９（１７）殲滅の機会を逸す

○（９−１７）味方を兵営内に誘導する機会をトウルヌス見のがし、勝機を逸す (9-756)(9-757)(9-758)(9-759)(9-760)(9-761)(9-762)(9-763)(9-764) トロヤ人たちは、ひどい恐怖（きょうふ：パニック）に陥（おちい）って、わき目もふらず、散々（ちりじり）に逃げ出した。もしこの時、勝ちに乗（じょう）じたトウルヌスに、すぐさま手で閂（かんぬき）をはずし、味方を門内に引き入れる用意があったら、戦（いくさ）はその日のうちに終了し、トロヤ人の一族はここで最後を迎えていたことだろう。 だが彼は狂ったようにひたすら殺戮（さつりく）に熱中し、前へ前へと駆り立てられていった。この時、最初に犠牲になったのはパレリスだった。次にギュゲスが膝窩（しっか：ひざのくぼみ）を切断されて討たれた。トウルヌスは殺した者の槍を奪うとそれを遁走（とんそう）する敵兵の背に向かって投げた。ユノ女神が彼を護持（ごじ）して、たえず力と気力とを灌（そそ）ぎたもうていた。(9-756-764) (9-765)(9-766)(9-767)(9-768)(9-769)(9-770)(9-771)(9-772) (9-773)(9-774)(9-775)(9-776)(9-777) ハリュスはこの時、死の道連れになった。ペゲウス(5-267)は盾を貫通（かんつう）されて斃（たお）れた。さらに強敵の接近に気づかずマルス神に指嗾（しそう：指図してそそのかすこと）されて城壁で戦っていた。アルカンデル、ハリウス、ノエモン、プリュタニスたちが犠牲になった。リュンケウスは敵を迎えて味方を呼ぼうとした。敵は堡塁（ほうるい）の右手から剣をかざして急激に接近した。彼の首は一刀（いっとう）のもとに切断され、兜を付けたまま遠くまで飛んだ。 次に狩猟（しゅりょう）の達人（たつじん）アミュクス(1-222)が殺（ころ）された。矢に油を塗り込み、鏃（やじり）に毒を染み込ませる腕前では彼の右に出る者はいなかった。アエオルスの御子（みこ）クリュティウスもこの時犠牲（ぎせい）になった。詩神（ムサ）たちの寵児（ちょうじ）、クレテウスもここで殺された。彼の心を占めるのはいつも歌と竪琴（たてごと：キタラ）のことばかり、弦（げん）をかき鳴らしては韻律（いんりつ）の調べを乗せ、つねに馬を、戦（いくさ）と武士（丈夫：もののふ）を、そして合戦（かっせん）のありさまを謡（うた）って止まなかった。(9-765-777)

次へ

2015/12/03 オリジナル教会（初代代表）　笹倉正義
正式名称：（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会
2016/1/21指嗾