(10)女子修道会設立

　(10)女子(じょし)修道会設立

自治都市の発展と大学設立
1-3-10-1世は自治（じち）都市の時代であり、フランチェスコの父ベルナルドーネのような人々が社会の主役（しゅやく）を占（し）めつつあった。1-3-10-2物資は豊富になり、聖堂は立派（りっぱ）になり、学問研究は発展し、大学が生まれ、都市は自由を謳歌（おうか）しているように見（み）えた。

利己主義の泥沼に咲く博愛の花
1-3-10-3だが、社会が豊かになればなるほど人々のいがみ合い奪い合うことが多くなり、心はぎすぎすと尖（とが）り、自分の所有（しょゆう）を守り他人の所有をかすめとることに誰もが夢中（むちゅう）になり、宗教や道徳より金銭（きんせん）や利権を価値とする風潮（ふうちょう）が強くなった。

1-3-10-4これでよいのか。1-3-10-5多くの人の心（こころ）にわだかまるこの感情に、フランチェスコの説教は素朴かつ斬新（ざんしん）な表現を与えた。

1-3-10-6人は貧しくなければならず、愛と平和以外に何物（なにもの）も必要ではない。1-3-10-7正規（せいき）の修道会と認められてからは、聖堂でも説教（せっきょう）ができるようになった。1-3-10-8フランチェスコを慕（した）って集まる信徒の数はみるみる増えて、修道会の規模（きぼ）は大きくなった。

聖人とあがめられる２９歳の修道士
1-3-10-9西暦1211年、彼はサン・ルフィーノ聖堂で四旬節（しじゅんせつ）の説教をした。1-3-10-10今や聖人と崇（あが）められるようになったこの青年修道士は、自分たちの貧しく厳（きび）しい生き方を世俗（せぞく）の聴衆に押し付けようとせず、ただ神を恐れ、神を讃（たた）え、善行（ぜんこう）に励（はげ）むようにのみ勧（すす）めた。

聴衆の中に貴族の令嬢キアラ
1-3-10-11聴衆の中に感動に身を震（ふる）わせて聞き入る一人（ひとり）の少女がいた。1-3-10-12この地方の名門（めいもん）貴族（きぞく）オフレドゥッチョ家（け）の娘で、名をキアーラ（クララ）といい、フランチェスコがアッシジの町を嘲罵（ちょうば：＝辞書：あざけりののしること）に臆（おく）せず賛美歌を歌いながら歩き、聖堂修復の喜捨（きしゃ）を集めていたのを見知（みし）っていた。

1-3-10-13そして今彼の語る一語（いちご）一語が彼女の胸に食（く）い込み、自分も彼のような清く貧（まず）しく美しい生き方がしたいという望みを、あがらいがたい力（ちから）で彼女の胸に引き起した。

1-3-10-14数日後（すうじつご）、彼女（かのじょ）は思（おも）い切（き）ってポルツィウンコラにフランチェスコを訪ね、魂（たましい）の指導を求めた。1-3-10-15聖者は彼女の動機が純粋であること、その求道心（きゅうどうしん）が本物であることをすぐに理解し、喜んで求めに応じた。

一年後、キアラの入信で実家は大騒ぎ
1-3-10-16一年後（いちねんご）、キアーラは家出（いえで）してフランチェスコのもとへ走った。1-3-10-17彼女は肩（かた）に波打（なみう）つ見事な金髪を惜（お）しげもなく切り落とし、貴族の令嬢（れいじょう）らしい華麗（かれい）な衣服（いふく）を灰色の修道服に代え、縄（なわ）を帯とした。1-3-10-18修道士たちは彼女を近くの女子修道院にかくまったが、オフレドゥッチョ家は大騒ぎになった。

1-3-10-19やがて隠（かく）れ家（が）を知って一門（いちもん）の男たちが彼女を連れ戻しに来た。1-3-10-20しかし哀訴（あいそ）も恫喝（どうかつ）も彼女を翻意（ほんい）させることができず、力（ちから）ずくで連れ出そうとしても祭壇（さいだん）にしがみついて離れなかった。

二週間後、キアラの妹アニェーゼの入信
1-3-10-21二週間後、キアーラの妹アニェーゼが姉の例にならった。1-3-10-22同じような騒ぎになったが、妹も姉と同様（どうよう）に決意が固（かた）かった。

妹ベアトリーチェと母オルトラーナが出家
1-3-10-23やがてもう一人の妹ベアトリーチェと母のオルトラーナも出家し、オフレドゥッチョ家の女たちは全員フランチェスコ会の修道女となった。
アッシジはフィレンツェの南東にある。アッシジのベアトリーチェは、ダンテのベアトリーチェよりも100年ぐらい前の女性である。

フランチェスコ修道会の女子修道会設立
1-3-10-24他（ほか）にも女性の修道志願者が跡（あと）を断たず、フランチェスコは司教に願い出てサン・ダミアーノ聖堂付属の女子修道院を設立し、これを修道会の第二部会とした。

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（本１、２）－（物語番号１－１８）－（章）－文番号

ミチオ書・第一部・（文章）歴史物語・藤沢道郎
ページ製作者：ささくら修道会　笹倉正義

2014/10/27 、2017/2/15、2018/12/25、2021/3/24
（ささくら宗）聖母マリヤ福音教会：通称：「オリジナル教会」