４４（７） ４４（７）
| 3-44-7-1そして、アスンタに向かってこう申しました。3-44-7-2『姉（ねえ）さん、喜んでくださいよ。3-44-7-3兄（にい）さんは死にましたが、わたしが仇討（あだう）ちをしてきましたからね』。3-44-7-4姉（あね）は言葉の意味（いみ）をたずねました。3-44-7-5そして、わたくしは、一部始終（いちぶ・しじゅう）の話（はなし）を聞かせてやりました。3-44-7-6『ジョバンニ、』と、姉はわたくしに申しました。3-44-7-7『あなた、その子供（こども）を連（つ）れて来ればよかったじゃないの。3-44-7-8その親（おや）なしっ子の親代（おやが）わりになってやろうじゃないの、ベネデットという名でもつけて。3-44-7-9そうした善いことでもしておいたら、せめて神さまが、本当（ほんとう）の幸福（こうふく）を授（さず）けてくださるかもしれないし』。 3-44-7-10わたくしは、それに答えるかわりに、金（かね）でもできたあかつき、その子を受けとりにいくときのためにと取って置きました産衣（うぶぎ）の片割（かたわ）れを出して見せました。3-44-7-11「で、その産衣にはなんという字が附いていたね？」と、モンテ・クリスト伯がたずねた。3-44-7-12「ＨとＮの二字（に・じ）でした。3-44-7-13そして、その上には男爵のしるしの冠（かんむり）がついておりました」。3-44-7-14「ほほう、大したものだぞ。3-44-7-15ベルツッチオ。3-44-7-16紋章（もんしょう）の専門語（せんもん・ご）を知ってるな？3-44-7-17どこで紋章学の研究をやったんだ？」。3-44-7-18「旦那（だんな）さま、何から何までお邸（やしき）で覚（おぼ）えさせていただきました」。 3-44-7-19「つづきを聞かせてもらおう。3-44-7-20知りたいことが二つあるんだ」。3-44-7-21「どんなことでございましょう」。3-44-7-22「その男の子がそれから、どうなったかということ。3-44-7-23ベルツッチオ、男の子だとは言わなかったか？」。3-44-7-24「いいえ、申しあげませんでした」。3-44-7-25「そうか！では、そう聞こえたというわけだろう。3-44-7-26思いちがいをしたのだろう」。3-44-7-27「いいえ、お思いちがいではございません。3-44-7-28まさに男の子でございました。3-44-7-29ところで、二つお聞きになりたいということでしたが。3-44-7-30ほかの一つとおっしゃいますのは？」。 3-44-7-31「それは、訴（うった）えられたお前が、懺悔僧（ざんげそう）に会いたいと言い、それに応（おう）じてブゾーニ司祭がお前をニームの刑務所（けいむしょ）に訪（たず）ねたとき、お前はどんな罪（つみ）を犯（おか）していたのだね？」。3-44-7-32「その話はずいぶん長くなるかもしれません」。3-44-7-33「かまうものかね。3-44-7-34やっと十時（じゅうじ：２２時）になったばかりだ。3-44-7-35知っているとおり、わたしはまだ起きている。3-44-7-36お前にしたって、大（たい）して眠（ねむ）くはないだろう」。3-44-7-37ベルツッチオは、ちょっと頭をさげてから話をつづけた。 |
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ページ制作者：（ささくら宗）聖母マリヤ福音教会
通称「オリジナル教会」 初代代表者 笹倉正義
オリジナル教会・ささくら修道会・必読書
2017/7/19