（２） （２）
| 2-1こうして何年間もベッドに寝転がったまま大臣や大使（たいし）を謁見（えっけん）し、2-2手早く用事を済ませると、2-3ドアに鍵を掛けてしまう。2-4するとカーテンの蔭（かげ）から「愛人」ジュリアーノと、2-5彼がフィレンツェの暗黒街（あんこく・がい）から連れてきた無頼（ぶらい）の徒（やから）が現れて、2-6奇怪などんちゃん騒ぎが始まる。2-7彼らに豪勢（ごうせい）にご馳走（ごちそう）を振る舞い、2-8宮廷（きゅうてい）要人（ようじん）の悪口を言って楽しむのは序の口で、2-9後はまったくの無礼講（ぶれいこう）、2-10正真正銘（しょうしん・しょうめい）の乱痴気（らんちき）騒（さわ）ぎとなる。 2-11旧家（きゅうか）の主人によくあるように、2-12このメディチ家最後の当主（とうしゅ）にも被虐（ひぎゃく）趣味（しゅみ）があり、2-13その無頼漢（ぶらいかん）たちの罵倒（ばとう）や屈辱（くつじょく）、2-14時には殴（なぐ）る蹴（け）るの乱暴を受けて快感を味わった。2-15ジュリアーノは大公（たいこう）所蔵（しょぞう）の美術品を盗んで商人に売り、2-16商人はまたそれを図々（ずうずう）しく大公に売りつけに来た。2-17大公は「ほう、世間（せけん）は狭いものだな」と言って、2-18それを言い値（ね）で買った。2-19馬鹿（がか）にされ、2-20財産を盗まれることにもマゾヒスティックな快感を味わったのだ。 2-21姉のルドビーカは大公のそうした不品行（ふひんこう）に心を痛めて、2-22しばしば強く弟に意見した。2-23父親似（ちちおや・に）のこの姉をジャンガストーネは憎んでいたが、2-24ある時うるさく言われてパーティを催した。2-25大公は大勢の賓客（ひんきゃく）を招（まね）いた席上（せきじょう）でしたたかに酔っ払い、2-26大きな音を立ててげっぷをし、2-27挙句（あげく）の果てにテーブルに嘔吐（おうと）し、2-28鬘（かつら）を外してそれで口を拭（ぬぐ）った。 2-29ところが、信じられないことに、2-30この大公の政治はまっとうだった。2-31即位（そくい）後すぐに父の厳守してきたユダヤ人差別（さべつ）措置（そち）を撤廃（てっぱい）し、2-32娼婦（しょうふ）を街頭（がいとう）で鞭打ち胸に「淫婦（いんぷ）」と書いたプラカードを掛けさせる2-33売春（ばいしゅん）禁止法（きんし・ほう）にも終止符（しゅうし・ふ）を打った。2-34父が盲従（もうじゅう）してきた教会の国事（こくじ）容喙（ようかい：喙はくちばしのことで、横から口をだすこと）には断固（だんこ）たる態度（たいど）を取った。 2-35フィレンツェ大司教がある問題について、2-36国法より教会の意向を尊重してもらいたいと要求してきた時、2-37「あなたは霊魂（れいこん）の問題だけ考えていればいいのだ」と言ってそれを一蹴（いっしゅう）したし、2-38ローマから教皇が大公国の人事に干渉（かんしょう）してきた時は、2-39無視して返事も出さなかった。2-40父のコジモは反宗教改革の戦死だったから、2-41ガリレオ以来の自由な学問研究の拠点であったピサ大学を、2-42道徳（どうとく）汚染（おせん）の元凶（げんきょう）として弾圧したが、2-43ジャンガストーネはこの大学に権威と実質を回復させた。2-44追放されていたジャンネッティ教授の哲学講座を再開させ、2-45教会禁書（きんしょ）目録（もくろく）に入っていたガッサンディの著作の刊行（かんこう）を許可し、2-46ガリレオ記念祭をサンタ・クローチェ聖堂で厳粛に挙行（きょこう）するよう命じたのである。 2-47抜本的な改革は不可能だったが、2-48人事（じんじ）を能力（のうりょく）本位（ほんい）かつ公正（こうせい）に行い、2-49宮廷経費を合理的に節減して、2-50財政（ざいせい）赤字（あかじ）をかなり減少させたのも彼の功績である。 |
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| 謝辞ミチオ・自己研鑽資料 |
| 2014/9/1、2016/2/26 （笹倉宗）聖母マリヤ福音教会代表 笹倉正義 通称：「オリジナル教会」 「ささくら修道会」 2017/2/22 |