５（７）少年騎馬隊

 
○（５−７）奉納行事（少年騎馬隊の隊伍）
(5-545)(5-546)(5-547)(5-548)(5-549)(5-550)(5-551)(5-552)
父なるアエネアスはまだ競技を終らせなかった。彼は少年イウルス（アスカニウス）付きの従者、エピュトウスの子を呼び寄せると、その信頼に足る耳元にささやいた、「急ぎアスカニウスのもとへ走れ。少年隊の準備がととのい、騎馬隊が組みあがり次第（しだい）、隊列を率いて祖父の御魂（みたま）を慰（なぐさ）み奉（たてまつ）るべし。今この武者（むしゃ）行列（ぎょうれつ）を挙行（きょこう）すべし、と伝えい」。

アエネアスはこう言い終えると、長大（ちょうだい）な競技場に溢（あふ）れた見物人たちに、広く道を開けて通路を作るよう命じた。
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(5-553)(5-554)(5-555)(5-556)(5-557)(5-558)(5-559)
少年たちの入場行進が始まった。居並ぶ親たちの目の前で見事に手綱（たづな）をさばきながら、皆、威風（いふう）堂々と進んできた。これを見たトリナクリア（シチリア）とトロヤの若者たちからは、大きな歓声があがった。

少年隊は全員、慣習に従って葉を切り落とした枝で作った鉢巻を髪につけていた。手には鉄の切っ先（きっさき）をつけた一双（いっそう）の水木（コルヌス）の投槍を持ち、一部の者は肩に光る箙（えびら：矢を入れて背に負う武具）をつけていた。胸まわりには、金糸（きんし）をよじった柔らかな首輪を巻いていた。(5-553-559)

(5-560)(5-561)(5-562)(5-563)(5-564)(5-565)(5-566)(5-567)
(5-568)(5-569)(5-570)(5-571)(5-572)(5-573)(5-574)
三人の隊長がそれぞれ一個分隊を率い、つごう三個の騎馬隊が波状（はじょう）行進を見せた。隊長（ドクトウル）のうしろに一列六騎の二列縦隊（じゅうたい）が続く（一個分隊は隊長を含め十三騎。三個分隊で計三十九騎）。皆、師範（しはん：マギステル：隊長とは別）にぴたりと歩調を合わせ、華麗に前進した。

勇壮な第一分隊を預る少年は、ポリテス（プリアムスの王子(2-532)よ、あなたの御子（みこ）であり、この子からは大勢のイタリー人が生まれ出る。彼こそは、祖父の名を持つ音に聞こえた小プリアムス、またがる白葦毛（あしげ）のトラキア馬は、前足の白い蹄（ひづめ）と白額（しろびたい）とを輝かせ、厳（いかめ）しい勇姿（ゆうし）を見せていた。

これに続く隊の隊長アテュスは、ラティニ人のアティイ家の祖、そしてこの少年アテュスは、少年イウルスの仲の良い友達だった。後駆（しんがり）を務める隊長はひときわ容顔（ミメ）良きイウルス、またがるシドニウス馬は、かの麗しきディドが、自分の記念にと、また友情のしるしにと、彼に与えたものだった。他の若武者たちは老アケステス王のトリナクリ馬を御していた。(5-560-574)

(5-575)(5-576)(5-577)(5-578)(5-579)(5-580)(5-581)
(5-582)(5-583)(5-584)(5-585)(5-586)(5-587)
緊張しきった少年隊が入場すると、ダルダヌスの強兵（つわもの）たちは拍手でこれを迎えた。彼らはその凛々（りり）しい姿に感動していた。少年たちの顔には先祖の面影が宿っていた。騎馬兵たちも感激し、見つめる会衆の前を一巡して、合図を待った。すると、エピュトウスの子が、遠くまで響く掛け声とともに鞭（むち）を鳴らした。

ふたつの隊列が左右に離れた。それぞれ三個の班が、分隊（二列縦隊）を解散して左右に展開した。そして、合図とともに向きを変え、もとの位置へ駆けもどり、槍をかまえた。左右両班それぞれ相手の陣がまえに接近、間合いを取ってにらみ合い、輪形（りんけい）となって交錯（こうさく）、敵陣を崩しながら模擬戦を展開した。背を見せて逃げ、槍を回して打ち合わし、次に戦闘休止に入り、隊列を整えて進む。(5-575-587)

(5-588)(5-589)(5-590)(5-591)(5-592)(5-593)(5-594)(5-595)
その陣形の崩れる時、それはさながら険（けわ）しいクレタ島の迷宮（ラビリュントウス）のよう。謎の壁が千の通路を取り囲み、途中にはどんな邪悪な仕掛けが隠れているかわからぬ。それはどんな印（しるし）をつけても帰路（きろ）のわからない、脱出不能な迷路だという。

テウクリ人の子供たちの足跡も、そんな乱れ方をした。逃げたり組んだりの乱舞が展開した。その様子はまた、波高きカルパティウム海やリビュアの沖を突っ切る海豚（いるか）の群れに譬（たと）えることもできよう。(5-588-595)
 
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2015/11/11 オリジナル教会（初代代表）　笹倉正義
正式名称：（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会