２（１）姿を消したギリシャ軍

ディドの客人となったアエネアスの回想談 (2-1)(2-2)(2-3)(2-4)(2-5)(2-6)(2-7)(2-8)(2-9) 広間は静まり、皆黙ってアエネアスの顔を見つめた。父なるアエネアスは、高い席に身を横たえて語った。「われわれの受けた苦痛は口で言えるものではありません。だがそれを語れと、女王はおっしゃる。トロヤの富と哀れな王国は、ダナイ（ギリシャ）勢によって破壊されました。わたしはそれをこの目で見、その出来事に大きくかかわったのです。 ミュルミドネス勢（アキレスの率いた兵たち）であれ、ドロペス勢（テッサリアの軍勢）であれ、卑劣なウリクセス（ギリシャ側の知将オデュッセウス）の兵士たちであれ、これを聞いて涙を流さぬ者はいますまい。今、すでに湿った夜が天から滑り落ち、沈む星々が眠りを誘っています。(2-1-9) (2-10)(2-11)(2-12)(2-13)(2-14)(2-15)(2-16)(2-17) (2-18)(2-19)(2-20) されど、貴女（あなた）はぜひわれらに敗戦の話をせよとおっしゃる。われらのトロヤの最後の戦いの話を聞きたいとおっしゃる。それを思い出すのは苦痛でしかなく、悲しみを新たにするのはとてもつらいことです。どうぞそれを承知でお聞き願いたい。 ダナイ勢の大将たちは、長年にわたる終りの見えぬ戦（いくさ）で、心身ともに疲れはてておりました。運命に引きずり回されていたのです。それで彼らは、パラス（ミネルワ）の技に従い、切り出した樅（もみ）の木板を組み上げて、山のように巨大な木馬を建造しました。そしてこれを帰国祈願の奉納品に使うのだと称したのです。(2-10-20) ---トロイ戦争は、実際には１０年かかったといわれる。トロイの首都イリオン城市の攻防はその最終段階であったが、これが１０年かかったというわけではない。城壁を攻めるにあたって、ギリシャ軍は短期決戦をしないと、兵糧が尽き、自滅しなければならない。背後は海であり、兵糧の供給はままならない。 (2-21)(2-22)(2-23)(2-24)(2-25) トロヤの岸に立てばテネドス島が見えます。それは、かつては世界中に名を轟かせた島でした。プリアムスの王国が存立していた間、そこは殷賑（いんしん：非常ににぎやかで、活気にあふれて盛んなこと）を極めていたのですが、今ではたったひとつの入り江があるだけで、船を寄せるにしても、なんとも心もとない場所であるにすぎません。 だが、ここに人気（ひとけ）がないことを見越したかれらは、この島に身を隠したのです。そしてわれわれは、とうに彼らは出発し、風に乗ってミュケナエへ帰ったと思い込んでいたのです。(2-21-25)

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2015/10/3 オリジナル教会（初代代表）　笹倉正義
正式名称：（笹倉宗）聖母マリヤ福音教会