７（１０）使者の口上

○（７−１０）トロイ側重臣イリオネウスの言上 (7-212)(7-213)(7-214)(7-215)(7-216)(7-217)(7-218) (7-219)(7-220)(7-221) 王がかく言い終わると、イリオネウス(1-529)が言葉を継いで言った、「ファウヌス神のかしこき御子（みこ）におわす王よ、われらは潮（うしお）に流され参（まい）りし者にはあらず。また黒き嵐がわれらを御当地（ごとうち）へ投げ寄越ししにもあらず。星座を読み違えたわけでもなく、海岸線に迷うたわけでもござらん。われらは確乎（かっこ）たる決意のもと、一丸（いちがん）となってこの都おば目指して参った。 われらは、かつては天（オリュムプス）の涯（はて）より昇る太陽が望見（ぼうけん）する、最大の王国のあったところから落ち来たりし身でござる。われらはユピテル大神（おおがみ）を祖（そ）とする者でござる。ダルダニアの一党はユピテル大神の裔につらなることを誇りにいたしておりもうす。また、われらが王はユピテル大神の直流（ちょくりゅう）にござるが、このトロヤのアエネアス王こそ、われらを貴（たっと）き宮所へと遣わされたその人にござる。(7-212-221) (7-222)(7-223)(7-224)(7-225)(7-226)(7-227)(7-228)(7-229) (7-230)(7-231)(7-232)(7-233) そもそもイダの原野（げんや）を、いかに巨大な嵐が、かの酷薄（こきはく）なミュケナエから襲いかかってきたか、またいかに苛酷（かこく）な運命（さだめ）が、エウロパ（ヨーロッパ）、アシア（今のトルコの西側地方）の両世界を衝突（しょうとつ）させたか（トロヤ戦争のこと）、天涯（てんがい：オケアヌス）のなお涯（はて）の地に住む者といえど、四つの気候帯（きこうたい）の真ん中をはしる灼熱の太陽帯の住民といえど、知らぬ者はござらぬ。 われらはこの大洪水（だいこうずい：トロイ戦争のこと）に押し流されて、はてしなき海原（うなばら）を渡ってきた者なのでござる。祖国の神々のためにささやかな安置所を求め、安全な岸辺（きしべ）に、誰しも自由に使える水と空気を求めてやって来たのでござる。 われらは御国（みくに）にたいし、決して不名誉の輩（やから）とはなりませぬ。われらをお迎えくだされたとて、御国が恥となることなどは、ゆめございませぬ。われらをお迎えくださるならば、その御恩はわれら永劫（えいごう）に忘れませぬ。一旦（いったん）アウソニイのかたがたがトロヤをお抱（かか）えくだされば、その御胸（おむね）から後悔（こうかい）の芽が芽吹（めぶ）くことなど、あり得ませぬ。(7-222-233) (7-234)(7-235)(7-236)(7-237)(7-238)(7-239)(7-240) (7-241)(7-242) このこと、アエネアス王の運命（さだめ）にかけて申し上げます。われらが王の力強い右手に誓って申し上げます。王は信義と武勇において、天下に隠れなきおかたにおわしまし、われらに和を請い、われらと同盟を結ばんとした民草（たみぐさ：一般国民のこと）や種族は、これまでに数限りなきござった。そのわれらが今、自ら手に平和の結び（橄（カン）欖（ラン）：誤訳にてオリーブの枝）を捧げもち、誼（よしみ）を請（こ）う口上（こうじょう）を述べるのを、なにとぞ粗略にお扱いなきよう、切に切にお願い申し上げます。 われらは神々の運命（さだめ）に従い、格別にこちらの土地に寄せていただいた者でござる。これは神々の御命令にほかなりませぬ。こちらがダルダヌス生誕（せいたん）の地なればこそ、アポロ神もあえてこちらを指定したまい、テュレヌス（エトリア）のテュブリス川と、ヌミクス川の源流の聖なる泉をば求めるよう、強く促（うなが）したまうのです。(7-234-242) (7-243)(7-244)(7-245)(7-246)(7-247)(7-248) なおここに、ご挨拶のおしるしに差し上げたき物がござる。これはわれらが古（いにしえ）の栄華（えいが）の、乏（とぼ）しき証拠の品々（しなじな）にござる。われらはこれを燃ゆるトロヤより運び出して参った。これは王の父、アンキセス殿の黄金（おうごん）の盃（さかずき）にござる。殿（との）は祭壇の前にて酌（しゃく）す時にこれをお使いあそばした。 またこちらはプリアムス王の衣装でござる。王は民を集めて掟（おきて：ユラという）を授けたまう時、つねにこれらを身につけたもうた。これが王笏（おうしゃく）、これが聖なる頭冠（とうかん：ティアラ：ティアラスという）。またこれらはイリウムの女たちが織り出せしお召し物にござ候（そうろう）」。(7-243-248)

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2015/11/21 オリジナル教会（初代代表）　笹倉正義
正式名称：（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会