（１０）ブルネレスキの遠近法(えんきんほう)

ブルネレスキの提案は単一大円蓋(だいえんがい)（クーポラ） 1-6-10-1ブルネレスキは単一（たんいつ）の大円蓋（だいえんがい）を設計（せっけい）した。1-6-10-2いかにも結構（けっこう）な構想（こうそう）だが技術的（ぎじゅつてき）に可能（かのう）なのかと、審査委員（しんさ）（いいん）に問（と）われた彼（かれ）は、卵（たまご）を割（わ）ってその殻（から）を卓上（たくじょう）に立（た）て、それを使（つか）って技法（ぎほう）を説明（せつめい）した。 1-6-10-3審査委員（しんさ）（いいん）が理解（りかい）したかどうかは分からぬが、ローマの遺跡（いせき：＝屋上が単一円蓋のパンテオン）で古代建築（こだい）（けんちく）の方法（ほうほう）を綿密（めんみつ）に研究（けんきゅう）したブルネレスキには自信（じしん）があった。 大聖堂の屋上装飾「単一円蓋（クーポラ）」 1-6-10-4従来（じゅうらい）の方法（ほうほう）だと、円蓋（えんがい）が頂点（ちょうてん）まで組（く）み上（あ）がるまでは、チェンティネと呼（よ）ばれる木製（もくせい）の枠組（わくぐ）みで支（ささ）えておかなければならないのだが、製作中（せいさくちゅう）の円蓋（えんがい）が枠組（わくぐ）みの助（たす）けなしに自力（じりき）で立（た）っていられる新技術（しんぎじゅつ）を、彼（かれ）はすでに開発（かいはつ）していたのである。1-6-10-5こうして彼（かれ）は設計（せっけい）だけでなく、この大胆（だいたん）な円蓋工事（えんがい）（こうじ）いっさいの責任（せきにん）を引（ひ）き受（う）けることになった。 サン・ロレンツオ聖堂は遠近法 1-6-10-6同（おな）じ年（とし）、ブルネレスキは市内（しない）のサン・ロレンツオ聖堂（せいどう）の設計（せっけい）にも着手（ちゃくしゅ）している。1-6-10-7この聖堂（せいどう）は、彼（かれ）の遠近法（えんきんほう）理念（りねん）を具体化（ぐたいか）した最初（さいしょ）の作品（さくひん）となった。 1-6-10-8遠近法（えんきん）（ほう）とは、俗（ぞく）に信（しん）じられているように自然（しぜん）をより忠実（ちゅうじつ）に模写（もしゃ）する方法（ほうほう）でも、二次元（にじげん）の平面（へいめん）に奥行（おくい）きの錯覚（さっかく）を作（つく）り出（だ）す技術（ぎじゅつ）でもなくて、人間（にんげん）の理性（りせい）が自然空間（しぜん）（くうかん）や視覚（しかく）のあらゆる偶然性（まんぜん）（せい）を排除（はいじょ）して合理的（ごうりてき）に空間（くうかん）を把握（はあく）し構築（こうちく）するための、整序（せいじょ）された単一（たんいつ）のシステムである。 1-6-10-9そしてこのシステムの中で、すべての対象（たいしょう）が比例（ひれい）＝均整（きんせい）の関係（かんけい）において位置（いち）づけられる。 1-6-10-10空間（くうかん）は無数（むすう）の方向（ほうこう）に延長（えんちょう）を持（も）つが、人間（にんげん）の理性（りせい）はそれを三（みっ）つの直交軸（ちょっこう）（じく）に帰着（きちゃく）させることができる。 1-6-10-11サン・ロレンツオ聖堂（せいどう）はこの縦（たて）・横（よこ）・高（たか）さの三（みっ）つの直交軸（ちょっこう）（じく）を基本（きほん）として構成（こうせい）され、すべての建築要素（けんちく）（ようそ）が比例（ひれい）＝均整（きんせい）関係（かんけい）の中（なか）に位置（いち）づけられている。 1-6-10-12こうして美術（びじゅつ）は、この時代（じだい）の「知（わ）」の最先端（さいせんたん）を切（き）り開（ひら）く分野（ぶんや）となり、この聖堂（せいどう）は遠近法（えんきん）（ほう）の教科書（きょうかしょ）となった。

サン・ロレンツオ大聖堂の雑学 Wikipedia

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ミチオ書・第一部・（文章）歴史物語・藤沢道郎 ページ製作者：ささくら修道会　笹倉正義

2014/9/1、2016/1/14、2017/2/19 2019/1/31、2/1 （ささくら宗）聖母マリヤ福音教会：通称：「オリジナル教会」