３（１２）イタリアの軍馬

　３（１２）イタリアの軍馬

○（３－１２）イタリアの陸地に馬を見たアンキセスの予言、この地に戦争が運ばれる
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われわれは隣接（りんせつ）するケラウニアの山並（現アルバニア）に沿って、海を北上しました。そこからイタリアを目指すのが最短の海路（かいろ）なのです。太陽が急速に傾き、黒い山々の影が迫りました。われわれはひとまず安らぎの陸地に上がり、籤（くじ）によって櫂座（かいざ）の配分を決め、それから乾いた土の上に散らばって身体を休めました。眠りが、疲れた四肢（よんし）にかぶさってきました。(3-506-511)

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まだ夜の女王が、時の女神たちの御（ぎょ）する車を中天（ちゅうてん）に進めかねている頃、はやくもパルヌルス（舵手をしている者）は臥所（ふしど）を立ってつぶさに風の方向を調べつつ、大気（たいき）の音に耳を傾けはじめました。それから彼は夜空に静まる星座の調査にかかります。

大角星（アルクトウルス）と雨をもたらす牡牛座七星（ヒュアデス）、大車座（トリオネス）のふたつの熊座、そして黄金の鎧（よろい）をつけたオリオンを、つぶさに観察します。こうして天に異常なくすべてが順調であることを確認すると、彼は船尾より、高らかな合図（あいず）を響かせました。われられは即座（そくざ）に陣営をたたんで、航海のしたくにかかり、船に帆のつばさを張り広げました。(3-512-520)

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星々が消え去り、アウロラ（曙（あけぼの）の女神）が赤く明け初（そ）める頃、遠くに横たわる丘がぼんやりと見えました。イタリアの大地が低くつらなっていたのです。『イタリアだ』。と、最初にアカテスが叫びました。われわれは皆、一斉（いっせい）に歓声（かんせい）をあげて、イタリアに挨拶（あいさつ）の言葉を送りました。

父アンキセスは大きな混酒器（こんしゅき：クラテル）を花輪（はなわ）で飾り、生（き）の酒をなみなみと注ぎ、神々に呼びかけながら、そそり立つ船尾（せんび）に立ちました。『海と陸と、』また嵐とを司（つかさど）りたまう神々よ、風もてわれらに良き航路を与えたまえ。順風を吹き送りたまえ』。(3-521-529)

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すると風向（かざむ）きに変化が起こり、われらに願わしい方向に吹きはじめました。目の前に港が開け、近づいてきました。そしてやがて、山頂にミネルワの神殿（イタリアの踵（かかと）の部分に位置するカストウルム・ミネルワエ）が見えました。船員たちは帆をたたみ、船首を岸に向けました。

港は、南東風（なんとうふう：エウルス）に煽（あお）られて打ち寄せる波浪（はろう）で、弓なりに湾曲（わんきょく）していました。その前に立ちはだかる岩壁（がんぺき）には潮（うしお）の雫（しずく）が砕け散っていました。港はその後ろに隠されていました。塔のようにそびえる断崖（だんがい）がふたつの壁の腕を前に突き出しています。寺院は、その岸から離れたところにありました。(3-530-536)

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われわれは、ここの草原に四頭（よんとう）の馬を見ました。これが、最初の兆（シルシ：きざ・し）（古代人はこうした折には必ず吉凶（きっきょう）を占う兆を探す）でした。馬たちは野に散らばって草を食べ歩いていました。雪のように白く輝く馬たちでした。

父アンキセスは言いました、『戦争じゃ。わしらを迎えるこの地は戦争を運んでくる。馬たちが戦（いくさ）のそなえをしている。これは、軍馬（ぐんば：アルメンタという）としても戦（いくさ）をもたらすものじゃ。とはいえ、同じ馬がおとなしく車を牽（ひ）くこともある。彼らは軛（くびき）につながれれば、四足（よつあし：クワドリペデスという）として手綱（たづな）さばきに従ってくれる。それならば、平和の見込みもあるわけじゃ』。

ここでわれわれは、武具を鳴らすパラス（ミネルワ）の聖なる御心（みこころ）を安んじ奉（たてまつ）る祈願（きがん）供養（くよう）を行いました。ここで歓呼（かんこ）するわれわれを最初に出迎えたもうたのはこの女神（めがみ：ヒメガミ）だったからです。

それからわれらはプリギュアの外套（がいとう）で頭を包み、ヘレヌスが特にしっかり守るようにと与えてくれた忠告に従い、その作法どおり、アルギワ（アルゴスの）の異名（いみょう）を持つユノに、指示された犠牲のほまれを捧（ささ）げました。(3-537-547)

2015/10/19 オリジナル教会（初代代表）　笹倉正義
正式名称：（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会