７（１３）ユノの使者の行先

○（７−１３）ユノの悪巧み羅刹女アレクトの派遣 (7-323)(7-324)(7-325)(7-326)(7-327)(7-328)(7-329)(7-330) 言い終わるや否や、恐るべき女神は地上に舞い降り、暗黒の地底の不吉な女神たち（羅刹（らせつ：大力で足が速く、人間を魅惑し、あるいは食うという悪鬼の名）女（め：ディーラ））の住居から、アレクト（羅刹女：らせつめ：のひとり）を呼び出した。この怪物の胸の中（うち）には、悲しい戦争、憤怒（ふんぬ）、陰謀、悪意の告発などが詰っていて、実の父親のプルトン（閻魔大王）も、彼女を嫌悪していた。また地獄（タルタラ）の姉妹たちもこの妖怪を嫌っていた。彼女は千変万化（せんぺんばんか）する顔を持っていた。どの顔も邪悪で、蛇でできた髪が黒々と垂れ下がっていた。ユノは彼女を挑発してこう言った。(7-323-330) (7-331)(7-332)(7-333)(7-334)(7-335)(7-336)(7-337) (7-338)(7-339)(7-340) 「夜の女王の娘（むすめ）よ、此度（こたび）はわらわのために力を貸しておくれ。わらわの栄光と名誉が失われぬためには、おまえの助けが必要なのじゃ。アエネアスの一党がラティヌス王に結婚を求めて言い寄っている。彼らはイタリー人の領土を占領する気でいる。これを阻止（そし）せねばならぬ。おあめは仲の良い兄弟に武器を与えて争わせ、憎しみをあおって家を倒すことができる。 御殿（ごてん）の中に鞭（むち）の音をひびかせ、ついには葬式の松明行列にまでもってゆく。おまえはこんなことが大得意（だいとくい）だ。おまえには千の名があり、おまえには千の有害な悪知恵（わるじえ）がある。おまえのその胸から滾々（こんこん）と悪だくみを溢（あふ）れさせるのじゃ。そして結ばれし平和を粉々に引き裂くのじゃ。あちこちに戦争の火種（ひだね）をまき散らすのじゃ。若者らが武器を取り、戦（いくさ）を求めて駆け出すようにじゃ」。(7-331-340) (7-341)(7-342)(7-343)(7-344)(7-345)(7-346)(7-347)(7-348) 全身にゴルゴ(6-294)の毒が回っていたアレクトは、直ちに出発した。彼女はまずラティウムのラウレンテス人の親方（テュランヌス：ラティヌス王）の高くそびえる宮所（みやどころ）を目指し、アマタ（王妃）の棟の入口にこっそりと降り立った。その頃、アマタは多くの悩みを抱えていた。 テウクリ（トロヤ）人が到着し、（娘ラウィニアと）トウルヌスとの縁談の先が見えなくなり、女性特有の心配事や、うらみつらみが彼女の心をいらいらと苛立たせていた。アレクトは、青緑色（せいりょくしょく：カエルレイ）の頭髪から一匹の蛇を抜き取り、それをアマタの懐（ふところ）から、胸の中深くへ投げ入れた。この怪獣を使ってアマタの気を狂わせ、家に混乱を引き起こす算段（さんだん）だった。(7-341-348) (7-349)(7-350)(7-351)(7-352)(7-353)(7-354)(7-355) (7-356)(7-357)(7-358) 怪獣は服と美しい胸との間を滑（すべ）っていったが、アマタにはまったく異物感がなかった。こうしてこの怪物は、こっそりと彼女に蛇の魂を吹き込み、狂わせていった。巨大な毒蛇は、ある時には咽喉（のど）に巻きつく黄金（おうごん）の首飾りとなり、別の時には髪の毛を束ねる頭髪リボンの長紐（ながひも）となり、彼女の身体中をつるつると滑って動いた。 やがて蛇の湿った体毒が効き目をあらわし、彼女の感覚は麻痺（まひ）しはじめた。そして病の炎（ほのお）は骨髄（こつずい）まで巻き込んでいった。とは言え、彼女の心（こころ：アニムスという）は、まだ胸の全域にわたって炎に包まれていたわけではなかった。彼女は、心穏（こころおだ）やかな時、母親らしい優しさで、娘のプリュギイ（トロヤ）人との縁談の話をしはじめた。彼女は話している間にさめざめと泣いた。(7-349-358)

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2015/11/21 オリジナル教会（初代代表）　笹倉正義
正式名称：（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会