(14)女伯マティルデの奮闘

ノルマン軍団のシチリヤ島制圧（1060-1090）年 2017年「シチリヤ・マルタ観光旅行」(パレルモとモンレアーレ) 1-2-14-1ノルマン勢力はその間に地中海に雄飛（ゆうひ）し、シチリア島をほぼイスラム勢力の支配から開放し、キリスト教圏に取り戻していた。 1-2-14-2ロベルト・グイスカルドは遠征から戻ると、1085年、サラセン傭兵（ようへい：＝金で雇ったイスラム軍）を中核とする三万五千の大軍を率（ひき）いて北上、ローマに向う。1-2-14-3皇帝軍は恐（れて撤退（てったい）し、ロベルトは難（なん）なく教皇グレゴリウス七世を聖天使城から救出したが、ローマ市民はさんざんの目に遇（あ）った。 1-2-14-4ノルマン軍団、中でもサラセン傭兵は、略奪暴行放火の限りを尽（つく）し、無抵抗の市民数千が殺され、女は犯（おか）され、男は連行（れんこう）されて奴隷に売られた。 1-2-14-5こんな無茶苦茶（むちゃ）（くちゃ）な軍隊を呼び寄せたのは誰なのだ。 1-2-14-6市民の激昂（げっこう）は教皇グレゴリウス七世に向けられ、教皇はノルマン軍団とともに町から逃げ出さなければならなくなった。 グレゴリウス七世再度皇帝を破門 1-2-14-7この悲惨な状況の中でもなお敗北を認めず、サレルノに踏みとどまって形ばかりの司教会議を開き、皇帝を再び破門したが、もはや力（ちから）は尽（つ）き果てていた。 1085年グレゴリウス七世崩御 1-2-14-8五月二十五日教皇グレゴリウス七世サレルノに憤死（ふんし）、享年（きょうねん）六十二歳。1-2-14-9最後の言葉、「私がこうして流浪（るろう）の身で死ぬのは、正義を愛し、不正を憎んだからである」。 女伯マティルデ奮戦、自分の領土を死守 1-2-14-10マティルデはゆっくり教皇の死を嘆（なげ）いている余裕がなかった。1-2-14-11領内の都市ルッカが公然と皇帝に味方し、一方カノッサの女伯を憎んでやまない皇帝ハインリヒ四世の意を体（てい）してロンバルディアの皇帝軍が攻（せ）め寄せてきた。 1-2-14-12マティルデは籠城（ろうじょう）を潔（いさぎよ）しとせず、モデナ方面に打って出て戦闘を挑（いど）み、みずから陣頭指揮、ソルバイアの戦いで敵を打ちのめし、退却させたが、意気揚々と城に引き揚げた彼女は、悲嘆（ひたん）のどん底に突き落とされた。 アンセルモ司教の死 1-2-14-13師とも親とも仰（あお）ぐアンセルモが危篤（きとく）の床（とこ）にあり、まもなく世を去ったのだ。1-2-14-14女伯の彼に対する崇敬はほとんど神秘的で、病気になって熱が出ても、アンセルモが額（ひたい）に手を触れてくれればたちまち快癒するほどだった。 1-2-14-15死後も彼の霊能は有効であるらしく、持病）の湿疹（しっしん）に悩んだ時はいつでも、死んだ日に彼の遺体を載せた台の上に、すっかり衣服を脱（ぬ）いで横たわることによって癒（いや）していたし、もう一（ひと）つの持病である鬱病（うつびょう）の発作（ほっさ）に襲われた時も、故人の遺品の司教指輪に触れるとたちまち元気が出るのであった。 マティルデの信仰の高揚 1-2-14-16ともかくも、教皇グレゴリウス七世とアンセルモの相次（あいつ）ぐ死で、マティルデは完全に孤独になった。1-2-14-17信仰はますます熱狂の度を増し、その一方（いっぽう）で皇帝ハインリヒ四世に対する憎しみの炎は再び熱く燃え上がった。 マティルデの反撃 1-2-14-18トスカーナ女伯は執念（しゅうねん）深く反皇帝の策動を繰（く）り広げ、各地で反乱を使嗾（しそう：＝人に指図して、悪事などを行うように仕向けること）したから、皇帝ハインリヒ四世は枕を高くして眠ることができなかった。 1086年ビクトル三世就位 1-2-14-19ローマ市民が皇帝の擁立（ようりつ）した教皇クレメンスを認めず、モンテカッシーノ修道院長を押し立ててビクトル三世とすると、マティルデは兵を率（ひき）いてローマへ乗り込み、新教皇を応援した。 1088年ウルバヌス二世 1-2-14-20永遠の都（みやこ）は内戦状態となり、サン・ピエトロ大聖堂も修羅場と化した。1-2-14-21ビクトルが疲れ果てて死ぬと、トスカーナ女伯の軍勢に守られた司教会議は、クリュニー修道院出身のオスティア司教を教皇に選出した。1-2-14-22このフランス人の教皇がウルバヌス二世である。1-2-14-23クレメンスはなおも抵抗したが、人心はしだいにこの質実で情熱的な教皇に集まった。

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ミチオ書・第一部・（文章）歴史物語・藤沢道郎 ページ製作者：ささくら修道会　笹倉正義

2014/9/15、2017/2/14、2018/12/20、2021/2/26、27、3/1 （ささくら宗）聖母マリヤ福音教会：通称：「オリジナル教会」