１１（２０）乙女の初陣

○（１１−２０）女戦士カルミラの武勇弓矢の女神ディアナの化身 (11-648)(11-649)(11-650)(11-651)(11-652)(11-653)(11-654) この殺戮（さつりく）の最中（さなか）、箙（えびら：矢を入れて背に負う武具）を背負った女戦士（おんなせんし：女族アマゾン）カルミラの、矢を射るため右胸を露（あらわ）にしたが、ひときわ目立った。彼女はしなやかな手さばきで次々と槍を投げ、右手で諸刃（もろは）の剛の斧（おの）を振るった。その肩でディアナの武器、黄金（おうごん）の弓ががらがらと鳴った。退却するに際しても、彼女は弓を後ろへ向けて、逃げつつ矢を放ち続けた。(11-648-654) (11-655)(11-656)(11-657)(11-658)(11-659)(11-660)(11-661) (11-662)(11-663) 彼女の周（まわ）りをえり抜きの一党が固めていた。生娘（きむすめ：ウィルゴという）のラリナ、トウルラ、そして青銅の手斧（ておの）の使い手タルペイアらで、このイタリー女性軍は、聖女カミルラの、何にも優（まさ）る誉（ほま）れだった。選ばれた彼女たちは、平和にあっても戦（いくさ）においても、最も頼もしい聖女の右腕だった。 それはトラキアのアマゾン部隊(1-493)が、テルモドン川（黒海沿岸の川）に馬を乗り入れ、彩（いろど）り豊かに武装をととのえて出陣する時そのままの姿であった。ヒポリュテ（アマゾンの女王）に随（したが）う時も、マルス神の愛娘（まなむすめ）ペンテシレアが戦車で帰還（きかん）する際にも、彼女たちはけたたましい鬨（と）きの声をあげ、半月形の盾(1-493)をかざして女戦列を作り上げた。(11-655-663) （ギリシャ神話：アポロドロス）アマゾネス （９）2-5-9第九番目の仕事として、ヘラクレスにヒッポリュテの帯を持って来ることを命じた。彼女はテルモドン河岸（かがん）に居を構（かま）え、戦争に偉大な民族であるアマゾンたちを支配していた。というのは、彼女たちは武（ぶ）を練（ね）り、交合（こうごう）して子供を生むことがあれば、女の子は養育し、右の乳房は鎗（やり）を投げる邪魔にならぬように緊（シ）め取り、左の乳房は養育のために残しておくのであった。ヒッポリュテは他のすべての女たちの第一人者（だいいちにんしゃ）である徴（しるし）としてアレスの帯を持っていた。 (11-664)(11-665)(11-666)(11-667)(11-668)(11-669)(11-670) (11-671)(11-672)(11-673)(11-674)(11-675) 恐るべき乙女よ、あなたはその槍で誰を最初に討ち取り、また誰を最後に仕留めるのか。一体あなたは、何人の敵兵を殺して地面に横たえるのか。最初に犠牲になったのは、クリュティウスの子エウナエウスだった。この者は真っ向（まっこう）勝負に出、胸をさらした刹那（せつな）、樅（もみ）の木の長柄（ながえ）で身体を貫通された。彼はどくどくと血を吐いて倒れ、朱（あけ）に染まった土を噛みながら、息（いき）絶（た）え絶（だ）えの重症の身を転がした。 続いてリリスとパガススがやられた。ひとりは躓（つまず）いた馬の上でバランスを崩（くず）し、あわてて手綱（たずな）をまさぐった。そこへもうひとりが駆け寄り、武器を持たぬ右手を、滑（すべ）り落ちる仲間にさしのべた。だが二人とも同時に頭から地面に転倒した。彼らの次に犠牲になったのは、ヒポテスの子アマストルスだった。そして、遠方から追跡され、槍で倒されたのは、テレウス、ハルパリュクス、デモポオン、クロミスといった武将たちだった。(11-664-675) (11-676)(11-677)(11-678)(11-679)(11-680)(11-681)(11-682) (11-683)(11-684)(11-685)(11-686)(11-687)(11-688)(11-689) 乙女（おとめ：ウィルゴという）は、次々と手槍を投げた。投げた槍の数だけ、プリュギイ（トロヤ）人の武士（もののふ）を討ち取った。この時、彼方（かなた）に異様な軍装を整えた者が見えた。オルニュトウスという名の（エトルスキ人の）狩人（かりゅうど）で、イアピュギア（イタリア東南部）産の馬に跨（またが）り、牡牛（おすうし）から剥（は）いだ皮で両肩を覆（おお）って戦士の体裁（ていさい）を整え、白い歯をむき出した猿（さる）の、ぽっかりと開いた口（くち）と顎（あご）を面（おもて）につけていた。手には農槍（のうやり：スパルスという）を携（たずさ）えていた。 彼は軍団の中で闘（たたか）っていたが、頭ひとつ分（ぶん）抜（ぬ）きん出て目だった。この者をカミルラは逃（のが）さなかった。敵陣が壊滅していたので、彼女はやすやすと仕事を終えた。串刺（くしざ）しの屍骸（しがい）の上で、彼女は、胸から嘲（あざけ）りの言葉を吐きかけた(10-560)。「テュレヌスの勇士も形無（かたな）しね。森で獣を追っかける方（ほう）が似合（にあ）ってたわ。あなたたちの言葉がいかにでたらめなものか、女の槍が証明する日が来たのだとお思い。ただね、このカミルラに討ち取られた名誉はあなたのものだ。その軽くない功績を、今は亡き御先祖（ごせんぞ）様の御霊（みたま）に伝えるが良い」。(11-676-689) (11-690)(11-691)(11-692)(11-693)(11-694)(11-695)(11-696) (11-697)(11-698) 次に彼女は、二人（ふたり）のテウクリ（トロヤ）人の巨漢（きょかん）、オルシロクス(11-647)とブテスを仕留（しと）めた。ブテスは、背を向けて逃走中（とうそうちゅう）、兜（かぶと）を胸甲（むねかぶと：ロリカという：胸当）の間に槍を突っ込まれた。騎士の盾が左腕（さわん）の方へずれて、ちょうど首のところが無防備（むぼうび）になっていたのだ。また彼女は追走してくるオルシロクスを大きく円弧を描いてかわし、巧みに円の内側に回りこんで後方へ出、激しい斧の一打を加えて武士（もののふ）の鎧と骨を砕き、そのまま高位置を確保しつつ、容赦（ようしゃ）を請（こ）い、降伏を叫ぶオルシロクスに攻撃の手を休めなかった。傷が割れ、熱い脳漿（のうしょう）が顔を汚した。(11-690-698)

次へ

2015/12/20 オリジナル教会（初代代表）　笹倉正義
正式名称：（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会