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| 3-44-9-1母親（ははおや＝アスンタ）は、四五里（し・ご・り：一里４Ｋｍの場合、１６Ｋｍないし２０Ｋｍ）も離れた市場（いちば）まで、初物（はつもの）の果実（かじつ）や、うまい菓子（かし）など買いにいきます。3-44-9-2ところが、子供のほうは、パルマのオレンジやゼノアの罐詰（かんづめ）などより、垣根（かきね）越（ご）しに盗（ぬす）んで来るお隣（とな）りの家の栗（くり）とか、その家の納屋（なや）に干（ほ）してある林檎（りんご）のほうがずっと好（す）きというふうでした。3-44-9-3欲（ほ）しかったら、自分ところの果樹園（かじゅえん）に、栗でも林檎でもありますのに。 3-44-9-4あの日のこと、それは、ベネデットが、五つか六つぐらいのときでございましょうか、隣りの家のワシリオが、財布（さいふ）のなかから、一ルイ（２０Ｘ１０００＝２万円の金貨に相当する）なくなったと苦情（くじょう）を申してまいりました。3-44-9-5これは、旦那（だんな）さまもよく御承知（ごしょうち）のことと存じますが、コルシカには、泥棒（どろぼう）というものがおりません。3-44-9-6そこで、ワシリオは、その財布なり、宝石（ほうせき）なりを、いつも抛（ほお）り出していたのでございました。3-44-9-7おそらく、勘定（かんじょう）ちがいをしたんだろうくらいに思っていましたところ、ワシリオのほうでは、たしかに失（な）くなったんだと言い張（は）ります。 3-44-9-8その日、ベネデットは、朝早（あさはや）くから家をあけておりました。3-44-9-9そうしたわけで、とても心配（しんぱい）しておりましたところ、夕方（ゆうがた）になって、猿（さる）を引っ張って帰ってきました。3-44-9-10そして、どこかの樹（き）の下につないであるのを見つけてきた、と申すのでした。3-44-9-11一ヶ月（いっかげつ）も前から、あの小僧（こぞう）め、なにを思ったか、猿がほしくてたまらなかったんでございました。3-44-9-12その頃（ころ）、ログリアノにきた船頭（せんどう）の一人（ひとり）が、猿を何匹（なんびき）か持っていまして、それの芸（げい）をするのをおもしろがって見ていましたが、つい『むらむら』と情（なさけ）ない気をおこしたものでございましょう。 3-44-9-13『このへんの森（もり）に、しかも鎖（くさり）でつないだ猿なんかいてたまるか、どうして猿を手に入れたか、ほんとうのことを言わないか』。 3-44-9-14ところが、やつめ、嘘（うそ）を通そうとして、つべこべ申し立てるのを聞いていますと、それがほんとかどうかということより、むしろ、その非凡（ひぼん）な想像力（そうぞうりょく）に感心（かんしん）させられてしまいました。3-44-9-15いらいらして来るわたくしに引きかえ、やつめ、笑い出したではございませんか。3-44-9-16嚇（おど）してやりますと、二足（にそく：ふたあし）ばかり飛びすさって、わたくしに向かってこう申しました。3-44-9-17『ぶてるもんかい。3-44-9-18ほんとの父（とう）ちゃんじゃないんだもの』。3-44-9-19知られないようにとあれほど気をくばってきた運命（うんめい）の秘密（ひみつ）を、誰がどうして明かしたものか、どう考えてもわかりませんでした。 |
| （聖書との対比） イエスの父親は、ヨセフであると、皆に信じられていた。イエスの本当の父親が明らかになるのは、イエスの死後であり、復活の後であり、昇天の起こった頃である。それは、ルカによるマリヤへの聞き書きの過程で明らかになるのである。しかし、マリヤは心にとめていたイエスが十二歳のときのエピソードを語ったのである。（ささくら修道会） |
| 「ルカによる福音書」どうしてお捜しに |
