１（５）大時化(しけ)のアエネアス

人々は叫び、帆綱が唸（うな）り声をあげた。黒雲が天を覆い、テウクリ（トロヤ）人の眼前から太陽が消え、黒い夜が海上を包んだ。天涯に雷鳴が轟き、上空を稲妻が走り抜けた。彼らの眼前を死の影がよぎった。たちまちアエネアスの四肢は凍りついた。彼はうめき声をあげ、両手を広げて天空へさし出し、大声で呼ばわった。(1-81-94) (1-95)(1-96)(1-97)(1-98)(1-99)(1-100)(1-101) 「ああ、トロヤの高い城壁の下で、父親に見守られて討ち死にした者たちよ、あなたがたの方が、わたしよりもずっとずっと幸せだった。ダナイ勢最強の勇士、テュデウスの子（ディオメデス）よ、あなたの右手がわたしの息の根を止めてくれたらよかった。イリアキ（トロヤ）の野で、わたしは屍（かばね）となるべきであった。 アエアクスの孫（アキレス）の槍に撃たれてヘクトル（トロヤの王子でアキレスの天敵）もそこで死んだ。偉大なサルペドンもそこで亡くなった。そこではシモイスの流れが、丈夫（もののふ）の壊れた盾（たて）と兜（かぶと）と、たくましい屍（かばね）を波に攫（さら）っていった」。(1-95-101) (1-102)(1-103)(1-104)(1-105)(1-106)(1-107) 彼がこう言うと、北風（アクイリオ）の暴風が唸（うな）りをあげて正面から帆にぶつかりり、高い波を天へ揚げた。櫂（かい）は壊（こわ）れ、舳先（へさき）は回り、船側は波に晒（さら）され、険しくそそり立つ海水の山が崩れ落ちた。そしてある者は波に攫われて空中へ舞い上がり、他の者の眼前では波が割れて海底が露呈し、こうして砂混じりの大波が荒れ狂った。(1-102-107) (1-108)(1-109)(1-110)(1-111)(1-112)(1-113)(1-114) (1-115)(1-116)(1-117) 南風（ノトウス）は三隻を攫って波間に隠れた岩へ投げつけた。この岩礁（がんしょう）の巨大な背が海面に見え隠れしており、これをイタリ人は祭壇（アラエ）と呼んでいた。南東風（エウルス）は三隻を、沖から浅瀬へと追い立てた。なんと哀れな光景か。船は浜辺（はまべ）に突っ込んで、砂の土手に埋まった。 アエネアスの目前で、リュキ人と忠実なオロンテスを載せた船の船尾を、上から巨大な波が襲った。航海長（マギステル）は頭から海中に転がり落ち、船は大浪（おおなみ）に揺られて同じところを三度旋回し、それからすぐに渦に飲み込まれて海中に没した。(1-108-117) (1-118)(1-119)(1-120)(1-121)(1-122)(1-123) 巨大な渦の中に浮んでいる人々の姿が見えた。兵たちの武具や船板（ふないた）、トロヤの宝物も波間にただよっていた。イリオネウスの頑丈な船も、勇者アカテスの船も損傷を受けた。アバスを乗せた船も、高齢のアレテスを運ぶ船もやられた。嵐がすべての船を打ち壊（こわ）し、舷側（げんそく）の板の継ぎ目が緩（ゆる）んで汚水（おすい）が流れ込み、至るところ割れ目ができた。(1-118-123)

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2015/9/20 オリジナル教会（初代代表）　笹倉正義
正式名称：（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会