２（１６） ２（１６）
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| (2-515)(2-516)(2-517(2-518)(2-519)(2-520)(2-521) (2-522)(2-523)(2-524)(2-525) ここでヘクバと王女たちが、空（むな）しく高壇（こうだん）を取り囲んでいました。彼女たちは、まるで黒い嵐に急降下する鳩の群れのようでした。一箇所に集まって神々の像にすがりついていたのです。ヘクバは、若かりし頃の物の具を取って立つプリアムスを見ると言いました。『どうしてまた、そんな槍などお召しなさいます、わが背の君（夫を呼ぶ敬称）。またそのようなお姿で、どちらへおわしますおつもりか』と彼女は尋ねた、『もはや、ご加勢などご無用の時になりましてよ。 警護の者なども不要ですのよ。わたしのヘクトルが生きてここにいたとしても同じこと。それよりも、ささ、こちらへおわしませ。この祭壇がわたしたち皆を守りたまうでしょう。でなかったら一緒に死んでしまいましょう』。彼女はこう言うと、老いたプリアムスを抱きしめ、聖なる場所にすわらせました。(2-515-525) (2-526)(2-527)(2-528)(2-529)(2-530)(2-531)(2-532) この時、プリアムス王の王子（おうじ）のひとり、ポリテスの姿が見えました。彼はピュルルスの手を逃（のが）れて逃（に）げ回っていました。重い傷を負いながら、槍の下をかいくぐり、敵兵のあいだを走り、長い回廊（かいいろう）を回り、人気（ひとけ）のない大広間（おおひろま：アトリウム）を抜けてきました。 ピュルルスは彼にとどめの打撃を与えようと、必死に追いかけてきます。そして見るまに彼に追いついて、彼を掴（つか）むと、槍を突き立てそうになりました。ポリテスは、どうにか両親の目の前に辿（たど）り着きました。しかし彼らの面前でどうと倒れ、夥（おびただ）しい血を流して息を引きとりました。(2-526-532) (2-533)(2-534)(2-535)(2-536)(2-537)(2-538) (2-539)(2-540)(2-541)(2-542)(2-543) プリアムスはそれまで、ぐったりして死んだような有様でしたが、いきなり声を荒立てて、怒りをぶちまけました。『なんたる卑劣（ひれつ）、厚顔無恥（こうがんむち）にも程がある。天に仁義（じんぎ：ピエタス）があるならば、かかる非道（ひどう）は、神々のお咎（とが）めなしには済まぬぞよ。必ず罰（ばち）があたろうぞ。 わしの眼前（がんぜん）でわが息子を殺して見せ、父親の顔に死を投げつけて、平然としているとはな。かかる所業（しょぎょう）は、おまえが、厚かましくも父と呼んでおる、かのアキレスもよくせなんだ。あれは、このプリアムスには敵であったが、嘆願者（たんがんしゃ）の願いを聞き届け、快く道理に耳を貸し、埋葬のため、ヘクトルの遺体とわしをわしの王国へ送り届けてくれた』。(2-533-543) (2-544)(2-545)(2-546)(2-547)(2-548)(2-549) (2-550)(2-551)(2-552)(2-553) 王はこう言うと、槍を投げました。それは力不足で武器にならず、青銅の盾（たて）に受けられて鈍（にぶ）い音をたて、盾錘（たてすい：ウムボ：円盾中央の突起部）の先にぶらりと垂れ下がりました。ピュルルスは答えました、『応（おう）さな。ならば、わが父ペレウスの子（アキレス）のもとへ赴（おもむ）き、報告せい。汝（われ）の子が、なんちゅう悲しい行いをなしおるかと。ネオプトレムス（ピュルルス）は、父には似ても似つかぬうつけ者じゃとな。このこと、忘れるでないぞ。では、死ぬがよい』。 彼はこう言うと、老齢に震えるプリアムスを無理やり高壇のところへ引っ張っていきました。王の足は息子の血に滑りました。ピュルルスは左手を王の髪に巻きつけ、右手できらめく剣を抜き、王の脇腹にぐっと深く、柄（つか）のところまで刺し込みました。(2-544-553) (2-554)(2-555)(2-556)(2-557)(2-558) こうしてプリアムス王の運命（さだめ）に終止符が打たれたのです。彼は終りに臨んで炎上するトロヤを見ることになりました。没落するペルガマの城の目撃者として死んでゆきました。まさに運命としか言いようがありません。かつてはアシア（アジア：今のトルコの地域）の人民と大地の誇り高い支配者として君臨した人物が、ついには巨大な死骸として浜辺（はまべ）に横たわったのです。首は肩から切り離されていました。それはもはや名もなきむくろに過ぎませんでした。(2-554-558) |
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2015/10/4 オリジナル教会（初代代表） 笹倉正義
正式名称：（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会