３９（７）ルノー ３９（７）ルノー
| （３）シャトー・ルノー （４）軍人：マクシミリヤン・モレル 3-39-7-1「これで揃（そろ）ったというわけだな！」と、ボーシャンが言った。3-39-7-2「さあ、食事（しょくじ）だ。3-39-7-3僕の聞き違いでなかったら、二人だけ待ってるっていうことだった。3-39-7-4なあ、アルベール？」。3-39-7-5「モレル！」と、アルベールはおどろいたようにつぶやいた。3-39-7-6「モレルって、いったい誰だ？」。3-39-7-7そういう言葉が終るか終らないうちに、頭から足の先まで紳士であり、ギーシュのような容貌（ようぼう）とモルトマールのような才智（さいち）を備（そな）えた三十ばかりのりっぱな青年（せいねん）、ド・シャトー・ルノーが、早くもアルベールの手を握っていた。 3-39-7-8「君（きみ）、」と、彼は言った。3-39-7-9「僕の親友（しんゆう）、そのうえ僕の命（いのち）の恩人（おんじん）でもあるアルジェリヤ騎兵（きへい）大尉（たいい）マクシミリヤン・モレル君（くん）を御紹介しよう。3-39-7-10もっとも、こんなことを言うまでもなく、一目（ひとめ）でそれとわかるだろう。3-39-7-11子爵、僕の英雄（えいゆう）に敬意（けいい）を表（あら）わしてくれ給（たま）え」。 3-39-7-12読者（どくしゃ）諸君（しょくん）は、その時の事情（じじょう）がかなり劇的（げきてき）であったことから、あのマルセイユで見た彼のことを、まだ記憶（きおく）しておられることにちがいない−−−シャトー・ルノーは、広い頭、鋭い眼、黒い鬚（ひげ）の持主（もちぬし）であるその偉丈夫（いじょうふ：体格の堂々とした、りっぱな男子）を、自分の体のかげにしないようにと一歩（いっぽ）すさった。 3-39-7-13しっくり身についた、なかばフランスふう、なかば東洋（とうよう：この場合トルコのあたり）ふうの華（はな）やかな軍服（ぐんぷく）、レジオン・ドヌール勲章を飾った幅広（はばひろ）の胸（むね）、その雄々（おお）しい上体（じょうたい）をそりかえらせた青年（せいねん）将校（しょうこう）は、気品（きひん）のある礼儀（れいぎ）正（ただ）しい態度（たいど）で身をかがめた。3-39-7-14がっしりしている男だけに、その動作（どうさ）の一（ひと）つ一つがなんとも言えずゆかしかった。 3-39-7-15アルベールは、親（した）しみをこめた慇懃（いんぎん）な態度でこう言った。3-39-7-16「ド・シャトー・ルノー男爵（だんしゃく）は、わたしがあなたとおちかづきになれりることをどんなに喜ぶか、ちゃんと存じていたのですな。3-39-7-17男爵とお親（した）しいそうで。3-39-7-18このわたしとも、どうか御昵懇（ごじっこん：親しくつきあうさま）にお願いします」。3-39-7-19「けっこうけっこう、」と、シャトー・ルノーが言った。3-39-7-20「子爵、わたしにしてくだすったようなことを、必要とあらば君にもしてくださるようにお願いしたらいいと思うぜ」。3-39-7-21「いったいどんなことをなさいました？」と、アルベールがたずねた。 3-39-7-22「いや、」と、モレル大尉が言った。3-39-7-23「お話しするほどのことではありません。3-39-7-24大げさに言っておいでなのです」。3-39-7-25「ええ？」とシャトー・ルノーは言った。3-39-7-26「話すほどのことではないんですって？3-39-7-27命（いのち）にかかわるうようなことが、話すほどのことではないんですって・・・・モレルさん、それはどうも哲学者（てつがくしゃ）じみたお言葉ですな・・・・毎日、命（いのち）を投げ出しておいでのあなたとしては、それですむかもしれませんが、たまたま命をなくしそうな目にあったわたしにとっては・・・・」。3-39-7-28「男爵、察するところ、どうやらモレル大尉に命に助けていただいたとでもいうらしいな？」。 3-39-7-29「そのとおり」と、シャトー・ルノーが言った。3-39-7-30「で、それはまたどうしたときに？」と、ボーシャンがたずねた。3-39-7-31「ボーシャン、僕は腹（はら）がすいて死にそうなんだぜ！」と、ドプレーが言った。3-39-7-32「話に夢中（むちゅう）にならないでほしいな」。3-39-7-33「だって、君（きみ）、」と、ボーシャンは言った。3-39-7-34「べつに食卓（しょくたく）につく邪魔（じゃま）をしてなぞいるんじゃないぜ・・・・飯を食いながら、シャトー・ルノー君（くん）の話を聞こうじゃないか」。 3-39-7-35「諸君（しょくん）、」と、アルベールが言った。3-39-7-36「ちょっと御注意（ごちゅうい）するが、まだ十時十五分だ。3-39-7-37そして、最後の客人（きゃくじん）はまだお見えになっていないんだぜ」。3-39-7-38「そうそう、外交家（がいこうか）が一人くるんだったな」と、ドプレーが言った。3-39-7-39「外交家かどうか、そこのところは知らないがね。3-39-7-40わかっているのは、僕のため、申しぶんのない使命（しめい）を果（はた）してくれられたっていうことだ。3-39-7-41かりに僕が国王（こくおう）だったら、金毛勲章（きんもう・くんしょう）だろうが、ガーター勲章（くんしょう）だろうが。、即座（そくざ）にありったけの勲章をあげるんだがね」。 3-39-7-42「まだ食卓（しょくたく）に着かないのだったら、」と、ドプレーが言った、「さっきのようにヘルスを一杯（いっぱい）注（そそ）いでもらおう。3-39-7-43そして男爵、その話というのを伺（うかが）おうか」。3-39-7-44「僕が、アフリカへいこうと思いたったことを知ってるね？」。 |
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ページ制作者：（ささくら宗）聖母マリヤ福音教会
通称「オリジナル教会」 初代代表者 笹倉正義
オリジナル教会・ささくら修道会・必読書
2017/6/1