんと正直（しょうじき）な、なんとおめでたいあなただったことか」。1-17-7-17「そうお思いですか？」と、ダンテスが叫んだ。1-17-7-18「そうだとしたらば、破廉恥（はれんち）至極（しごく）なことですが！」。 1-17-7-19「ダングラールの平素の書体はどんなだった？」。1-17-7-20「見事な草書体です」。1-17-7-21「で、その手紙の書体は？」。1-17-7-22「逆にのめった書体でした」。1-17-7-23司祭は微笑を浮かべた。1-17-7-24「偽筆（ぎひつ）をやったんだな？」。1-17-7-25「偽筆にしては達筆（たっぴつ）に書いてありました」。1-17-7-26「ちょっと」と、司祭は言って、ペンというより、彼がペンと呼んでいるものを手にして、それをインキにひたしながら、紙代わりの布の上に、告訴文のはじめの二三行（にさんぎょう）を左手で書いてみせた。 1-17-7-27ダンテスはあとしざりした。1-17-7-28そして、ほとんど恐怖の色を浮かべて司祭を見つめた。1-17-7-29「驚きました！」と、彼は叫んだ。1-17-7-30「なんてよく似ていることでしょう」。1-17-7-31「つまり、告訴文も左の手で書かれているからだ。1-17-7-32わしに一つ気のついたことがある」と、司祭は言った。1-17-7-33「なんです？」。1-17-7-34「右手で書かれた筆跡（ひっせき）はさまざまでも、左手で書かれたものはみんな似ているということだ」。1-17-7-35「では、あなたはすっかりごらんになったのですか、すっかり見てとっておしまいだったのですか？」。 1-17-7-36「先を急ごう」。1-17-7-37「そうです。そうです」。 |
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引用者：2016/5/22 （笹倉宗）聖母マリヤ福音教会
通称「オリジナル教会」 初代代表者 笹倉正義
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