１（３）女神ユノの妨害

(1-34)(1-35)(1-36)(1-37)(1-38)(1-39)(1-40)(1-41) シクラ（シチリア）の地を離れると、一行（トロヤ人）は帆を張り、順調に沖へ出た。青銅の舳先（へさき）は飛沫（しぶき）をあげた。だがこのとき、胸に古傷の疼（うず）くユノは、呟（つぶや）いた。「おのれ、逃がしてなるものか。おめおめ引き下がるわらはではない。テウクリ（トロヤ）人の王（アエネアス）を、イタリアから離せぬとでも思うのか。 それは運命（さだめ）が許さぬ、などと言うか。だが、あのパラス（ミネルウア：アテナのこと、知恵と戦いの女神）でさえ、オイレウスの子のアヤクスの暴挙に怒り、たったひとりの悪事のために、アルギ（ギリシャ）人の艦隊を焼き払い、奴らを海に沈めたではないか。(1-34-41) （この男は、トロヤの城市イリオン滅亡の日、ミネルウア神殿でトロヤ王女カサンドラに暴行を働く：ギリシャ人にとっても神殿は聖域なのにそこで巫女を犯したとされる。カサンドラは汚され巫女でなくなった。彼女は、総大将アガメムノンの分け前となった。） (1-42)(1-43)(1-44)(1-45)(1-46)(1-47)(1-48)(1-49) あの女神は、叢雲（むらくも）からユピテル（ギリシャ神話のゼウスに相当）の火（雷）を投げ放って艦隊を翻弄し、風で海を掻き回した。それから、胸を突き刺されて炎の息を吐き出すアヤクスを、つむじ風で攫（つか）み、尖（とが）った岩に釘づけにした。 かりにも、わらわは、神々の女王じゃ。ユピテルの妹（ギリシャ神では姉とも）にして妻じゃ。それが、かくも長年、一民族に手古摺（てこず）って、ずるずる戦うはめになるとはな。これではこのユノの威光も地に落ちよう。もはや身をかがめて祭壇に生贄（いけにえ）を捧げる者もいなくなろう」。(1-42-49) (1-50)(1-51)(1-52)(1-53)(1-54) こうして、かっかと自分を焚（た）きつけながらユノは、雨雲（あまぐも）の生まれ出（いず）るところ、荒れ狂う南風（アウステル）の集（つど）うアエオリアへとやって来た。

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2015/9/20 オリジナル教会（初代代表）　笹倉正義
正式名称：（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会