（１５）ユダヤ人 （１５）ユダヤ人
| （ボ）居住区内にとどまり 「1-5-15-1下層（かそう）の細民（さいみん：辞書：貧しい人々）、それにおそらくは中流（ちゅうりゅう）階層（かいそう）の多（おお）くも、さらに残酷（ざんこく）な惨禍（さんか）に晒（さら）されました。1-5-15-2彼等（かれら）のほとんどは、何とかなると思ってか、あるいは貧乏（びんぼう）のためか、自分（じぶん）たちの居住区（きょじゅうく）から外（そと）へ出（で）なかったため、一日（いちにち）に何千人（なんぜんにん）も発病（はつびょう）し、看護（かんご）も世話（せわ）も受（う）けられないままに、全員（ぜんいん）空（むな）しく死んでいきました。 1-5-15-3昼（ひる）も夜（よる）も路傍（ろぼう）で倒（たお）れて死（し）ぬ者（もの）の数知（かずし）れず、家（いえ）の中（なか）で果（は）てる者（もの）も数多（かずおお）かったのですが、その屍体（したい）が悪臭（あくしゅう）を放（はな）つようになるまでは、近所（きんじょ）の人（ひと）にさえ死（し）んだとは分（わ）からなかったのです」。 （ボ）墓地対策の堀、死体の段々積 「1-5-15-4その無数（むすう）の屍体（したい）が毎日（まいにち）毎時（まいじ）、競争（きょうそう）のように教会（きょうかい）に搬（はこ）び込（こ）まれましたから、・・・・どこも墓地（ぼち）が満員（まんいん）になり、その挙句（あげく）は墓地（ぼち）に特別（とくべつ）大（おお）きな壕（ほり）を掘（ほ）って、そこに新着（しんちゃく）の何百（なんびゃく）という屍体（したい）を放（ほう）り込（こ）む始末（しまつ）となりました。1-5-15-5屍体（したい）を船荷（ふなに）のように何段（なんだん）にも積（つ）み重（かさ）ね、一段（いちだん）ごとに多少（たしょう）の土砂（どしゃ）をかぶせましたが、その壕（ほり）とてすぐに一杯（いっぱい）に詰（つ）まってしまう有様（ありさま）でした」。 （ボ）罹患前にと、持ち物の消費に全力 「1-5-15-6農村部（のうそんぶ）でも、農民（のうみん）やその家族（かぞく）が、医者（いしゃ）の手当（てあて）も召使（めしつかい）の介護（かいご）も受（う）けぬまま昼（ひる）と言（い）わず夜（よる）と言わず、路傍（ろぼう）や田畑（たはた）や屋内（おくない）でまるで獣（けもの）が死（し）ぬようにばたばたと倒（たお）れていくのでした。1-5-15-7だから彼等（かれら）も、都会（とかい）の人々（ひとびと）と同様（どうよう）、それまでの習慣（しゅうかん）を捨（す）てて仕事（しごと）を放棄（ほうき）し、・・・・ただ現在（げんざい）手元（てもと）に蓄（たくわ）えてあるものをすっかり消費（しょうひ）してしまうことにだけ智恵（ちえ）をしぼるのでありました」。 ボッカチオ「ペスト報告書」の評価 1-5-15-8屍体（したい）を覆（おお）う黒（くろ）い斑点（はんてん）のゆえに「黒死病（こくしびょう）」とも呼（よ）ばれるこの伝染病（でんせんびょう）。1-5-15-9それが引（ひ）き起（お）こした極限（きょくげん）状況（じょうきょう）の中（なか）で、都市（とし）が混乱（こんらん）、農村（のうそん）が荒廃（こうはい）しただけでなく、親子（おやこ）、夫婦（ふうふ）、友人（ゆうじん）といった基本的（きほんてき）な人間関係（にんげん）（かんけい）さえ、死病伝染（しびょう）（でんせん）の恐怖（きょうふ）の前（まえ）にめちゃめちゃに破壊（はかい）されたことを、ボッカチオは冷静（れいせい）に観察（かんさつ）し報告（ほうこく）している。 宗教問題に転化、ユダヤ人 1-5-15-10「キリスト教（きょう）の敵（てき）」が病菌（びょうきん）をばらまいているという噂（うわさ）が広（ひろ）がり、全欧（ぜんおう）各地（かくち）でユダヤ人（じん）が襲撃（しゅうげき）され、虐殺（ぎゃくさつ）されたこともまた事実（じじつ）である。1-5-15-11この時期（じき）に殺（ころ）されたユダヤ人の数（かず）は数万（すうまん）を下（くだ）らない。1-5-15-12まさに悪夢（あくむ）のような「死（し）の勝利（しょうり）」の情景（じょうけい）である。 |
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| ミチオ書・第一部・（文章）歴史物語・藤沢道郎 ページ製作者：ささくら修道会 笹倉正義 |
| 2014/9/1、2016/1/6、2017/2/17、2019/1/17 （ささくら宗）聖母マリヤ福音教会：通称：「オリジナル教会」 |