２（１８）母ウェヌスが叱(しか)る

(2-589)(2-590)(2-591)(2-592)(2-593)(2-594) (2-595)(2-596)(2-597)(2-598)(2-599)(2-600) この時、これまでに見たことがないほど鮮やかな、なつかしい母の姿が、わたしの目の前に浮び上がりました。彼女は夜闇の中で、美しい光にきらきら輝き、自分が女神であることを少しも隠そうとしませんでした。それは天上に住む神々の威厳に満ちたお姿でした。彼女はわたしの右手をつかむと、バラ色の口でこう話しかけました、『おまえ、そんなに烈（はげ）しく怒って心を痛め、どうするのですか。そんなに取り乱して、何ができますか。わたしを悲しませないでください。 それよりも、お年を召され、弱っておられるお父上のことをまず考えなくては。おまえは、お父上のアンキセス殿を、どこへ置いてきたのかえ。クレウサ（アエネアスの妻）様は大丈夫（だいじょうぶ）かえ。小さいアスカニウスのことはよいのですか。そこら中（じゅう）を歩き回っているギリシャの軍隊が、おまえの家族を見つけたらどうなるの。わたしがついていなければ、今頃、皆、炎に飲み込まれるか、刀の餌食（えじき）になっていましたよ。(2-589-600) (2-601)(2-602)(2-603)(2-604)(2-605)(2-606)(2-607) あのね、今はテュンダレウスの娘のラカエナ（スパルタの別名ラケダエモンの）女（ヘレナ）の憎たらしい美貌が問題ではないの。パリスの罪過（ざいか：アヤマチ）もたいしたことではありません。神々の無慈悲です。神々ですのよ。この豊かな国を滅ぼし、トロヤをその頂上から転覆（てんぷく）させたのは。 目を見開いてよくごらん。死すべきおまえの目を覆い、湿らせている雲を今、取りのけてあげます。母の言うことを恐れてはいけません。わたしの指図（さしず）に従うのをためらってはなりませんのよ。(2-601-607) (2-608)(2-609)(2-610)(2-611)(2-612)(2-613)(2-614) あの大きな石の塊（かたまり）が見えるでしょう。岩と岩がぶつかって、どんどん壊（こわ）されています。あんなに煙が立ちのぼり、そこら中（じゅう）、細かい砂が飛んでいるではありませんか。ネプトウヌス（ギリシャ名：ポセイドン）（トロヤ城壁の建設神とされる）が三叉槍（みつまたやり：トリデンス）で土台を突き崩（くず）して壁を壊しているのです。町全体を、徹底的に壊してしまう算段（さんだん）なのです。あそこ、真っ先にスカエアエ門（イリオン城壁の西門）に立ったのは、ユノ女神（ギリシャ名：ヘラ：ゼウスの妻）です。今、剣を腰にさし、猛（たけ）り狂って友軍（ゆうぐん）を船から呼び寄せています。(2-608-614) (2-615)(2-616)(2-617)(2-618)(2-619)(2-620)(2-621)(2-622)(2-623) また、見てごらん、トリトニアの女神（ヒメガミ）パラス（ミネルワ：ギリシャ名：アテナ）が、一番高い砦（とりで）の上で雨雲（あまぐも）に乗り、獰猛（どうもう）なゴルゴの首の付いた盾（たて）を持って、電光をきらめかせています。 大神ユピテル（ギリシャ名：ゼウス）ご自身、ダナイ勢の勇猛心を奮い立たせ、勝利の力を送り、神々を、ダルダヌスの軍勢に嗾（けしか）けておいでなのです。だから、逃げなさい。おまえの戦（いくさ）は終ったのです。わたしは、どこへも行きません。おまえが安全に父上のお館（やかた）に戻るのを見届けます』。 母は言い終えると、濃い夜の闇の中へ姿を隠しました。するとこの時、わたしには恐ろしい顔がいくつも見えてきました。それはトロヤに敵心を抱く、偉大な神々のお姿だったのです。(2-615-623)

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2015/10/4 オリジナル教会（初代代表）　笹倉正義
正式名称：（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会