１２（１４）殺しまくろう

○（１２−１４）戦場にトウルヌスを捜すアエネアスにユトウルナが御者に化け (12-468)(12-469)(12-470)(12-471)(12-472)(12-473)(12-474) (12-475)(12-476)(12-477)(12-478)(12-479)(12-480) 御者に化けたユトウルナ この情勢に心を痛めた女武者（おんなむしゃ：ウィラゴという）のユトウルナは、トウルヌスの御者（ぎょしゃ：アウリガという）のメティスクスを双（そう）の手綱（たづな）の間へ蹴り入れ、彼を戦車からはるか遠く置き去りにし、ひたすら駆けた。彼女は手で革（かわ）鞭（むち）を左右に操（あやつ）り、声も身体つきも、鎧（よろい）もメティスクスとそっくり同じにし、彼のあらゆる仕草（しぐさ）を真似（まね）た。そのさまは、あたかも一羽（いちわ）の黒い燕（つばめ）が、贅沢（ぜいたく）な主人の館（やかた）を飛び回るようだった。 翼（つばさ）を振りながら高い天井（てんじょう）を回遊（かいゆう）し、食物（たべもの）を少々（しょうしょう）啄（つい）ばんで、ピーピーと鳴く雛（ひな）たちに餌（えさ）を届ける。人気（ひとけ）のない回廊（かいろう：ポルティクスという）を飛び回ったり、水の溢（あふ）れる養魚（ようぎょ）池（いけ）のまわりで囀（さえず）ったり。 そのようにユトウルナは敵の間（あいだ）を抜け、馬を駆り、至るところ、戦車を急走（きゅうそう）させた。こうしてぐるぐる回りながら、兄が有利に闘っているさまを明確に描き出し、さりとて一対一（いち・たい・いち）の勝負は避けて、はるか道なき彼方をぐるぐる回った。(12-468-480) (12-481)(12-482)(12-483)(12-484)(12-485)(12-486) (12-487)(12-488)(12-489)(12-490) アエネアスのあせり アエネアスは、この円弧（えんこ）をえがいて回る戦車を捉（つか）まえようと追いかけた。彼はただ、トウルヌスのみを求め、乱戦の中、大声で敵将の名を呼ばわった。だが彼が目でその姿を確認しようとしても、また足で悍馬（かんば：アリペスという）たちと競い合っても、ユトウルナは、くるくると方向を変えて逃げるばかりだった。 おのれ、畜生（ちくしょう）。どうしてくれよう。遂にアエネアスは激昂（げっこう）のあまり心を乱した。さまざまな考えが、彼の脳裏（のうり）で、無秩序（むちつじょ）に叫びあった。この刹那（せつな）、メッサプス(12-297)は、軽快（けいかい）に駆け寄り、たまたま左手に携えていた、鉄の切っ先つけたしなやかな二本の投槍の一本（いっぽん）を、アエネアスめがけてひょうと放った。そして彼の狙いは正確だった。(12-481-490) (12-491)(12-492)(12-493)(12-494)(12-495)(12-496) (12-497)(12-498)(12-499) アエネアスは動きを止め、膝（ひざ）を折って盾の後ろに身を屈（かが）めた。槍は兜（かぶと）の天辺（てっぺん）をもぎとり、頂上（ちょうじょう）の冠毛（かんもう：クリスタ）を払（はら）い落とした。この時、アエネアスの中にむらむらと怒りが湧き起こった。こんな待ち伏（ぶ）せを食（く）らわされてはたまらない。またすでに馬も戦車も向きを変えて遠ざかってしまった。 ええい、殺しまくろう 彼はしばらくユピテル（ギリシャ神ゼウスのローマ化読み）に念じ、破（やぶ）られた盟約の祭壇に思いを馳（は）せ、決心（けっしん）を固めた。そして猛然（もうぜん）と敵軍の中に身を投じた。マルス神も照覧あれ。こうなれば目にもの見せて、容赦（ようしゃ）なく殺しまくるまでだ。彼の怒りはもはや抑制（よくせい）の手綱（たづな）を持たなかった。(12-491-499)

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2015/12/22 オリジナル教会（初代代表）　笹倉正義
正式名称：（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会