８（１４）父王の葛藤

○（８−１４）エウアンドルス王パラス王子を抱擁し神に祈る (8-554)(8-555)(8-556)(8-557)(8-558)(8-559) 小さな町を突然、噂（ファマ）が駆け抜けて、テュレヌス（エトルリア）の王のもとに続々と騎馬武者が詰めかけていることを、知らせて回った。母たちは心配のあまり、ますます熱心に祈りを捧げた。だが恐怖は次第に膨らんでいき、もはや耐えがたい程になり、マルス神の巨大な姿（戦争）が誰の目にも明らかになった。エウアンドルス王は息子の右手をしっかりと握って離そうとしなかった。彼の目からは止めどなく涙があふれた。王は言った、(8-554-559) (8-560)(8-561)(8-562)(8-563)(8-564)(8-565)(8-566) (8-567)(8-568)(8-569)(8-570)(8-571) 「ユピテル大神がわしに過ぎし歳月を返してくれたらと思うぞ。わしも昔は働いたものじゃ。プラエネステ(7-690)の城下へ躍（おど）りこんで、たちまちその第一線を突破した。そして勝ち戦（いくさ）の後には奪いし盾を積み上げて焼いた。エルルス王はわが右手で地獄（じごく：タルタラ）へ送ってやったのじゃ。 フェロニア女神（7-802）は、恐ろしや、この王を産みたもうた時、彼に三つの魂（たましい）を与え、三組の武具を揃えたもうた。それで王を殺す時も三倍もの手間がかかった。わしはこの手で三人分を片づけてその武器をすべて奪いとったのじゃ。 わしが達者（たっしゃ：元気）なら、息子よ、おまえをこの甘美（かんび）な抱擁（ほうよう）から離したりはせん。メッゼンティウスめにも、隣人のこのわしを愚弄（ぐろう）して、残酷な殺人の刃をふるわせたりなどさせん。こんなに大勢の無辜（むこ：罪のない）の市民を町から奪うような真似（まね）はさせん。(8-560-571) (8-572)(8-573)(8-574)(8-575)(8-576)(8-577)(8-578) (8-579)(8-580)(8-581)(8-582)(8-583)(8-584) だが、おお天上（てんじょう）の神々、また神々を統（す）べたまうユピテル大御神（おおみかみ）よ、どうぞこのアルカディアの王を憐れみたまえ。なにとぞこの父の願いを聞き届けたまえ。もしも神々の大御心（おおみこころ）がパラスを無事に返したまうにあり、運命（さだめ）もまたかく定まっており、かくしてわしが生きて息子を見、息子とともにあることが叶うのなら、わしを生かしておいてくだされ。 わしはどんな厳しい試練にも耐えましょう。しかしもし、幸運の女神（フォルトウナ）よ、あなたが御顔（みかお）をそむけたまい、何か、えも言われぬ恐ろしい災いが襲うのならば、どうか今のうちにこの残酷な人生を断ち切ってくだされ。今、まだこの先のわからぬ不安のうちに、まだ僅（わず）かながら将来の希望が残されているうちに。 今ならば、息子よ、まだこうしておまえを抱いていられるのじゃ。おまえはな、一人っ子でもあるし、遅くできた子なのでな、可愛くてならなかったのじゃ。恐ろしい報（しら）せが生きて耳に届く事なきよう、わしはこのことを願うのじゃ」。父は最期（さいご）の別れに臨み、この言葉を述べ終えて卒倒した。奴隷たちが彼を邸内に運んでいった。(8-572-584)

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2015/11/24 オリジナル教会（初代代表）　笹倉正義
正式名称：（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会