１（１８）二次会ディドの油断

(1-723)(1-724)(1-725)(1-726)(1-727) さて宴（うたげ）が一段落（いちだんらく）し、食卓が片づけられた。大きな混酒器（こんしゅき：クラテルという）が運び込まれた。そしてこの器に花輪が取りつけられた。室内はどよめきで満たされる。広大な広間に人の声が膨（ふく）れ上がる。黄金（おうごん）の板張り天井（てんじょう）から下がる燭台（しょくだい）に火が点ぜられ、松明（たいまつ）の炎が赤々と輝き、夜の闇を消し去った。(1-723-727) (1-728)(1-729)(1-730)(1-731)(1-732)(1-733)(1-734)(1-735) ここで女王は、元祖ベルス（女王の父ベルスとは別人）より代々当主（とうしゅ）が使用した、宝石と金で飾られた重い盃（さかずき）を持ってくるよう命じた。その盃に生（き）の酒が注（そそ）がれ始めると、広間は静まりかえった。 「大神ユピテル（これはローマ化されたギリシャ神の呼び名でゼウスに相当する）よ、あなたは客人（きゃくじん：マロウド）の権利の守護者だと言われています。なにとぞ、テュルスの衆と、トロヤより至りし方々に佳（よ）き日を恵みたまえ。この日が子々孫々（しし・そんそん）までの語り草となりますように。 喜びの神バクスもご照覧あれ。また善良なユノの女神も力をお貸しくださいますように。テュルスの衆よ、どうかこの宴を存分に祝うように」。(1-728-735) (1-736)(1-737)(1-738)(1-739)(1-740)(1-741) こう言うとディドは、食卓の杯に奉納の酒を注ぎ終わり、まず自分の唇の先に少しつけてから、声高（こわだか）にビティアス（カルタゴの提督）を呼び、彼に杯を渡した。ビティアスは泡立つ杯を受けとると一気（いっき）に飲み干し、輝く黄金の器に満ちた酒で自分の内臓を洗った。他のカルタゴの高官たちがこれに続いた。 長髪のイオパス（吟遊詩人）が黄金の竪琴（たてごと：キタラという）をかき鳴らしはじめた。彼は天空を支える巨神（ティタンという）アトラスの教えし歌を歌った。(1-736-741) (1-742)(1-743)(1-744)(1-745)(1-746)(1-747) 月の運行、日食の周期、人間の起源、家畜の始（はじめ）。雨と火はどうしてできたか。大角星（アルクトウルス）と雨をもたらす牝牛座七星（ヒュアデス）。大車座（トリオネス）のふたつの熊座（大熊座と小熊座は二頭の牛が車を牽（ひ）く形をしている）の物語。 冬の太陽はなぜ天涯（オケアヌス）に身を没するのを急ぐのか。また冬の夜はなぜ長々と、いつまでも続くのか。かかることどもをイオパスが歌うと、テュルス人たちはやんやの喝采（かっさい）でこれを讃（たた）えた。トロヤ人たちも負けじとこれに続いた。(1-742-747) (1-748)(1-749)(1-750)(1-752) 哀れなディドは、話に夢中になり、夜の更けるのに気づかなかった。そして、話せば話すほど、湧き上がる愛の感情に溺（おぼ）れていった。彼女は、プリアモス王について質問をくりかえした。ヘクトルのこともたくさん尋（たず）ねた。また、アウロラ（曙の女神）の息子（メムノン）が携えていたのはどんな武器だったのか、ディオメデスは馬をどうしたのか（レスス王の馬）、アキレスはどんな人物だったのかなど、彼女の質問ははてしなく続いた。(1-748-752)

(1-753)(1-754)(1-755)(1-756) 「それはさておきまして」と彼女は言った、「ではお客さま、はじめから、ダナイ（ギリシャ）人たちの恐ろしいはかりごとと、トロヤの滅亡のお話を聞かせてはいただけないでしょうか。またご苦労なさったさすらいのことも。山道や波間（なみま）など、ほんとうにいろいろなところで旅をお続けになり、もう七度目の夏をお過ごしとか」。(1-753-756)

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2015/10/1 オリジナル教会（初代代表）　笹倉正義
正式名称：（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会