（巻八）カタコンベ

省略本の場合（朱色）

巻八　九　十字架（そして莫大な資産の使い道） ・・・・ 月日はめぐって・・・・ キリストが十字架で処刑されてから、早くも五年たった。エステルは今、ベン・ハーの妻として、南イタリアの、ナポリ湾を見おろすミセヌムの美しい別荘の女あるじであった。太陽は暖かく、庭のバラをつつんでいた。 ・・・・ シモニデスは長寿を保った。ネロ皇帝の十年に、かれは、アンテオケを中心に長い間手がけていた商売をやめたが、最後まで明晰な頭と善意を失わなかった。 ・・・・ 昨日はいってきた、その船の知らせによると皇帝ネロがローマのキリスト教徒を迫害し始めた、ということであった。 ・・・・ 「ここアンテオケの教会に、あなたが莫大な献金をされたことは、わたしも知っているのですから、一つどうでしょう。つい今しがたわたしどもは、イルデリム族長の遺言状と、ローマのきょうだいたちが迫害されているという知らせを同時に受けたのですから、これは何か、新しい分野を示すものではありますまいか？ローマのキリスト教の光を消させてはなりませんからな」。「その光を消さないようにするためには、どうしたらよろしいのでしょう？」。「いいですか、ローマ人は、たとえ皇帝ネロといえども、二つのものを神聖視しています−−−−それは死者の灰と墓地です。ですから、地上に教会を建てることができないのなら、地下に造られたら、どんなものでございましょう？そうすれば、神聖をけがされるうれいもありませんし、信仰に死んだ殉教者たちを引きとることもできますでしょう」。ベン・ハーはマルクのほうを向いて、出帆の用意を命じてから、「君も一緒に行ってくれたまえ」と言った。「それがよろしいです」と、シモニデスは言った。「エステル、おまえの考えは？」かの女は夫のそばに歩み寄って、その腕に手をかけて、「わたしもお手伝いに、ローマへつれていっていただきますわ、あなた」。 今日、サン・セバスチアノのカタコンペ（地下墓地）より古いと言われているサン・カリクストのカタコンペを訪ねると、ベン・ハーの財産がどう使われたかがわかる。この広大な地下墓地から、キリスト教は世界に光を放ち、ローマ皇帝の地上の権力に取ってかわったのである。

省略本ではない本の場合

「ベン・ハー　キリストの物語」 ２００３年１月３０日　初版 ルー・ウォレス 辻本庸子／武田貴子訳 亀井俊介解説 松柏社

第八話　第十一章 地下教会（カタコンペ） 「あなたがすでにアンティオケの教会に多額の寄付をされたことは承知しています。今日このイルデリム族長からの相続の手紙と一緒に、ローマの同胞が迫害されているという知らせが入ってきましたね。新しいことを始めましょう。ローマのキリスト教の火を消してはなりません」シモニデスは答えた。「どうしたらそれができるでしょう」。「お教えしましょう。すべてのローマ人には、たとえネロであろうと決して手を触れない神聖なものが二つあります。それは死人の灰と埋葬所です。地上に教会を建てることが許されないのなら、地下にお建てなさい。そこが冒涜されないように、そして信仰のうちに死んだ人の遺体をすべてそこに納めるのです」。「それはいい考えだ。すぐ始めます。少しでも早いほうがいい。あのローマの迫害の知らせを運んできた船ですぐローマに引き返します。明日出発することにしましょう」。ベン・ハーは意気揚々と立ち上がった。マルックに向って言った。「マルック、船の準備を整えてくれ。そしておまえも私と一緒に来てくれ」。「かしこまりました」。「エステル、おまえはどうだ」ベン・ハーは尋ねる。エステルは彼のそばにやってきてその腕を取り答えた。「キリストにお仕えになるのですね。もしお邪魔でなければ、もちろん私もお伴します」。 ＊ もし読者の皆さんがローマに行かれ、サン・セバスティアノの地下教会よりもさらに古い、サン・カリストの地下教会を訪ねる機会があったなら、ベン・ハーの財産がどのように使われたかを目にされるだろう。そして彼の功績をたたえることだろう。その広い地下教会から、キリスト教はローマ皇帝の地上の権力をしのぐ永遠の力を生み出したのである。

五、八巻（ベンハーの財宝） ベン・ハーの巨万の富、六百七十三タレントの使途が明らかになる。その金額は、およそ200億円（西暦2010年日本円にして、673タレントＸ3000万円）

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2015/8/30 オリジナル教会（初代代表）　笹倉正義
正式名称：（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会
2019/11/16(ロゴ変更）