５．それで、次は何を

「朝に命じてみよ」パールバック 原題：Ｃｏｍｍａｎｄ　ｔｈｅ　Ｍｏｒｎｉｎｇ 原作者：Pearl Sydenstricker Buck 日本語訳本名：「神の火を制御せよ」原爆をつくった人々 丸田浩　監修 小林政子　訳 径書房

P350 「それで、次は何をするの？」ヘレンは尋ねた。 スティーブがその日は朝早く家を出たので、夜まで二人は顔を合わせていなかった。静まり返った一日で、彼は自分のオフィスから出ようとせず、訪ねてきてはぐずぐずと居座る科学者たちと重苦しい話をしていた。その後の状況は、ワシントンからの特別通信ですべてわかっていた。原子爆弾は１００パーセント成功。科学者たちがなすべきことは、もはや何もなかった。誰一人として原子爆弾のことを口にしなかった。次の仕事の話をしていた。少しでも早くメサを出て、元の大学に戻ったり、大企業の職場に復帰したりしたがっていた。数日か、数週間のうちにメサは元の砂漠に戻るだろう。建物は空になり、生活の痕跡は消える。新しい生活、新しい仕事、新しい計画がなくてはならない。「スティーブ、君は何をするんだ？」。みんなから何度もそう聞かれたが、わからないと答えるだけだった。 いまヘレンに問われても即答する気にはなれなかった。彼女がどんなつもりで問いかけてきたのか、よくわからなかったからだ。「疲れて死にそうだ。何をしたいかなんて、いまは疲れすぎていて考えられないよ」返事はそれだけにした。「疲れているのは自己嫌悪の表れよ。私もそうだからわかるの。自分が嫌いなのよ」。「今夜は、面倒なことは勘弁してくれないか」。「そうでしょう。どこか遠くでドカンとやったあとではね」彼女は言い返した。 P352 ---ヘレン--- 「そうじゃない？あなたたち頭脳集団だってみんな楽しんでいなかったかしら。あなたたちが秘密めかして話していたことだって、理解できちゃう人は必ずいるのよ。ここは天国のようだと言った人もいたわ。その男の人は大会社の研究所で働いていたけど、自分のしていることを理解できない人に囲まれて孤独だったんだって。ところが、メサではみんなで同時に一つの大きな仕事がやれる。みんなの頭脳が力を合わせて、ね。確かに素晴らしいことでしょ？」 ---ヘレン---

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2013/2/23 聖母マリヤ福音教会・「取説」担当　笹倉正義 2022/1/22 聖句引用：日本聖書協会　口語訳聖書 旧約聖書（１９５５年改訳） 新約聖書（１９５４年改訳）