（５）チョンピの （５）チョンピの
| 権力闘争に新しい波 1-6-5-1だが状況（じょきょう）が進展（しんてん）するにつれて、今度（こんど）の騒動（そうどう）が規模（きぼ）といい内容（ないよう）といい、従来（じゅうらい）の権力闘争（けんりょく）（とうそう）とはまったく違（ちが）うことが明（あき）らかになった。 1-6-5-2武器（ぶき）を手に暴動（ぼうどう）を起（お）こしたのは、煽動（せんどう）され利用（りよう）される「大衆（たいしゅう）」ではなくて、独自（どくじ）の立場（たちば）と要求（ようきゅう）を持（も）ち、自分（じぶん）たちの間（あいだ）から指導者（しどうしゃ）を選（えら）び出したチョンピ（Ciompi）、すなわち毛織物工業労働者の集団だったからである。 若き指導者は （言葉）梳毛 羊毛（ようもう）などから長い繊維（せんい）をより分け、これを梳（す）いて、ちぢれをのばし、平行に並べる作業。また、そのようにした毛。 1-6-5-3最高指導者（さいこう）（しどうしゃ）はミケーレ・ディ・ランド、まだ若い梳毛工（そもう・こう）である。1-6-5-4五月（ごがつ）に始（はじ）まったこの騒乱（そうらん）は、六月（ろくがつ）には既成（きせい）秩序（ちつじょ）に対（たい）する明確（めいかく）な反乱（はんらん）となり、もはやどのボスが権力（けんりょく）を握（にぎ）るかではなく、政治体制（せいじ）（たいせい）をどう変革（へんかく）するかが問題（もんだい）となっていた。 1-6-5-5小アルテ系（けい）の中小商工業者（ちゅうしょう）（しょうこうぎょうしゃ）も労働者側（ろうどうしゃ）（がわ）に与（くみ）し、アルビッツイ、パッツイ、ソデリーニら大（だい）アルテ幹部（かんぶ）の館（やかた）が襲撃（しゅうげき）され、市街（しがい）はチョンピ暴徒（ぼうと）が制圧（せいあつ）、国家（こっか）の機能（きのう）は完全（かんぜん）に麻痺（まひ）。 1-6-5-6小（しょう）アルテにも大（だい）アルテと平等（びょうどう）の権利（けんり）を保障（ほしょう）するという程度（ていど）の穏健（おんけん）な改革（かいかく）ではもはや収拾不可能（しゅうしゅう）（ふかのう）だ。1-6-5-7親方（おやかた）の権利（けんり）だけでなく労働者（ろうどうしゃ）の権利（けんり）も保障（ほしょう）せよと、チョンピは主張（しゅちょう）している。 1-6-5-8七月二十日（しちがつ）（はつか）、武器（ぶき）を手（て）に集結（しゅうけつ）した一万（いちまん）のチョンピは、正真正銘（しょうしん）（しょうめい）の改革的蜂起（かいかくてき）（ほうき）に立（た）ち上（あ）がった。1-6-5-9今度（こんど）はボスの館（やかた）だけでなく毛織物業（けおりもの）（ぎょう）アルテ事務所（じむしょ）、税務局（ぜいむきょく）、裁判所（さいばんしょ）が焼（や）き討（う）ちされ、二十二日（にじゅうに）（にち）にはついに市庁舎（しちょうしゃ）パラッツオ・ベッキオが攻撃（こうげき）の対象となる。 |
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| ミケーレ・ディ・ランドが正義の旗手 1-6-5-10蜂起者（ほうきしゃ）は大聖堂前（だいせいどうまえ）の広場（ひろば）に全市民集会（ぜんしみん）（しゅうかい）（：＝パルラメント）を召集（しょうしゅう）、ミケーレ・ディ・ランドを新（あたら）しい正義（せいぎ）の旗手（きしゅ）に選出（せんしゅつ）し、その任期（にんき）を終身（しゅうしん）とした。 1-6-5-11総務会（そうむかい）の権限（けんげん）はこの集会（しゅうかい）から選（えら）ばれた「臨時（りんじ）執行委員会（しっこう）（いいんかい）」（：＝バーリア）に移（うつ）され、労働者（ろうどうしゃ）の組合（くみあい）が結成（けっせい）され、その新（しん）アルテが既成（きせい）の大小（だいしょう）アルテと同等（どうとう）の権利（けんり）で国政（こくせい）に参与（さんよ）することが承認（しょうにん）され、税制（ぜいせい）の改革（かいかく）、負債（ふさい）の棒引（ぼうび）きなどが決議（けつぎ）され、蜂起（ほうき）は勝利（しょうり）したかに見（み）えた。 |
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| ミチオ書・第一部・（文章）歴史物語・藤沢道郎 ページ製作者：ささくら修道会 笹倉正義 |
| 2014/9/1、2016/1/12、2017/2/19 2019/1/27 （ささくら宗）聖母マリヤ福音教会：通称：「オリジナル教会」 |