２６（７）ダイヤの ２６（７）ダイヤの
| 2-26-7-1「ちょっとお待ちください」と、司祭は言った。2-26-7-2「すっかり言わせてください。2-26-7-3なにかおっしゃることがおありでしたら、あとから伺（うかが）うことにしましょう。2-26-7-4で、も一人の男は、たといわたしの競争者ではあったが、やはりわたしを愛していた。2-26-7-5そして、その男はフェルナン。2-26-7-6つぎにわたしの許嫁（いいなずけ）。2-26-7-7その名を・・・・あ、その許嫁の名を忘れてしまいました・・・・」と、司祭は言った。2-26-7-8「メルセデスです」と、カドルッスは言った。2-26-7-9「そう、そう、それでした」と、司祭は押し殺されたような溜息をついた。2-26-7-10「メルセデスです」。 2-26-7-11「それで？」と、カドルッスは促（うなが）したてた。2-26-7-12「水差（みずさし）に水をくださいませか」と、司祭が言った。2-26-7-13カドルッスは急いで言われたとおりにした。2-26-7-14司祭はコップに水をみたして幾口（いくくち）か飲（の）んだ。2-26-7-15「どこまでお話ししましたかな？」。彼はコップをテーブルの上に置きながら言った。2-26-7-16「許嫁の名がメルセデスというところまでです」。2-26-7-17「そうでした。2-26-7-18どうかマルセイユへ行っていただきたい・・・・これもエドモンが言ったとおりなのです、いいですな？」。2-26-7-19「わかりました」。 2-26-7-20「このダイヤモンドを売っていただきたい。2-26-7-21そしてそれを五（いつ）つに分（わ）けて、この世の中で自分を愛してくれた五人の親しい友人に分けてやっていただきたい！」。2-26-7-22「五つに分ける？」と、カドルッスは言った。2-26-7-23「さっき四人（よにん）しか名前をおっしゃらなかったじゃありませんか」。2-26-7-24「というのは五人目は、聞くところのよるともうこの世の人ではないからです・・・・五人目というのはそのダンテスの父親（ちちおや）です」。2-26-7-25「おお、そうでした」と、カドルッスは、心のうちで打ち合っている感情に、気も動顛（どうてん：非常に驚いて平静を失うこと。驚きあわてること）したかのように言った。2-26-7-26「おお、そうでした、かわいそうに、あの老人は亡（な）くなりました」。 2-26-7-27「そのことはマルセイユで聞きました」と、司祭はつとめて何げないふうを装（よそお）いながら言った。2-26-7-28「しかし、なにぶんよほどまえに亡くなられたことなので、詳（くわ）しいことは聞くことができませんでした・・・・ひょっとしたらあの老人の亡くなった頃のことを、なにか御承知ではありませんか？」。2-26-7-29「おお！」と、カドルッスは言った。2-26-7-30「わたしほど知っているものがありましょうか？・・・・2-26-7-31わたしはあの老人と隣（とな）りどうしに住（す）んでいました・・・・2-26-7-32ああ、そうでした、息子（むすこ）がいなくなって一年（いちねん）たつかたたないうちに、あの気の毒な老人は亡くなりました」。 2-26-7-33「だが、なんの病気（びょうき）で亡くなりました？」。2-26-7-34「医者（「いしゃ）はその病気をなんとか言っておりました・・・・胃腸（いちょう）カタルだったかな。2-26-7-35だが、老人を知っているものに言わせれば、悲しみのあまり死んだのだといえましょう・・・・2-26-7-36ですが、あの老人の死ぬのを見とどけたと言えるこのわたしの口から申しますと・・・・」と、カドルッスは言葉をきった。 |
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引用者：2016/8/28 （笹倉宗）聖母マリヤ福音教会
通称「オリジナル教会」 初代代表者 笹倉正義