２８（５）アッラー代理人 ２８（５）アッラー代理人
| 28-76さて、カールーンはもとムーサーの民の一人だったが、思い上って目に余る振舞をするようになった。それと言うのも、我らが彼に授けてやった財宝があまりにも多くて、その（倉の）鍵だけも数人の屈強な男がやっと持ち上げてふらふらするほどだったからのこと。 「これ、あまり調子に乗りすぎるなよ。アッラーは調子に乗りすぎた人間が大嫌いでいらっしゃるぞ。 28-77これほどの物をアッラーに授けて戴いているのだから、これでせいぜい後生を願ったらどうだ。お前でも現世で手に入るものには限りがあるということを忘れてはいけない。アッラーにもこれほどよくして戴いたのだから、お前も大いにいいことをしなくてはならぬ。いたるところで悪いことしようなどと考えるものではない。アッラーは悪いことする人間が大嫌いでいらっしゃる」とみなに言われると、28-78彼の言うよう、「なあに、これを授かったのも、元はと言やあみなわしの生まれついての智恵のおかげだ」と。なんということだ。今までにもアッラーは、あの男よりもっと力もあり、もっと手下も多い人々すら何代も何代も滅ぼしておしまいになったことを彼は知らないのか。罪人どもの犯した罪は一々本人に訊ねることなどない。 28-79そこであの男、きらびやかに飾り立てて民家の間をねり歩く。束の間のこの世に執心の連中それを見て、「ああわしらもカールーンの授かったようなものが欲しいなあ。まったく彼は素晴しい幸福者よ」と言う。 28-80が、正しい知識を授かっている人々は、「情ないこと言うな。信仰し、善行に精出す者にとっては、アッラーの御褒美の方がどんなにいいことか。辛抱強い者だけがそれを頂戴できるのだ」と言う。28-81ついに我らが彼をその邸もろとも大地の底に陥ち込ませてやった。もうそうなってはアッラーのほかに彼を助けてくれる者とてなく、結局誰にも助けてもらえなかった。28-82そこで、昨日は彼の地位が欲しいと言っていた人々も今日はがらりうってかわって、「ああ、アッラーというお方は、御心のまま自由自在、どの僕にでも結構なものをふんだんに下さるかと思えば、引き緊めもなさる。アッラーのお情がかかったからいいようなものの、さもなくばわしらまで地の底に呑み込まれてしまうところだった。いや、まことに、信仰なき者は栄えずとはこのことだ」と言った。 28-83 28-84善行を携えてまかり出る者は、それよりもっと善いものを戴く。悪事を携えてまかり出る者は、よいか、何事によらず悪いことする者は、己の仕業通りに報いを頂戴しよう。 28-85このクルアーンを律法として汝に授け給うたお方なら、きっとまた故郷に帰らせて下さろう。「お導き通りに歩いて来た者と、誰が見ても邪道に落ちこんでいる者との（区別は）神様が一番よく御存知のはず」と（自分に）よく言い聞かせるがよい。 28-86汝にしても別にはじめから自分に啓典が戴けると思っていたわけではあるまい。みんな主のお情あればこそ。だからどのようなことがあろうと信仰なき者どもの仲間にだけはなるなよ。28-87それから、せっかくこうして汝にアッラーのお （人々を）主のみもとに呼び寄せよ。 絶対に多神教徒になってはならぬぞ。 28-88アッラーとならべて他の神を拝んではならぬ。 もともとほかに神はない。すべてのものは滅び去り、ただ（滅びぬは）その御尊顔のみ。一切の摂理はその御手にあり、お前たちもいずれはお側に連れ戻されて行く。 |
| 第２８章「物語り」（完） |
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