（１２）英・仏 （１２）英・仏
| エドワード三世フランスに宣戦布告 1-5-12-1だが、この日の出の勢（いきお）いのフィレンツェ経済（けいざい）にも、いつしか暗（くら）い影（かげ）が忍（しの）び寄（よ）っていた。1-5-12-2そして危機（きき）はまず金融界（きんゆう）（かい）を襲（おそ）ったのである。1-5-12-3西暦１３３９年、英国（えいこく：＝イギリス）はフランスに宣戦（せんせん）、英国（えいこく）国王（こくおう）エドワード三世（さんせい）は海（うみ）を越（こ）えて大陸（たいりく）に軍勢（ぐんぜい）を送（おく）り込（こ）み、いわゆる百年戦争（ひゃくねん）（せんそう）が勃発（ぼっぱつ）。 1-5-12-4戦争（せんそう）に莫大（ばくだい）な金（かね）がかかることは昔（むかし）も今（いま）も変（か）わりがない。1-5-12-5英国王室（えいこく）（おうしつ）の「御用商人（ごよう）（しょうにん）」であったバルディ、ペルッツィ両銀行（りょう）（ぎんこう）は、その資金（しきん）をまるで底無（そこな）し沼（ぬま）に投（な）げ込（こ）むように戦費（せんぴ）に注（そそ）ぎ込（こ）むことを強（し）いられた。 1-5-12-6ここでまたビラーニ証言（しょうげん）を引（ひ）けば、「バルディとペルッツィが英国王（えい）（こくおう）の商人（しょうにん）で、王（おう）の収入（しゅうにゅう）や羊毛等（ようもう）（など）が彼等（かれら）の手（て）に集（あつ）まり、その代（かわ）りに王（おう）の費用（ひよう）や家来（けらい）の給料等（きゅうりょう）（など）、英国王室（えいこく）（おうしつ）に必要（ひつよう）な費用（ひよう）のすべてを彼等（かれら）が提供（ていきょう）していた。 1-5-12-7その総額（そうがく）は莫大（ばくだい）なもので、国王（こくおう）が遠征（えんせい）から戻（もど）ればバルディが十八万（じゅうはち）（まん）マルク、ペルッツィが十三万（じゅうさん）（まん）五千（ごせん）マルクを手数料（てすうりょう）及（およ）び利子（りし）として受（う）け取（と）る約束（やくそく）だった。1-5-12-8これは一（ひと）つの王国（おうこく）に相当（そうとう）する金額（きんがく）だ」。 （英国）債務の支払い停止命令 1-5-12-9そしてそんな巨額（きょがく）の債務（さいむ）を支払（しはら）う余裕（よゆう）が、当時（とうじ）のつつましい英国経済（えいこく）（けいざい）にあるはずがなかった。1-5-12-10戦争（せんそう）が始（はじ）まって半年（はんとし）も経（た）たぬうちに支払（しはら）い不能（ふのう）に陥（おちい）り、国王（こくおう）は債務（さいむ）に関（かん）する支払（しはら）い停止（ていし）を宣言（せんげん）。 （仏国）銀行支店閉鎖命令 1-5-12-11巨大（きょだい）な資金（しきん）がこうして貸倒（かしだお）れになってしまい、一方（いっぽう）、フランス王（おう）も、敵国（てきこく）に対（たい）するそのような資金援助（しきん）（えんじょ）を放置（ほうち）しておくはずがない。1-5-12-12パリを始（はじ）め王国全域（おうこく）（ぜんいき）にわたって両銀行（りょう）（ぎんこう）の支店（してん）を閉鎖（へいさ）し、駐在員（ちゅうざいいん）を逮捕（たいほ）し、資産（しきん）を没収（ぼっしゅう）。 フィレンツェ市政クーデター失敗 1-5-12-13両面（りょうめん）の打撃（だげき）で、バルディ銀行（ぎんこう）はたちまち苦境（くきょう）に陥（おちい）った。1-5-12-14苦（くる）し紛（まぎ）れに政治的解決（せいじてき）（かいけつ）をもくろんで権力奪取（けんりょく）（だっしゅ）のクーデターを実行（じっこう）しようとしたがもちろん失敗（しっぱい）、怒（おこ）った市民（しみん）に屋敷（やしき）を焼（や）かれ、幹部（かんぶ）十六名（じゅうろく）（めい）は国外（こくがい）に逃亡（とうぼう）。 ナポリの息子に帰郷命令 1-5-12-15ボッカチオの父（ちち）はその中（なか）には入（はい）っていなかったようだが、この非常事態（ひじょう）（じたい）に息子（むすこ）をナポリで遊（あそ）ばせておくわけにはいかない。1-5-12-16それにナポリの王様（おうさま）だってバルディ銀行（ぎんこう）にどんな攻撃（こうげき）を加（くわ）えてくるか分（わ）からないのだ。1-5-12-17急（いそ）いで息子（むすこ）に帰郷（ききょう）を命（めい）じた。 |
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| ミチオ書・第一部・（文章）歴史物語・藤沢道郎 ページ製作者：ささくら修道会 笹倉正義 |
| 2014/9/1、2016/1/6、2017/2/17、2019/1/16 （ささくら宗）聖母マリヤ福音教会：通称：「オリジナル教会」 |