６．とにかく終わった

「朝に命じてみよ」パールバック 原題：Ｃｏｍｍａｎｄ　ｔｈｅ　Ｍｏｒｎｉｎｇ 原作者：Pearl Sydenstricker Buck 日本語訳本名：「神の火を制御せよ」原爆をつくった人々 丸田浩　監修 小林政子　訳 径書房

P360 バートは杖にもたれながらふたたび歩けるようになった。このところモリーの様子がなんとなくおかしく、気になって落ち着かなかった。モリーに原子爆弾のことは話していない。正直な話、自分さえ、投下された日時も場所も知らなかった。知りたいとも思わなかった。自分には関係がなかった。バートは病人であり、医者からはストレスを避けるように言われている。だから、昨日の新聞を見て初めて知った。広島、長崎、そして戦争終結。今朝、朝食のテーブルでモリーをちらっと見た。新聞は事細かに報じており、自分も妻も読み終わっていた。モリーが婦人欄からではなく一面から読むのを見るのは、一緒に暮らすようになって初めてだった。妻は一言も発しなかった。口を真一文字に結び、バラ色の丸顔は青ざめていた。「とにかく、戦争は終ったな」バートは無理に笑ってみせた。 P383愛犬が死んだ 二人とも少し悲しかった。だが、悲しくてたまらないほどではない。一年前、二人のまったく知らなかった二つの都市が灰と化し、瓦礫だけになってしまったときに感じた悲しみとは、くらべようもなかった。あのときほど悲しかったことはない。そのために二人は以前の明るさをすっかり失っていた。だがそれでも、元気を取り戻しつつあった。スティーブは以前より格段に収入が増え、大企業でも思いのほか自由に研究ができた。雇い主は彼を尊敬していた、というより、メサで果した彼の偉業を畏怖していたと言ってもいい。

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2013/2/23 聖母マリヤ福音教会・「取説」担当　笹倉正義 2022/1/22 聖句引用：日本聖書協会　口語訳聖書 旧約聖書（１９５５年改訳） 新約聖書（１９５４年改訳）