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| 「税制改革断行」の地ならし 1-6-25-1新（あたら）しい政策（せいさく）を実行（じっこう）する法的機構（ほうてき）（きこう）をどうするのか。1-6-25-2コジモは臨時執行委員（りんじ）（しっこう）（いいん）（：＝バリア）の制度（せいど）を最大限（さいだいげん）に利用（りよう）した。 1-6-25-3前述（ぜんじゅつ）した通（とお）りこの委員会（いいんかい）は、非常（ひじょう）の際（さい）に招集（しょうしゅう）される全市民集会（ぜん）（しみん）（しゅうかい）で選出（せんしゅつ）され、共和国（きょうわこく）の伝統的諸機関（でんとうてき）（しょきかん）の上（うえ）に立（た）ってその権限（けんげん）を集中（しゅうちゅう）する機構（きこう）だが、メディチ政権成立以来（せいけん）（せいりつ）（いらい）、この委員会（いいんかい）はほとんど常置（じょうち）に近（ちか）くなり、コジモ御大（おんたい：＝親分のていねいな言い方）自身（じしん）が常（つね）に十人（じゅうにん）の委員（いいん）の一人（ひとり）として出席（しゅっせき）した。 1-6-25-4この委員会（いいんかい）の権能（きのう）はほとんど無限（むげん）に近（ちか）く、その決定（けってい）に待（ま）ったをかけられるのは全市民集会（ぜん）（しみん）（しゅうかい）しかない。 1-6-25-5ところが全市民集会（ぜん）（しみん）（しゅうかい）の多数（たすう）を占（し）めるのは無権利・無産（むけんり）（むさん）の庶民（しょみん）大衆（たいしゅう）であり、彼（かれ）らの間（あいだ）でメディチ家（け）の信望（しんぼう）は絶大（ぜつだい）である。1-6-25-6この底辺（ていへん）の支持（しじ）こそが、メディチ家（け）支配（しはい）の最後（さいご）の、絶対的（ぜったいてき）な安全弁（あんぜんべん：＝圧力の高まりで配管が破裂しないように、一定以上の圧力で、蒸気を開放する弁）であることを、コジモはもちろん熟知（じゅくち）していた。 1-6-25-7改革（かいかく）のように見（み）えないこの政治改革（せいじ）（かいかく）を徐々（じゅじょ）に、静（しず）かにやってのけて政権（せいけん）を磐石（ばんじゃく）の基盤（きばん）に置（お）いた後（のち）、コジモは下層民衆（かそう）（みんしゅう）の支持（しじ）をメディチ側（がわ）に確保（かくほ）する手段（しゅだん）を一挙（いっきょ）に打（う）ち出（だ）した。1-6-25-8すなわち、税制（ぜいせい）の抜本的改革（ばっぽんてき）（かいかく）。 収入の対価としての「累進所得税制」の発表 1-6-25-9西暦１４４３年、政府（せいふ）の発表（はっぴょう）した新所得税（しん）（しょとくぜい）は、五十（ごじゅう）フィオリーニ（：＝３．５ｇ金貨５０枚＝５０万円：金貨１枚が１万円と仮定）以下（いか）の低所得者（てい）（しょとくしゃ）には四（よん）パーセント、千五百（せんごひゃく）フィオリーニ（：＝３．５ｇ金貨１５００枚＝１５００万円）以上（いじょう）の高額所得（こうがく）（しょとく）には三十三（さんじゅうさん）パーセント。1-6-25-10世界最初（せかい）（さいしょ）の累進所得税制（るいしん）（しょとく）（ぜいせい）である。1-6-25-11フィレンツェ社会（しゃかい）は大騒（おおさわ）ぎになった。 1-6-25-12下層民衆（かそう）（みんしゅう）が拍手（はくしゅ）喝采（かっさい）したのはもちろんだが、金持（かねもち）ち連中（れんちゅう）は大慌（おおあわ）てである。1-6-25-13所得額（しょとく）（がく）の査定（さてい）にも当然（とうぜん）メディチ党（とう）の意向（いこう）が働（はたら）く。1-6-25-14収入（しゅうにゅう）を厳（きび）しく見積（みつも）もるか、甘（あま）く査定（さてい）するか、その匙（さじ）加減（かげん）で税額（ぜいがく）は大（おお）きく違（ちが）ってくるから、富豪（ふごう）の多（おお）くが争（あらそ）ってメディチ家（け）への忠誠（ちゅうせい）を強（つよ）めることになった。 反メディチ貴族の共和国（：＝フィレンツェ）脱出を誘発 1-6-25-15いちばん損（そん）をしたのがメディチ家（け）を新興（しんこう）成金（なりきん）と軽蔑（けいべつ）して一定（いってい）の距離（きょり）を置（お）いていた名門（めいもん）貴族（きぞく）諸家（しょか）で、巨額（きょがく）の納税（のうぜい）通知書（つうちしょ）を受（う）け取（と）って目（め）をむき、あるいは呆然（ぼうぜん）、あるいは憤然（ふんぜん）と国外（こくがい）へ去（さ）った。 1-6-25-16メディチ党（とう）にとってはいちばん目障（めざわ）りな連中（れんちゅう）だったから、まさに一石二鳥（いっせき）（にちょう）だ。1-6-25-17四年後（よねんご）には累進税（るいしんぜい）をさらに引（ひ）き上（あ）げ、最高税率（さいこう）（ぜいりつ）を五十（ごじゅっ）パーセントにしたから、名家（めいか）の国外（こくがい）流出（りゅうしゅつ）が相次（あいつ）いだ。 1-6-25-18これでは町（まち）の品格（ひんかく）が落（お）ちるのではないかと心配（しんぱい）して忠告（ちゅうこく）に来（き）た人（ひと）に、コジモはやはり微笑（ほほえみ）を含（ふく）んで答（こた）えた、「あの連中（れんちゅう）の代（か）わりを作（つく）ればいいのでしょう。1-6-25-19赤（あか）い布（ぬの）が何尺（なんじゃく）かあれば貴族（きぞく）を一人（ひとり）作（つく）れる御時世（ごじせい）ですよ」。 税制改革の成功 1-6-25-20この税制改革（ぜいせい）（かいかく）で共和国（きょうわこく）の収入（しゅうにゅう）は二十年間（にじゅうねん）（かん）に五百万（ごひゃくまん）フィオリーニ（５００X１０,０００×1万円＝5,000,000万円＝５００億円）増加（ぞうか）したといわれる。 |
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| ミチオ書・第一部・（文章）歴史物語・藤沢道郎 ページ製作者：ささくら修道会 笹倉正義 |
| 2014/9/1、2016/1/17、2017/2/19 2019/2/15 （ささくら宗）聖母マリヤ福音教会：通称：「オリジナル教会」 |