１２（９）盟約は反故に

○（１２−９）易者トリムニウスの投げ槍で両雄の決闘が両軍の騒乱に変わる (12-266)(12-267)(12-268)(12-269)(12-270)(12-271)(12-272) (12-273)(12-274)(12-275)(12-276) こう言い終わると、彼は前に走り出て、正面に並んだ敵の部隊へ向かって投槍を放り投げた。水木（みずき：コルヌス）槍はびゅーっとを立てて風を切り、狙（ねら）い通りに飛んだ。同時にどっと喚声が湧き起こった。整列していた兵たちが騒ぎ出し、熱く興奮して行動を起こした。一本の槍が飛んだ先に、たまたま九人の兄弟の、美しい肉体が並んで立っていた。彼らは皆、アルカディア人のギュリップスの貞節（ていせつ）な妻、とあるテュレナ（エトルリア）女から生まれた子たちであった。 槍は彼らの中央にいたひとりを射抜（いぬ）いた。それはちょうど、腹に巻いた縫い目の際立（きわだ）つ剣帯（けんたい）の両端（りょうたん）が鋲（びょう）で打たれたところを、ぐさりと貫（つらぬ）いた。犠牲者は姿（すがた）良き若者で、輝く具足（ぐそく）を身に着けていた。彼は肋骨（ろっこつ）を折られ、黄色（きいろ）い砂地（すなじ）にどうと倒れた。(12-266-276) (12-277)(12-278)(12-279)(12-280)(12-281)(12-282)(12-283) (12-284)(12-285)(12-286)(12-287)(12-288) 兄弟たちは、かっと激怒（げきど）した。彼らは悲しみに駆（か）られ、ある者は剣（けん）を抜き、ある者は投槍を掴（つか）み、目標も定めず駆け出した。するとこれに対し、ラウレンテス人の部隊が動き出した。するとまた、トロヤ人、アギュリニ（エトルリア）人、そして彩（いろど）り豊かな柄盾（がらたて）で武装したアルカディア人たちが、続々（ぞくぞく）と部隊を繰（く）り出した。彼らは双方（そうほう）共（とも）、雌雄（しゆう）を決するにはやはり実力行使が必要だという点で、完全に一致してしまった。祭壇は略奪された。 ハンディタイプの神々 天をごうごうと槍の嵐が吹き乱れ、凶器が雨のように降ってきた。混酒器（こんしゅき：クラテル、クラテラ）も炉（ろ）も持ち去られた。ラティヌス王は、盟約が成就（じょうじゅ）しないまま、神々を護（まも）って逃げていった。武士（もののふ）たちは戦車に馬をつなぎ、馬に飛び乗り、剣をぬいてかけた。(12-277-288) (12-289)(12-290)(12-291)(12-292)(12-293)(12-294) (12-295)(12-296)(12-297) メッサプス(12-133)は馬をまわして、王のしるしを帯びたテュレニ人のアウレステス王(10-206)の前に立ちはだかった。メッサプスは、盟約を反故（ほご）にする機会を狙っていたのだ。アウレステスは反転して逃げ出したが、うしろにしつらえてあった祭壇にけつまずいて頭から墜落（ついらく）し、したたかに肩を打った。槍を構えたメッサプスが彼に飛び掛った。 助けを請（こ）うアウレステスに、馬上からぐいっと剛槍（ごうやり）を突き刺し、彼はこんな口上（こうじょう）を述べた。「これでどうだ。神々にささげたてまつる何よりのご馳走（ちそう）じゃ」。イタリー人の兵たちが駆けつけ、まだ生（なま）温（あたた）かい身体から武具をはぎとっていった。(12-289-297) (12-298)(12-299)(12-300)(12-301)(12-302)(12-303)(12-304) (12-305)(12-306)(12-307)(12-308)(12-309)(12-310) コリュナエウス(6-228)は、打ちかかるエビュスス（イタリー人）の顔に、祭壇の燃え木を突き刺した。たちまち彼の長い髭（ひげ）は炎（ほのお）を上げ、焦（こ）げた悪臭（あくしゅう）を放った。慌（あわ）てるエビュススにコリュナエウスが覆（おお）いかぶさり、左手で巻き毛を掴んで引き回し、倒した敵を膝（ひざ）で固定し、その脇腹（わきばら）に冷たい剣を差し込んだ。 ポダリリウス（トロヤ人）は、槍衾（やりぶすま）をかいくぐって戦列の最前線に躍り出た羊飼いのアルスス（イタリー人）に、抜身（ぬきみ）の剣を振り下ろした。するとアルススは斧で打ち返し、ポダリリウスの額（ひたい）の真っ向（まっこう）から顎（あご）にかけて強烈な一撃（いちげき）を加えた。たちまち彼の鎧（よろい）は朱（あけ）に染（そ）まり、固い休息が目を塞（ふさ）ぎ、鉄のように重い眠りが、ポダリリウスにのしかかった。世の光は永遠の暗闇に沈んでいった。(12-298-310)

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2015/12/21 オリジナル教会（初代代表）　笹倉正義
正式名称：（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会