１（４）アエオルス王

そこに荒れ果てた巨大岩窟（がんくつ）があり、アエオルス王がその中に、争（あがら）う風どもや騒々（そうぞう）しい嵐（テムペスタ）たちを、叱咤（しった）して閉じ込め、鎖と格子（こうし）で制御していた。(1-50-54) (1-55)1-56)(1-57)(1-58)(1-59)(1-60)(1-61)(1-62)(1-63) 彼らの不平で山は轟き、閂（かんぬき）は軋（きし）んだ。アエオルス王は険しい山の頂（いただ）に鎮座（ちんざ）し、王笏（おうしゃく）を手にして彼らを宥（なだ）め、彼らの怒りを鎮（しず）めていた。 こうでもせねばこの風たちは、海も陸も、高い空も掻（か）っ攫（さら）い、天涯（てんがい：オケアヌス）のかなたへ拉致（らち）し去ったであろう。しかしこれを恐れた全能のユピテルが彼らを暗い洞窟内に封入し、ひとりの王（アエオルス）を置いたのだ。この王には、彼らを抑圧（よくあつ）し、また時には手綱（たづな）をゆるめてもよい大きな権限が、確たる契約のもと、与えられていた。(1-55-63) (1-64)(1-65)(1-66)(1-67)(1-68)(1-69)(1-70) ユノは、謙遜の姿勢でこの王に声をかけた。「アエオルス、あなたには、神々と人間の王（ユピテル）が、彼を鎮めたり高めたりする力をお与えになった。今、わが憎き敵が、テュレヌムの海上（イタリア西岸沖）を航行中です。イリウム（トロヤ）からイタリアへ、彼らの敗北した家御守護神（いえごしゅごしん：ペナテス）を運んでいるところです。強い風を起して彼らの船を沈めて粉砕してくれないか。彼らを放り投げ、海中、死体だらけにしてくれないか」。(1-64-70) (1-71)(1-72)(1-73)(1-74)(1-75)(1-76)(1-77)(1-78)(1-79)(1-80) わたしには容姿のすぐれた七人の倍（ばい）（十四人）の水娘（みずむすめ：ニンフ）たちがいる。このうち一番美しいデイオペアをあなたに嫁（とつ）がせ、あなたのものと呼ぼう。このお返しに、彼女が末永（すえなが）くあなたとともに暮らし、あなたを素晴しい子供たちの親にしてくれますように」。 これに対してアエオルスは応（こた）えた。「女王よ、貴女（あなた）が何を望もうと、企てることはあなたの仕事だ。わしらはそれを実行するのみ。もともと、このわしの王位、王笏は貴女の賜物（たまもの）だ。ユピテル大王へわしをご推挙（すいきょ）くださったのは貴女なのだ。貴女のお陰でわしは神々の宴席につらなり、雲や嵐に権力を揮えるのだから」。(1-71-80) (1-81)(1-82)(1-83)(1-84)(1-85)(1-86)(1-87)(1-88)(1-89) (1-90)(1-91)(1-92)(1-94) こう言うと、アエオルス王は矛（ほこ：槍に似た武器）を逆（さか）さにして、空中の山の側面を突いた。すると裂口（われくち）から風どもが隊列を作って飛び出し、渦を巻いて大地を吹き抜けた。南東風、南風、南西風の面々は洋上に襲来、次々と嵐を起して海底から水を掻き回し、巨大な波を海岸へ向けて巻き上げた。

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2015/9/20 オリジナル教会（初代代表）　笹倉正義
正式名称：（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会