８（３）エウアンドルス王に

　８（３）エウアンドルス王に

○（８－３）アエネアスよエウアンドルス王に会え
ここの岸辺（イタリア）にはアルカディア（ギリシャの一地方）から来た人々が土地を選定し、丘の上に都を建てています。その先祖を尋ぬれば、パラスに至る一族で、今はエウアンドルス王のもと、その旗印に従っています。

この都の名は、先祖のパラスの名に因（ちな）み、パランテウムと申します（ローマ七丘のひとつ、パラティウムの起源）。この人々はラティウムの一族とは不断の戦争状態にあります。(8-47-56)

(8-57)(8-58)(8-59)(8-60)(8-61)(8-62)(8-63)(8-64)(8-65)
この人々をお味方（みかた）に加えなさい。彼らと同盟を結びなさい。かく言うわたしがあなたを岸沿（きしぞ）いに、川筋をまっすぐにご案内もうしましょう。あなたは、流れを、櫂（かい）を使って遡（さかのぼ）ってお行きなさい。

いざ、お立ちなされ、女神の御子（アエネアス）よ。まずは星々が沈む頃（夜明け）、ユノ女神に、古式（こしき）に則（のっと）り誓願を捧（ささ）げられよ。心を込めたご供養（くよう）により女神の怒りと脅（おど）しとを和（やわ）らげたてまつれ。また勝利のあかつきには、このわたしにも誉（ほま）れの供物（くもつ）をよこしてくだされ。このわたしこそ誰ぞ。満々と水を湛（たた）えて流れ、岸をかすめ豊かな畑を分けてゆく、水碧（みずあお）きテュブリスとはわたしのこと。天（オリュムプス）にとっては最愛の川でござる。ここはわたしの大いなる住居、わたしは険（けわ）しき山の町々の間に、その源を発するものでござる」。(8-57-65)

(8-66)(8-67)(8-68)(8-69)(8-70)
こう言い終わると、神は川の淵（ふち）に沈んで姿を隠（かく）した。夜と眠りがアエネアスから去った。彼は身を起こし、天空に立ち昇る太陽の光を目にし、古式に則り、碗（わん）なす手のひらで川から水を掬（すく）い、天に向かってかく話しかけた。(8-66-70)

(8-71)(8-72)(8-73)(8-74)(8-75)(8-76)(8-77)(8-78)(8-79)(8-80)
「水娘（ニンフ）たち、ラウレンテスのニンフたち、諸々（もろもろ）の川の源たるニンフたちよ。また、おお、父なるテュブリスの神よ、またあなたの聖なる流れよ。なにとぞこのアエネアスをば、お守りくだされい。われらをば、危険から遠ざけてくだされい。

神よ、あなたがいかなる水辺（みずべ）にましましょうとも、いかなる土地にその気高（けだか）きお姿を現しましょうとも、われらの苦難を憐れみたまうあなたを、われらはつねに敬い、角（つの）を持つ（川の神の形容）流れの神、西涯（せいがい：ヘスペリウム）の諸々の水所（みずどころ）の支配者たるあなたに、つねに供物もて、われらが崇敬（すうけい）の念をあらわし奉（たてまつ）る所存（しょぞん）でございます。

なにとぞわれらにお力添（ちからぞ）えをお示し下されたし。どうか間近（まじか）にご神意（しんい）の程を顕（あら）わしたまえ」。彼はこう言って艦隊の二隻の二段櫂（かい）船に漕（こ）ぎ手を手配し、同時に兵を配置につかせた。(8-71-80)

(8-81)(8-82)(8-83)(8-84)(8-85)(8-86)(8-87)(8-88)(8-89)
すると突然、目の前に不思議な光景（こうけい）が現れた。森の中に子豚たちとともに、同じ白色（はくしょく）にかがやく一頭（いっとう）の雌豚が横たわり、緑なす岸辺（きしべ）に寝そべっていた。偉大なるユノ女神よ、これを敬虔なアエネアスは、あなたに捧げるべく屠（ほふ）りました。親豚に子豚を添えて、あなたの祭壇の前に奉納の儀を執（と）り行いました。その夜ずっと、テュブリスの神は川の流れを和らげていた。波は穏やかに静まり、瀞（とろ）か沼のように水面は凪いでいた。そして櫂はひとりでに動いていった。(8-81-89)

(8-90)(8-91)(8-92)(8-93)(8-94)(8-95)(8-96)(8-97)(8-98)
(8-99)(8-100)(8-101)
二隻の船は速度を上げた。皆よろこびの歓声をあげた。瀝青（れきせい）を塗った船体が、水面を飛ぶように滑っていった。すると波も驚きの声をあげ、森も驚嘆の目をむけた。船腹（せんぷく）には兵（つわもの）どもの盾が並んで遠くへ光を放ち、彩色（さいしょく）をほどこした軍船が水上をまっしぐらに進んだ。こうして彼らは櫂をこぎつつ夜を越し、昼を過ごした。

川のうねりに従い、さまざまな木々の間をくぐり抜け、緑の森をわけて穏やかな川面（かわも）を切っていった。やがて燃える太陽が中天（ちゅうてん）に登りつめる頃、遠くに城壁と砦が見えた。また所々（ところどころ）、家々の屋根（やね）が現れてきた。そこは今でこそ強盛なローマが、天とその高さを競い合っている場所である。しかし当時は、エウアンドルスの小さな集落があるばかりだった。二隻の船は舳先（へさき）を回して、都へ接近した。(8-90-101)

2015/11/22 オリジナル教会（初代代表）　笹倉正義
正式名称：（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会