| 2-43ところが、祭が終わって帰るとき、少年イエスはエルサレムに居残っておられたが、両親はそれに気づかなかった。2-44そして道連れの中にいることと思いこんで、一日路を行ってしまい、それから、親族や知人の中を捜しはじめたが、2-45見つからないので、捜しまわりながらエルサレムへ引返した。 ---この時のヨセフとマリヤの驚きはどれほどであったろう。察して余りある。この時には、イエスの弟妹が何人かいたであろう。彼らを親戚に預けて、二人はおよそ１５Kmの道のりを、エルサレムから下ってくる人々とは逆の方向に引き返して行くのである。これは疲れる。 2-46そして三日の後に、イエスが宮の中で教師たちのまん中にすわって、彼らの話を聞いたり質問したりしておられるのを見つけた。 ---二人はベツレヘムの親戚の家までも捜しに行ったかもしれない。とにかく、悲惨な精神状態でイエスを捜し回った二人はついに神殿まで戻って来た。それは神に赦しを乞うためにほかならなかった。二人は宮の庭でレビ人、祭司、律法学者たちが輪を作っているのを見た。あろうことか、彼らの作る輪の中心にイエスがいたのである。その瞬間、二人は頭が真っ白になった。ヨセフはほっと胸をなでおろしたが、マリヤはそうはいかなかった。 2-47聞く人々はみな、イエスの賢さやその答えに驚嘆していた。2-48両親はこれを見て驚き、そして母が彼に言った、「どうしてこんな事をしてくれたのです。ごらんなさい、おとう様もわたしも心配して、あなたを捜していたのです」。 ---マリヤはあふれかえる感情を抑えきれず、イエスを叱った。 2-49するとイエスは言われた、「どうしてお捜しになったのですか。わたしが自分の父の家にいるはずのことを、ご存じなかったのですか」。 ---教師たちは、汗まみれ、汚れ放題で 2-50しかし、両親はその語られた言葉を悟ることができなかった。2-51それからイエスは両親と一緒にナザレに下って行き、彼らにお仕えになった。母はこれらの事をみな心に留めていた。 ---天才と呼ばれる人々はごく普通の家庭を持つことができる。人と比較したり自慢したりしないので平和である。まして神の家族には、多すぎるものは何もなく、また何一つとして欠けたものがなかったはずである。最後の一文は、この逸話をマリヤが話したことを示している。もちろん、ルカにだけにである。 2-52イエスはますます知恵が加わり、背たけも伸び、そして神と人から愛された。 ---前章の洗礼者ヨハネの生い立ちと比べると、とても明るい。 |
| 以上「ルカによる福音書」 |
| 3-44-9-20ともかく、子供の気持が『すっかり』わかったこうした返事を耳にしたのにびっくりして、せっかく振りあげた腕（うで）を、打（う）ちおろすことができずに下へおろしてしまいました。3-44-9-21つまり、子供の勝利（しょうり）というわけでした。そして、この時の勝利からというもの、子供がすっかり大胆（だいたん）になり、悪くなってゆけばゆくほど、姉の愛情（あいじょう）はふかくなり、有（あ）り金（がね）は、抑（おさ）えてやろうにも抑えられない気まぐれや、どうしてみてもやめさせられないむだづかいのため、どんどん使われてしまいました。 3-44-9-22それでも、わたくしがログリアノにいたあいだは、まだしも目に余るようなことはなかったのでございますが、さてわたくしが出かけていってしまいますと、ベネデットは、すっかり主人（しゅじん）気取（きど）りになって、何（なに）から何までがどえらいことになりました。3-44-9-23年（とし）はやっと十一（じゅういち）というのに、友だちといえば十八九（じゅうはっく）から二十（はたち）までの若者（わかもの）、バスティア、コルトきっての不良（ふりょう）どもというわけでした。3-44-9-24そして、『わるさ』というより、もっと『ふてぶてしい』ようなことまでやってのけて、警察（けいさつ）からもたびたび御注意（ごちゅうい）にあずかりました。3-44-9-25わたくしは、怖（こわ）くなってまいりました。3-44-9-26調（しら）べられでもしたら、どんな困（こま）ったことがあばき出されるかもわかりません。 3-44-9-27折（おり）からわたくしは、大仕事（おおしごと）のため、コルシカをはなれようとしておりましたので、とつおいつ考えたすえ、『ひょんな』ことが起（お）こってはいけないと思い、ベネデットをつれていく決心（けっしん）をいたしました。3-44-9-28もし、あいつの根性（こんじょう）がまったく腐（くさ）っていないのだったら、密輸入者（みつゆにゅうしゃ）たちの骨身（ほねみ）にいこたえるようなはげしい生活（せいかつ）や、船中（せんちゅう）の厳重（げんじゅう）な規律（きりつ）などをもってしたら、腐りかけた根性を一変（いっぺん）させてやれもしようと思いまして。 