(11)ドメニコ (11)ドメニコ
| アッシジの聖者の名声と「博愛」の威力 1-3-11-1アッシジの聖者の名はイタリア中（じゅう）に知られるようになり、彼が説教に赴（おもむ）けば群衆が沿道（えんどう）に立ち並んで花を投げ、旗（はた）を振り、聖歌を歌って喜び迎えた。1-3-11-2党派争いで内戦（ないせん）を続けていたシエナの市民も、彼が来訪（らいほう）して愛と平和を訴（うった）えると殺し合いをやめた。 伝道活動は、フランス、ドイツまで 1-3-11-3フランチェスコ修道会の伝道活動の範囲は大きく広がり、イタリアだけにとどまらず、フランスやドイツにも伝道者が派遣（はけん）された。 イスラムに博愛を説こう 1-3-11-4それでもフランチェスコはまだ満足せず、みずから聖地に赴（おもむ）いてイスラム教徒を改宗（かいしゅう）させようと考えた。1-3-11-5十字軍のように武器を用いてではなく、信仰と真理の力（ちから）によって聖地を奪回（だっかい）すべきだとするのは、彼の思想の当然の帰結（きけつ）であったが、彼の乗った船は嵐に遇（あ）って目的地へ到着せず、あるいはイタリアへ運び戻され、あるいはエジプトへ漂着して、成果を挙（あ）げることができなかったようである。 1202年、ベネチヤの意向に沿った第四次十字軍は、エルサレムではなく、コンスタンティノープルを陥落させ、宝物を略奪している。 1-3-11-6そしてこの伝道旅行中に、もともとそれほど強壮（きょうそう）でない彼の肉体は何種類もの病気に蝕（むしば）まれ、何度も旅行を中断（ちゅうだん）して床（とこ）につかなければならなかった。 ラテラーノ公会議での注目度 1-3-11-7西暦1215年には、第四ラテラーノ公会議に出席するためローマへ出ている。1-3-11-8フランチェスコは聖職者の位階（いかい）としては最も低い助祭（じょさい）の資格しか持っていなかったが、今や教会にとっては司教よりも重要な存在であった。 スペインの修道士ドメニコ 1-3-11-9そしてこの会議には、彼と同じような立場のもう一人の修道士が出席していた。1-3-11-10聖徳の誉（ほま）れ高いこのスペイン人の修道士はドメニコ（ドミンゴ）といい、アルビ派（は）異端（いたん）改宗の事業で実績を挙（あ）げ、その説教の迫力（はくりょく）と清貧の生活で多くの追随者を集め、フランチェスコ会と並び称（しょう）される新修道会を指導していた。 1-3-11-11そのドメニコ会の修道士たちも放浪（ほうろう）の托鉢者（たくはつしゃ）として全欧（ぜんおう）に広がり、キリスト教徒の模範（もはん）と仰（あお）がれた。 ドメニコ会の活動を紹介 1-3-11-12彼等（かれら）の英国（えいこく）での伝道活動について、マシュー・パリスはこう証言している。1-3-11-13「・・・・食物も衣服も極端に節約し、金銭その他いっさいのものを所有せず、町へ村へと福音を説いて回る。1-3-11-14十人ばかりの集団で行動し、明日を思わず、翌朝のために糧（かて）を取っておくことをしない。1-3-11-15布施（ふせ）の残りが食卓にあれば、それを貧者に与えてしまう。1-3-11-16マットの上に着たまま眠り、枕（まくら）には石を置く」。 規約と信条に相違 1-3-11-17ドメニコ会の規約はフランチェスコ会と同じく、「完全な清貧」を基礎とするものであった。1-3-11-18ただドメニコ会はフランチェスコのように精神的・知的な豊かさをも軽蔑（けいべつ）したわけではなく、フランチェスコのように神学に無知でもなかった。 1-3-11-19彼は学問や理論の重要性を認めており、彼自身は学者ではなかったが、後（のち）にドメニコ会からトマス・アクイナス始め学識深い修道士が続出する基盤を作った。1-3-11-20だがこの時期には、フランチェスコもドメニコも同じ戦線に立っていたのである。 正統の聖者が二人、異端審問所が常設に向かう 1-3-11-21教皇イノケンティウスの期待は見事（みごと）に満たされた。1-3-11-22これら「正統の聖者」たちがいる以上、異端派は己（おのれ）の同義的優位を誇（ほこ）ることはできず、その民族的基盤はカトリック側に奪回（だっかい）された。1-3-11-23そうなれば異端者を容赦（ようしゃ）なく弾圧することができる。1-3-11-24教皇庁はすでに異端（いたん）審問所（しんもんしょ）を常設（じょうせつ）する方向に準備を進めていた。 1-3-11-25フランチェスコの教団はますます有名になり、各国各地から入会志願者がアッシジへやってきた。 世俗信徒の部会が設立 1-3-11-26その上（うえ）世俗（せぞく）の信徒からも熱望があって、世俗会員制を設（もう）けることとなり、これが第三部会となった。 組織運営の必要性 1-3-11-27こうも組織が膨張（ぼうちょう）すると、実務的な統制や管理がどうしても必要だし、役職や指揮系統も作らなければならない。 |
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| 文番号の採番方法（二分冊の文番号をユニークにする） （本１、２）−（物語番号１−１８）−（章）−文番号 |
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| ミチオ書・第一部・（文章）歴史物語・藤沢道郎 ページ製作者：ささくら修道会 笹倉正義 |
| 2014/10/27 、2017/2/15、2018/12/25、2021/3/24 （ささくら宗）聖母マリヤ福音教会：通称：「オリジナル教会」 |