９（５）トロイ側の事情

○（９−５）トロイ側兵営の防備の様子 (9-159)(9-160)(9-161)(9-162)(9-163)(9-164)(9-165) (9-166)(9-167) この間、城門の周りに見張りの兵を置き、壁をめぐってかがり火を焚（た）く仕事は、メッサプスに一任（いちにん）された。十四人のルトウリ人が選ばれて、壁に兵をつけて見張ることになった。これらの将（しょう）の下にはそれぞれ百人の兵卒がついた。皆、紫の冠毛（かんもう：クリスタ）打った兜（かぶと）をかぶり、黄金縅（くがね・おどし）の鎧（よろい）をきらめかせる若武者たちであった。 彼らは駆け足で部署につき、交代（こうたい）で任（にん）にあたった。そして任を離れると、草の上に散らばり、心（こころ）ゆくまでワインに浸（ひた）り、青銅の混酒器（クラテル）を傾けた。かがり火はめらめらと光を放（はな）ち、見張り番たちは夜通し起きていて、ゲームに興（きょう）じたりした。(9-159-167) (9-168)(9-169)(9-170)(9-171)(9-172)(9-173)(9-174)(9-175) トロヤ人たちはこの一部始終（いちぶしじゅう）を防護（ぼうご）壁（へき）の上から眺めていた。彼らは戦闘に備え、櫓（やぐら：本は塔だが）をしっかり固めていた。不測（ふそく）の事態を恐れて、入口の防御はとくに入念に行われた。各（かく）櫓（やぐら）の間には連絡橋（れんらく・きょう）が付けられた。また投げ槍がたくさん用意された。 これらの総指揮にはムネステウス(5-123)と剛勇（ごうゆう）のセレストウス(4-295)があたった。父なるアエネアスが火急（かきゅう）の事態に備え、このふたりに、若者たちを指揮して事態に対処するよう、指示しておいたのだった。全軍は危機に向かって城中隈（くま）なく部署の配置を完了し、各自（かくじ）持ち場についていた。(9-168-175) (9-176)(9-177)(9-178)(9-179)(9-180)(9-181)(9-182)(9-183) 門の歩哨（ほしょう）につくニスス(5-303)は、剛勇（ごうゆう）無双（むそう）の弓取りだった。ヒュルタクスの子で、狩で鳴らした母イダが彼を、アエネアスの供にと送り出した。槍投げの早業（はやわざ）と弓の連射（れんしゃ）は、彼の特技と言ってよかった。 彼の傍（かたわ）らには、つねに友なるエウリュアルス(5-303)がいた。彼はアエネアスの一党中（いっとう・ちゅう）もっとも容姿（ようし）端麗（たんれい）な若者で、およそトロヤの武具（ぶぐ）に身をかためる者のうちに、彼より美しい人物は見当らなかった。まだ剃刀（かみそり）を知らないその顔には、そろそろ青春の髭（ひげ）が生え始めていた。 ふたりは愛で心を結び合い、ともに戦（いくさ）に立ち向かっていった。そしてこの時も、同じ部署について門を守っていた。(9-176-183)

次へ

2015/11/29 オリジナル教会（初代代表）　笹倉正義
正式名称：（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会