２（７）間者シノン（お人よし）

(2-145)(2-146)(2-147)(2-148)(2-149)(2-150)(2-151) シノンはぼろぼろ泣きながら話していました。われわれは彼の命（いのち）を助けました。皆、深い同情の念にとらわれていったのです。プリアムス王ご自身が、まずシノンの手枷（てかせ）と、強（きつ）く括（くく）られた縛（いまし）めを外（はず）すように言いつけ、それからこんなやさしい言葉をかけました。 「おまえが誰であろうと、もうギリシャ人のことなど忘れるがよい。これからはわれわれと同じトロヤ人として暮すがよいぞ。ただし、わしの質問には真実を述べねばならぬ。彼らはなぜこの巨大な馬像（ばぞう）を建てたのじゃ。誰の案なのじゃ。なんの目的じゃ。どういう呪（まじな）いなのじゃ。それとも戦（いくさ）の道具か」。(2-145-151) (2-152)(2-153)(2-154)(2-155)(2-156)(2-157) (2-158)(2-159)(2-160)(2-161) 王がこう言うと、シノンは、縛めを解かれたもろ手を天へ向けました。それこそは悪をしっかりと仕込まれているペラスギ（ギリシア）人の流儀（りゅうぎ）にほかならなかったのですが、その姿で彼は始めました、『天なる火よ、あなた方と、その犯されざる御稜威（ごみいつ）に、おれは誓います』、そう彼は言いました。『生贄（いけにえ）の祭壇や屠殺（とさつ）の剣（つるぎ）など、おぞましいものからおれは逃げた。 生贄の頭を飾る神々の鉢巻（はちまき）もおれにはまっぴらだ。おれはギリシア人の聖なる掟を無視する。それは不当ではない。もしも、彼らが何か隠しているのならば、おれがすべてを白日（はくじつ）のもとに晒（さら）しても、それは不当ではない。おれは祖国の法にはもはや縛られぬ。 トロヤよ、そっちは約束（やくそく）をまもってほしい。おれが真実（しんじつ）を話してそっちの安全が保障されるなら、おれも大きな借（か）りを返すことになる。だからトロヤよ、そっちも信義をまもってほしい。(2-152-161)

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2015/10/4 オリジナル教会（初代代表）　笹倉正義
正式名称：（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会