3-44-9-29わたくしは、ベネデットをわきへ呼んで、いっしょに来ないかとさそってみました。3-44-9-30そして、十二の子供（こども）が喜びそうな、うまい話をいろいろ聞かせてやりました。3-44-9-31あいつは、わたくしに話したいだけしゃべらせました。3-44-9-32そして、話がすむと、『からから』笑って、こう申したではございませんか。3-44-9-33『じょうだんじゃないよ、おじさん。3-44-9-34（あいつは、きげんのいいときには、いつもわたくしのことをそう呼んでおりました）。3-44-9-35僕（ぼく）の暮（く）らしと、取りかえっこするんだって！3-44-9-36こんなたのしい暮らしをやめて、おじさんのしている恐ろしい仕事をするんだって！3-44-9-37夜（よる）は寒（さむ）い思（おも）いをし、昼間（ひるま）は暑（あつ）い思いをするんだって！3-44-9-38そして、ひっきりなしに逃（に）げかくれて、顔（かお）を出すと鉄砲玉（てっぽうだま）が飛（と）んでくる、それも、ほんのわずかばかりのお金（かね）をかせぐためなんだって！ 3-44-9-39お金（かね）なんか、いくらだってもらえらあ！3-44-9-40僕がくださいって言いさえしたら、アスンタおばさんがくれるんだ。3-44-9-41おじさんのいうことを聞いたりしたら、僕（ぼく）はほんとにおめでたいや』。3-44-9-42わたくしは、この『ふてぶてしさ』を見せつけられ、こうした理屈（りくつを）を聞かされまして、まったくびっくりしてしまいました。3-44-9-43ベネデットは、そのまま友（とも）だちと遊（あそ）びにいってしまいました。3-44-9-44そして、友だちにわたくしの方（ほう）を指（ゆび）さしてみせては、わたくしをまるで馬鹿（ばか）かなんぞのように言っているのが遠（とお）くからもわかりました」。 3-44-9-45「えらい子だなあ！」と、モンテ・クリスト伯がつぶやいた。3-44-9-46「あれがわたくしの子供でございましたら、」と、ベルツッチオが言った。3-44-9-47「あれがわたくしの子供、せめて甥（おい：親族）ででもございましたら、『ちゃん』と正道（せいどう）に引き戻（もど）せもしましたろう。3-44-9-48良心（りょうしん）が、力（ちから）をかしてくれましょうし。3-44-9-49ところが、自分にその父親（ちちおや）が殺（ころ）された子供を殴（なぐ）るのだと思いますと、折檻（せっかん：辞書：きびしく戒めたり、叱ったりいすること。特に、体に痛みを与えてこらしめること）もできなくなってしまいました。 3-44-9-50わたくしは、二人が言い合いのときには、いつも不孝者（ふこうもの）の肩（かた）を持つ姉（あね）に向（む）かって、いろいろ智慧（ちえ）をかしてやりました」。3-44-9-51そして、かなりの金が、なん度（ど）となく無（な）くなったことを聞かされまして、残（のこ）り少なくなった財産（ざいさん）を、安全（あんぜん）にかくしておけるような場所（ばしょ）を教（おし）えてやりました。3-44-9-52わたくしには、ちゃんと決心（けっしん）がついておりました。3-44-9-53ベネデットは、読（よ）み書（か）きも『そろばん』も心得（こころえ）ておりました。3-44-9-54と申しますのは、ちょっと気が向いて勉強（べんきょう）しますと、人（ひと）が一週間（いっしゅうかん）かかって覚（おぼ）えることを、わずか一日（いちにち）で覚えてしまうというわけなので・・・・。 3-44-9-55わたくしは、決心したと申しあげました。3-44-9-56わたくしは、あいつを遠洋航路（えんよう・こうろ）の船の書記（しょき：事務員）に入れてやろうと思いました。3-44-9-57そして、前から何も知らせずにおいて、ふいに迎（むか）えにきてもらい、船（ふね）につれてってもらおうと考えました。3-44-9-58そのうえで、船長（せんちょう）にすっかり身の上を頼（たの）んでおいたら、それから先は、本人（ほんにん）の心掛（こころが）けしだい、と、こう腹（はら）をきめて、フランスさして出発しました。 |
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ページ制作者：（ささくら宗）聖母マリヤ福音教会
通称「オリジナル教会」 初代代表者 笹倉正義
オリジナル教会・ささくら修道会・必読書
2017/7/20