６（１３）カロンの船で渡河(とか)

○（６−１３）カロンと巫女の応酬 (6-384)(6-385)(6-386)(6-387)(6-388)(6-389)(6-390)(6-391) (6-392)(6-393)(6-394)(6-395)(6-396)(6-397) 二人（アエネアスとシビュラの巫女）は旅を続け、川に近づいた。するとステュクス（冥界（めいかい）の川）の流れに棹（さお）さす船頭（せんどう：カロン）が、静かな森の中を通って岸辺に接近するその姿を認め、先に遠くから、大声で声をかけた、「誰じゃい、誰じゃい。剣を抜いてわしらの川に向かってくるのは。まず口上（こうじょう）をのべよ。そもそも何の用じゃ。そこで足を止めんかい。 ここは影たちのお土地じゃ。夢と夜の眠りの場所じゃ。ステュクス（冥界の川）の船が生きた肉体を運ぶのは、きついご法度（はっと）じゃ。アルケウスの孫（ヘラクレス(6-123)が来たことがあるが、わしは気が進まなかったぞ。 テセウス(6-123)とピリトウスの時も面白くなかった。わしは嫌々彼らに淀（よど）を渡らせたのよ。いくら神々の御子（みこ）たちで、剛勇無双（ごうゆうむそう）のおかたたちだと言ってもな。 ヘラクレスは地獄（じごく：タルタラ）の番犬を無理矢理（むりやり）鎖（くさり）に繋（つな）ぎ、ふるえる犬を、容赦なく王の玉座から引きずり出した。また、セテウスたちは王妃を閻魔大王（えんまだいおう：ディス）の寝室から連れ出そうとしたのじゃ」。(6-384-397) (6-398)(6-399)(6-400)(6-401)(6-402)(6-403)(6-404) (6-405)(6-406)(6-407) これに対し、アムプリュソス川の巫女は手短に答えた、「わしらはそんな企（たくら）みは抱いておらぬ。かっかと来なさるな。武器で戦おうなどとは思っておらぬ。洞窟の巨大な番犬は、いつまでも吠えながら、蒼ざめた影たちを恐（こわ）がらせていて結構じゃ。プロセルピナ御妃（おきさき）様も、叔父様（プロセルピナは父ユピテルの兄弟すなわち叔父（おじ）プルトンに嫁（とつ）いだ）の御館（おやかた）にて貞節をお守りあそばせばよろしゅうござんす。 じゃがこちらにおわすは、トロヤの君、アエネアス王にあらせられる。敬虔と武勇にかけては隠れもなきおかたにあらせられるぞ。今し夷（えびす：エレブスという）のお最下（さいか）の影たちのもとを訪れたまい、御父君と対面せんとの思し召しじゃ。かかる敬虔のお姿が汝にわからぬとあらば、ここなる枝が」この時、巫女の衣（ころも）の下の枝が顕（あら）わになった、「目に入らぬか」。カロンの怒りはすっかり鎮（しず）まった。(6-398-407) (6-408)(6-409)(6-410)(6-411)(6-412)(6-413)(6-414) (6-415)(6-416) これ以上何も言う必要はなかった。カロンはこの貴重な土産（みやげ）(6-139)にじっと見入った。彼がこの運命（さだめ）の小枝を目にするのは実に久しぶりであった。彼は青暗色の小船を回して岸に寄せた。そして船縁（ふなべり）に並んでいた亡者どもを追い出して空席（くうせき）を作った。直（ただ）ちにアエネアスがその巨体を船にのせた。すると彼の重みで船板（ふないた）の縫い目が軋（きし）み、その合わせ目からどっと汚水（おすい）が流れ込んでっきた。船は川を渡り、予言者の巫女とアエネアスは、無事に彼岸（ひがん）の、蒼灰色の葦（あし）の茂る穢（きたな）い沼地に降り立った。(6-408-416)

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2015/11/15 オリジナル教会（初代代表）　笹倉正義
正式名称：（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会