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| 初老のボッカチオに非難集中 1-5-23-1西暦１３６２年、四十九歳（よんじゅうきゅうさい）のボッカチオは自分（じぶん）の生涯（しょうがい）を顧（かえり）みて、悪行（あくぎょう）愚行（ぐこう）の連続（れんぞく）ではないかという悔悟（かいご）の念（ねん）に捉（とら）われた。1-5-23-2『デカメロン』は贖罪派（しょくざい）（は）の宗教人（しゅうきょうじん）から悪書（あくしょ）の代表視（だいひょうし）され、その作者（さくしゃ）も目の敵（かたき）にされていた。 1-5-23-3ある修道士（しゅうどうし）は、あんなけしからぬ本を書いて人心（じんしん）を毒（どく）したお前（まえ）は、心（こころ）から悔悟（かいご）しない限（かぎ）り必（かなら）ず地獄（じごく）へ落（お）ちるぞと、脅迫状（きょうはくじょう）を送（おく）ってきた。1-5-23-4ボッカチオは暗（くら）い懺悔（ざんげ）の気分（きぶん）に陥（おちい）り、自著（じちょ）を絶版（ぜっぱん）にし原稿（げんこう）を焼却（しょうきゃく）しようとまで思（おも）い詰（つ）めた。 1-5-23-5ペトラルカに止められてその行為（こうい）は思いとどまったが、心（こころ）は晴（は）れず、政府（せいふ）の仕事（しごと）も大方（おおかた）は断（ことわ）り、フィレンツェの町（まち）を離（はな）れてチェルタルドの自宅（じたく）に日（ひ）を過（すご）すことが多（おお）くなった。 ナポリは昔のナポリにあらず 1-5-23-6ペトラルカの真似（まね）をして時々旅行（ときどき）（りょこう）に出かけたが、心は暗（くら）く沈（しず）むばかり、友人（ゆうじん）の銀行家（ぎんこうか）アッチャイウオーリの招（まね）きでナポリへ行くことになった時は、さすがに期待（きたい）に胸（むね）をときめかしたが、ナポリはかつてのナポリでなく、ボッカチオもお昔（むかし）の若（わか）いボッカチオでなかったから、ただ苦（にが）い幻滅（げんめつ）を味（あじ）わっただけだった。 ダンテ研究に没頭 1-5-23-7ラテン語はいくら勉強（べんきょう）してもペトラルカのようには上手（じょうず）にならなかったから、再びイタリア語に戻ったが、小説（しょうせつ）は書かず、もっぱらもう一人（ひとり）の先輩大詩人（せんぱい）（だいしじん）ダンテの研究（けんきゅう）と鑚仰（さんぎょう：聖人などの徳を、ほめ尊ぶこと）に専念（せんねん）した。1-5-23-8政府（せいふ）がダンテ研究講座（けんきゅう）（こうざ）を開くよう、これだけはフィレンツェに足（あし）を運（はこ）んで熱心（ねっしん）に運動（うんどう）して開設（かいせつ）に漕（こ）ぎつけ、１３７３年にはみずからその講壇（こうだん）に立って『神曲』を注解（ちゅうかい）した。1-5-23-9だが、それは金（かね）にならなかった。 哀れ、お坊ちゃんの老後 1-5-23-10ナポリ仕込（しこ）みの浪費癖（ろうひへき）が直（なお）らないボッカチオは、蓄財（ちくざい）にはまったく無縁（むえん）だったから、公職（こうしょく）から身（み）を引（ひ）いた晩年（ばんねん）は年（とし）の瀬（せ）を越（こ）すのに難渋（なんじゅう）するほど貧乏（びんぼう）になっていた。 |
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| ミチオ書・第一部・（文章）歴史物語・藤沢道郎 ページ製作者：ささくら修道会 笹倉正義 |
| 2014/9/1、2016/1/9、2017/2/18、2019/1/22 （ささくら宗）聖母マリヤ福音教会：通称：「オリジナル教会」 |