「聞き書き」に聖母とルカを思う

有村道代氏による聞き書き

聞き書きはヒアリングとはすこし違う印象を受ける。
１．聞き手は権威ある者の指示があっての活動であること。
２．聞き手と話し手の間に、権威の下に共有できるものがあり、信頼関係があること。
少なくともこの二つがなければ、命のある聞き取りはできない。


ルカによる福音書には、イエス誕生の秘密が書いてある。ルカという人物が、イエスと何の関係もないのにそれを書いたのであれば、空想物語である。しかし、ルカが奴隷であって、
１．イエスの権威を信じた主人の命によって聞き書きの活動をしたこと。
２．聖母マリヤとルカの間には、父なる神の権威、イエスという共有できるものがあった。

のであれば、この聞き書きに基ずく福音書には信頼する値打ちがある。知的労働者のルカが、田舎なまりのアラム語で話すマリヤを見て、どうして、神とかかわる壮絶な情景を、あのようにやさしく美しく書けるものだろうか。「死なせたくないのです」とイエスに懇願したほどに値打ちのあった主人テオピロの奴隷、ルカの卓越した才能がそれを可能にしたのである。テオピロとルカの間にもまた、主従の枠を超えた信仰の信頼関係があったのである。
 
2011/1/7 笹倉正義
 
 
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