６（７）ミセヌスの火葬壇を

○（６−７）ミセヌスの火葬壇を準備 (6-149)(6-150)(6-151)(6-152)(6-153)(6-154)(6-155) さて、いまひとつ申し上げることがございます。あなたの友なるひとりの人間が命（いのち）を失い、遺体となって横たわっています。まだあなたはこのことをご存じありません。しかし、あなたがこうしてわたしの助言を求め、ここに留（とど）まっておられるその間にも、この死があなたの艦隊を穢（けが）しているのです。この人を放（ほう）っておいてはなりません。しっかりとお墓に葬（ほう）ってさしあげなさい。 そして黒い羊を屠（ほふ）って、まずは禊（みそぎ）を済ませてください。こうしたことが果されて初めて、ステュクスの聖林と、また本来（ほんらい）生（せい）ある者には閉ざされた王国があなたの視野に入ってくることになります」。彼女はこう言うと口を閉ざした。(6-149-155) (6-156)(6-157)(6-158)(6-159)(6-160)(6-161)(6-162) (6-163)(6-164)(6-165) アエネアスは目をふせたまま沈痛な面持ちで洞窟を去った。自分の知らぬところで何が起きたのか、いろいろ考えてみたが彼には思い当たることがなかった。忠実なアカテスが彼についてきた。彼も同じ考えに心を領され、足どりが重かった。ふたりの話題は自（おの）ずとそのことに集中した。予言者の巫女が言った命を落とした仲間とは誰なのか。誰の遺体を葬れと彼女は言ったのだろう。 こうしてふたりが歩いていると、乾いた砂浜に、ミセヌスが横たわっているのが見えた。それはアエオルス(1-54)の子ミセヌス(3-244)で、無残（むざん）にも横死（おうし）をとげていた。それは青銅の喇叭（らっぱ）を鳴らして兵士を鼓舞（こぶ）し、その旋律（せんりつ：シラベ）で軍神マルスを奮起せしめる、かけがいのない名手（めいしゅ）だった。(6-156-165) (6-166)(6-167)(6-168)(6-169)(6-170)(6-171)(6-172)(6-173)(6-174) 彼はかつて大ヘクトルの従者をつとめた。ヘクトルに従い、戦場（せんじょう）喇叭（ラッパ：リトウウスという）を鳴らして戦場に向かう姿は際立（きわだ）っていた。また槍（やり）の上手（じょうず）でもあった。しかしヘクトルがアキレスの手にかかって討たれると、彼は最強の英雄（えいゆう：ヘロス）アエネアスの一味（いちみ）となって行動を共にした。 それ以下の者に従うことなど、彼の潔（いさぎよ）しとするところではなかった。だがある時、彼は気まぐれで法螺貝（ほらがい）を朗々（ろうろう）と海面に響かせた。軽率にも彼は、こうして歌の旋律（せんりつ：本はしらべ）で神々に腕比（うでくら）べを挑（いど）んだのだ。このことがトリトン（海神）の怒りを招くことになった。こんな話が本当だとするならばだが、神は彼を攫（さら）い、岩間（いわま）の泡立つ波に沈めたということだ。(6-166-174) (6-175)(6-176)(6-177)(6-178)(6-179)(6-180)(6-181)(6-182) 皆、彼の死を悼（いた）んで大泣（おおな）きに泣いた。とりわけ敬虔なアエネアスはひどく泣いた。しかし皆、哀（かな）しみつつ大急ぎでシュビラの巫女の言いつけにとりかかった。彼らは木を積み上げて薪（たきぎ）の祭壇を築き、それを天高くそびえさせる段取りを整えた。

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2015/11/15 オリジナル教会（初代代表）　笹倉正義
正式名称：（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会