１１（２２）タルコン王

 
○（１１−２２）アエネアスの友軍タルコン王が神がかりの奮戦
(11-725)(11-726)(11-727)(11-728)(11-729)(11-730)(11-731)
天（オリュムプス）のいと高きところに座（ざ）を占（し）めて、人間（にんげん）と神々の創造主たる御（おん）父君（ちちぎみ）（ユピテル）が、大目玉（おおめだま）を見開いて、この有様（ありさま）をご覧になっていた。この時大御神（おおみかみ）は、テュレヌスの君（きみ）タルコン(8-607)を、辛（から）き御（み）戦（いくさ）へと駆り立てたもうた。

この勇士を煽（あお）りに煽り、むらむらと怒りの炎を燃えたたせたもうたのだ。タルコンは、もはや戦列の態（てい）をなさぬ殺戮の最中（さなか）へ馬を乗り入れ、声を枯らして騎馬軍団を叱咤（しった）激励（げきれい）、一人（ひとり）ひとりの名を呼びつつ彼らを前線へ連れ戻し、陣形（じんけい）を建てなおしていった。(11-725-731)

(11-732)(11-733)(11-734)(11-735)(11-736)(11-737)(11-738)
(11-739)(11-740)
「何たるざまじゃ。恥（はじ）を知れ、恥を。どいつもこいつも役立たずじゃな。貴様（きさま）たちそれで、テュレニ人と言えるか。臆病（おくびょう）風（かぜ）に縮（ちぢ）みあがって、みっともないぞ。たかだか女ひとりに蹴散（けち）らされ、戦列をこうも滅茶苦茶（めちゃくちゃ）にされるとは何だ。貴様たちの剣（けん）はどこを向いておるのじゃ。手にした槍を、なぜ使わん。

こう腰砕けじゃ、貴様たち、ウェヌスの愛に溺れた時の夜戦（やせん）どうするのじゃ。バックス神の弓なす葦笛（あしぶえ：ティビア）が踊りに誘っても、それじゃ行けないよ。ご馳走（ちそう）を頭に思い浮べろ。盃（さかずき）のいっぱい並んだ食卓を待っておれよ。それは、貴様たちの大好物（だいこうぶつ）じゃろが。貴様たちのほしいものじゃろが。

そのうち腸卜師（ちょう・うらないし：ハルスペクスという）(8-507)が吉兆（きっちょう）を持ってくるぞ。丸々と太った犠牲獣（ぎせいじゅう：ホスティア）が、貴様たちを聖林（せいりん）の奥へ迎え入れてくれるぞ」。(11-732-740)

(11-741)(11-742)(11-743)(11-744)(11-745)(11-746)(11-747)
(11-748)(11-749)(11-750)
こう言いざま、タルコンは決死の覚悟で、自ら馬を駆って乱戦の中へ乗り入れた。そしてウェヌルス(11-242)と正面（しょうめん）衝突（しょうとつ）し、恐ろしい形相（ぎょうそう）で彼に掴（つか）みかかり、彼を右手に抱え込んで馬から引きずり剥（は）がし、しっかり胸に彼を抱（かか）えたまま全速力（ぜんそくりょく）で馬を駆（か）った。この時、全ラティニ人たちの叫び声が天（てんまたはオリュムプス）に轟（とどろ）いた。彼らは一斉（いっせい）にウェヌルスの行方（ゆくえ）に目を向けた。

タルコンは火の玉となって平原を飛んでいった。戦（いくさ）の武士（もののふ）を、わが身と共に運び去りながら。彼は敵の槍の端（はし）の切っ先（きっさき）をはずし、鎧（よろい）と兜（かぶと）の間の肌（はだ）が露出（ろしゅつ）したところをさぐり、そこへ止（とど）めの一突（きとつ）きを入れようとした。だが、敵も彼の右手を掴んで咽喉（のど）元（もと）を庇（かば）いつつ抵抗し、必死にまさぐりあって、身をもぎ離そうとした。(11-741-750)

(11-751)(11-752)(11-753)(11-754)(11-755)(11-756)
そのさまはあたかも、一羽（いちわ）の黄色（きいろ）い鷲（わし）が大空（おおぞら）高く、蛇（へび）を掴んで飛び去る時のようであった。鳥は両足でしっかりと獲物をおさえ、鉤（かぎ）爪（つめ）を立てて離さない。しかし傷ついた蛇も身をくねらせて抵抗する。鋭い鱗（うろこ）を直立（ちょくりつ）させ、口（くち）からしゅうしゅうと息を吐（は）き、激しく身を起こして反撃する。だが、鳥は、曲った嘴（くちばし）を突き立てて逆（さか）らう獣をおさえつける。翼（よく）が険（けわ）しく空（くう）を撃（う）つ。(11-751-756)

(11-757)(11-758)(11-759)(11-760)(11-761)(11-762)
(11-763)(11-764)(11-765)(11-766)(11-767)
その鷲のようにタルコンは、ティブルテス人（ティブルの住民）の戦列から獲物を拉致（らち）して凱歌（がいか）をあげた。するとマエオニア党（エトルリア人）の面々（めんめん）は、この棟梁（とうりょう：ドウクスという）の手本（てほん）に倣（なら）って突撃を敢行（かんこう）した。
 
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2015/12/20 オリジナル教会（初代代表）　笹倉正義
正式名称：（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会