１（１６）ディドに拝謁するアエネアス

１−１６） (1-588)(1-589)(1-590)(1-591)(1-592)(1-593) アエネアスは光り輝いて立っていた。顔つきも肩も、神と紛（まが）うばかりだった。母神（ウェヌス：ギリシャ１２神のアプロディテ）ゆずりの美しい巻き髪。誇らしい青春の力と喜びに溢（あふ）れた目も、母からもらったものであった。それは職人の手が象牙に施す細工（さいく）のように精巧で、銀器やパロス島の大理石にかぶせられる金箔のような輝きを放っていた。(1-588-593) (1-594)(1-595)(1-596)(1-597)(1-598) (1-599)(1-600)(1-601)(1-602) 彼は並み居る人々の前で、いきなり女王に話しかけた、「お尋ねの者は、御前に立っております。わたしはトロヤのアエネアス、リュビアの荒波から逃れてきた者です。恐ろしい災難に傷んだトロヤに同情を寄せてくださるかたは、あなたおひとりです。 われらはダナイ（ギリシャ）勢の手をのがれ、陸に海に旅を重ね、辛酸（しんさん）を嘗（な）め尽くしました。もはやわれわれには何も残っておりません。あなたはこのわれわれに、町と家とを与えてくださるとおっしゃるのか。 だが、そうされてもわれわれには何もお返しする手だてがありません。ディドよ、ダルダニアの一族（トロヤ人）は広大な世界に四散（しさん）したのです。どこへ行こうが無力な者となり果てました。(1-594-602) (1-603)(1-604)(1-605)(1-606)(1-607) (1-608)(1-609)(1-610)(1-611)(1-612) ああ、もしも神を畏れる者を神々がご存じならば、そして、まだ正義というものが残り、道理を重んずる心が死に絶えていないのならば、あなたこそ神々の賞賛を受けるべきだ。あなたと巡り遇った時代は幸運な時代だったと言うべきだ。あなたを得たご両親はどんなにか幸せだったことか。 川が海に注ぎ続けるかぎり、山の斜面を（雲や山の）影が移ろうかぎり、天に星の輝くかぎり、あなたの功業（いさおし）とお名前は、たたえられ続けるでしょう。いつか、わたしがどこの大地をさすらうことになろうとも」。こう言ってアエネアスは自分の友たちと再会した。右手でイリオネウスを求め、左手でセレストウスを求め、それから皆の手を求めた。勇敢なギュアスの手を、勇敢なクロアントウスの手を。(1-603-612) (1-613)(1-614)(1-615)(1-616)(1-617)(1-618) シドンの女（ひと）ディドは、思いがけず展開する光景に圧倒された。しかし勇者の不幸に思いをはせると、こう言った、「女神の御子（みこ）よ、どんなに厳（きび）しい危険を乗り越えて、こちらに来られたことでしょう。どんな事情であの荒れ果てた岸辺に辿り着かれたことでしょう。 ではあのアエネアスとは、あなたのことですか。ダルダヌスの子孫アンキセスを父君として、やさしいウェヌスがプリュギアのシモイス川のほとりであなたをお産みになったのですね。(1-613-618) (1-619)(1-620)(1-621)(1-622)(1-623)(1-624)(1-625)(1-626) わたしはあのテウケル（プリアムス王の甥（おい）。ギリシャ側の武将としてトロヤ戦争に参加するも帰国を許されず、キュプルス島に新天地を求めた）が、国を追われてシドンへ来たことをよく覚えています。あのかたは、新しい国をつくるためえ、わたしの父ベルスの援助を求めていたのです。父は当時、豊かなキュプロス島に侵略し、勝利者として島を確保していました。 あなたのお名前もそのころ知ったのです。ペラスギ（ギリシャ）人の王たちのことも同時に知りました。この敵人（てきびと）でさえ、テウクリ（トロヤ人）に対しては賞賛を惜しみませんでしたよ。自分の古い先祖をテウクリ人だと称しておりましたもの。(1-619-626) (1-627)(1-628)(1-629)(1-630)(1-631) (1-632)(1-633)(1-634)(1-635)(1-636) ですから遠慮は、本当にご無用です。若殿様がた、どうぞわたしどもの家の中へお入りください。このわたしも、楽な人生を過してきた者ではありません。いろいろな目に遭いながら、どうにかこの地上にとどまっているだけなのです。ですが、悲惨とは何かを知っているだけに、困っている人をお助けしないわけにはいかないのです」。 ディドは、言い終えるとすぐにアエネアスを王宮に迎え入れ、また同時に、神々の諸神殿に捧げものを奉納（ほうのう）するよう命じた。また海岸（かいがん）にとどまった同志たちのとことへは、ただちに二十頭の牝牛（めうし）と、背中に逆立（さかだ）つ剛毛（ごうもう）の生（は）えた百頭の大豚、よく肥えた百頭の子羊および母羊が、その日の喜びの祝いとして贈られた。(1-627-636)

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2015/9/30 オリジナル教会（初代代表）　笹倉正義
正式名称：（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会