２（２０）子イウルスに異象が

(2-671)(2-672)(2-673)(2-674)(2-675)(2-676)(2-677)(2-678) わたしは、剣を腰につけ、左手を盾に通すと、建物の外へ向いました。すると、敷居のところで、妻がわたしの足に抱（だ）きついてすがり、幼いイウルスを、父たるわたしに差し出しました。『もしも死にに行くおつもりでしたら、どうぞわたしどもも一緒に行かせてください。 どこへでもお伴（とも）いたします。でも戦（いくさ）上手（じょうず）のあなたがまだ闘（たたか）いに希望をお持ちなら、まずこのわが家（や）をお守りくださいませ。いったいこの小さなイウルスを誰に託せとおっしゃるのですか。あなたのお父上と、一度はあなたの妻と呼ばれたわたしを、誰に残して往（ゆ）かれるのですか』。(2-671-678) (2-679)(2-680)(2-681)(2-682)(2-683)(2-684)(2-685)(2-686) 彼女は、こう言って泣き崩れました。その悲嘆の声は館中に響きわたりました。この時、言うも不思議な現象が起きました。われら夫婦の手と、悲しげに見つめるわれらの顔との間に挟（はさ）まれたイウルスの頭の天辺（てっぺん）から炎（ほのお）がたちあがり、光をはなったのです。 それは手に触れても熱くない柔らかい火で、髪の毛に移り、こめかみ（耳の上で、目じりのわきの部分）の周りで燃えています。われわれは恐怖におののいて、あわてて息子の髪の毛をたたき、水をかけてその神聖な火を消そうとしました。(2-679-686) (2-687)(2-688)(2-689)(2-690)(2-691)(2-692)(2-693)(2-694) しかし父は、晴々とした顔をして天を見つめ、ふたつの平手を差し出して、言いました。『全能なるユピテルよ、われらの願いに耳をお貸しくだされい。今こそわれらをば、しかとご覧くだされ、われらの敬神の嘉（よみ）したまわんこと、ひとえに願いたてまつる。われらに力を与えたまえ。父なるものよ、この吉兆（きっちょう）に確証を与えたまえ』。 老父がこう言い終えると、突然、騒がしい音が聞こえ、左側（ローマでは吉（きち）の方向）に雷鳴が轟きました。そして、闇を通って天からひとつの星が、たくさんの光を輝かせつつ、尾を引いて滑り落ちてきました。(2-687-694) (2-695)(2-696)(2-697)(2-698)(2-699)(2-700)(2-701) (2-702)(2-703)(2-704) われわれはその星が建物の高い屋根のむこうに落ちてゆくのを見ました。それは、鮮（あざ）やかな航跡（こうせき）を引いてイダの森に姿を隠しました。あとには長く天に道筋が残って光り、あたりには硫黄（いおう）の煙がたちこめました。ここで、父はようやく心を決めてくれました。彼は天を仰ぎ、神々に話しかけ、聖なる星座を拝みました。 『これで迷いはなくなりもうした。あなたがたの導きたまうところへ参りまする。故郷（こきょう：フルサト）の神々よ、家を守りたまえ。孫を守りたまえ。これはたしかに、あなたがたのお兆（しるし）です。トロヤはしっかりとあなたがたに守られておりもうす。わかったぞ息子よ。わしはおまえについてゆくことにする』。(2-695-704) (2-705)(2-706)(2-707)(2-708)(2-709)(2-710)(2-711)(2-712) 父がこう言い終えると、すでに城壁を伝って火の燃える音が聞こえてきました。火炎の熱さが次第に大きくなりました。『では、急ぎましょう、父上。わたしの首におつかまりください。わたしが、あなたを肩に背負います。なに、父上など軽いものです。何事が起きようと、われわれは危険も、成功もふたりでともにするのです。 小さいイウルスはわたしから離れないように、わが妻は、やや離れてわれわれについてくるように。また、家の者どもは、これから述べることをよく心に刻（きざ）め。(2-705-712)

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2015/10/4 オリジナル教会（初代代表）　笹倉正義
正式名称：（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会