（３）イノケンティウス三世

　（３）イノケンティウス三世(さんせい)

コスタンツァの王位継承権の確立
1-4-3-1父帝（ちちてい）ハインリヒはちょうどその年（とし）、コスタンツァの継承権（けいしょう）（けん）に異議（いぎ）を唱（とな）える反対派（はんたい）（は）を武力（ぶりょく）で粉砕（ふんさい）し、パレルモでシチリア王冠（おうかん）を受（う）けたところである。

1-4-3-2そこへ待望（たいぼう）の皇子誕生（おうじ）（たんじょう）、重（かさ）なる慶事（けいじ）で宮廷（きゅうてい）は祝祭（しゅくさい）に沸（わ）いた。

皇帝による「コスタンツァ王位継承反対派」への処罰
1-4-3-3一方反乱者（いっぽう）（はんらんしゃ）の処罰（しょばつ）は酷烈（こくれつ）を究（きわ）め、首謀者（しゅぼうしゃ）は財産没収（ざいさん）（ぼっしゅう）の上処刑（うえ）（しょけい）、王国（おうこく）の監獄（かんごく）は満員（まんいん）になった。

1-4-3-4反対派（はんたい）（は）が王（おう）に押（お）し立（た）て、教皇（きょうこう）の承認（しょうにん）を受（う）けていたレッチェ公（こう）はすでに病死（びょうし）していたが、ハインリヒはその墓（はか）をあばき、死者（ししゃ）のまとっていた王衣（おうい）を公衆（こうしゅう）の面前（めんぜん）で剥奪（はくだつ）させ、公妃（こうひ）を国外追放（こくがい）（ついほう）、公子（こうじ）を捕（と）らえてその目（め）をえぐり、盲目（もうもく）にして古城（こじょう）の塔（とう）に幽閉（ゆうへい）。

反乱の再燃
1-4-3-5この残酷（ざんこく）な処刑（しょけい）を終（お）えた後（のち）、妻子（さいし）をパレルモに残（のこ）してドイツへ帰（かえ）ったが、反対派領主層（はんたいは）（りょうしゅ）（そう）の抵抗（ていこう）は根強（ねづよ）く、二年後（にねんご）には再（ふたた）びシチリアに大規模（だいきぼ）な反乱（はんらん）が起（お）こった。

父帝の急死
1-4-3-6急（きゅう）を聞（き）いて皇帝（こうてい）はまたもやシチリアに遠征（えんせい）したが、鎮圧（ちんあつ）にとりかかる前（まえ）に急病（きゅうびょう）に襲（おそ）われ、１１９７年秋（ねん）（あき）、あっけなく世（よ）を去（さ）る。1-4-3-7まだ三十三歳（さんじゅうさん）（さい）の若（わか）さだった。

コスタンツァの処世術
1-4-3-8十歳（じゅっさい）も年下（としした）の夫（おっと）に先立（さきだ）たれた皇妃（こうひ）は途方（とほう）に暮（く）れた。1-4-3-9嫡子（ちゃくし）はまだ三歳（さんさい）、周囲（しゅうい）は敵意（てきい）に満（み）ちている。1-4-3-10とりあえず幼（おさな）い皇子（おうじ）にシチリア王位（おうい）を継（つ）がさなければならないが、シチリアは全島挙（ぜんとう）（あ）げてドイツ軍撤退（ぐん）（てったい）を要求（ようきゅう）している。

教皇に幼王の保護を求める
1-4-3-11コンスタンツァはこの要求（ようきゅう）を呑（の）んで戴冠（たいかん）に漕（こ）ぎつけた後（のち）、意（い）を決（けっ）してローマ教皇（きょうこう）の懐（ふところ）に飛（と）び込（こ）んだ。1-4-3-12すべてをお任（まか）せ致（いた）しますから、どうか幼（おさな）い王（おう）の保護者・後見人（ほごしゃ）（こうけんにん）になって頂（いただ）きとうございます。

時の教皇イノケンティウス三世
1-4-3-13時（とき）の教皇（きょうこう）は聖（せい）フランチェスコをバックアップしたあのイノケンティウス三世（さんせい）で就位直後（しゅうい）（ちょくご）の三十七歳（さんじゅうなな）（さい）、例外的（れいがいてき）に若（わか）い教皇（きょうこう）だが、ローマ名門貴族（めいもん）（きぞく）の家（いえ）に生（う）まれ、パリ大学（だいがく）で神学（しんがく）、ボローニャ大学（だいがく）で法律（ほうりつ）を修（おさ）めた俊才（しゅんさい）で、若（わか）くして聖職（せいしょく）に入（はい）り、たちまち教皇庁（きょうこうちょう）の出世街道（しゅっせ）（かいどう）を登（のぼ）り詰（つ）めた超（ちょう）エリートである。

1-4-3-14グレゴリウス七世（ななせい）の志（こころざし）を継（つ）いで、教皇権（きょうこう）（けん）はすべての俗権（ぞっけん）の上（うえ）に立（た）つべきだと確信（かくしん）し、教会（きょうかい）が世俗（せぞく）の政治（せいじ）を正（ただ）さねばならないという使命感（しめい）（かん）を胸（むね）に秘（ひ）めていた。

1-4-3-15そのためにまず必要（ひつよう）なのは皇帝権（こうてい）（けん）の制御（せいぎょ）だから、未亡人（みぼうじん）となった皇妃（こうひ）が雛（ひな）を連（つ）れた窮鳥（きゅうちょう）のように懐（ふところ）に飛（と）び込（こ）んで来（き）たのはまさに絶好（ぜっこう）の機会（きかい）で、これを逸（いっ）するイノケンティウスではない。

1-4-3-16無条件降伏（む）（じょうけん）（こうふく）に近（ちか）い条件（じょうけん）で彼女（かのじょ）の願（ねが）いを容（い）れ、幼王成人（ようおう）（せいじん）までは、両（りょう）シチリア王国（おうこく）すなわち旧（きゅう）ノルマン・イタリア王国（おうこく）は、事実上（じじつ）（じょう）の教皇領（きょうこう）（りょう）となった。

幼王フェデリーコ四歳にして孤児となる
1-4-3-17実権（じっけん）をすべて教皇（きょうこう）に譲（ゆず）り渡（わた）したコンスタンツァは心身（しんしん）ともに疲（つ）れ果（は）てて数ヶ月（すうかげつ）の後（のち）に病没（びょうぼつ）。1-4-3-18フェデリーコは四歳（よんさい）にして孤児（こじ）となった。

ミチオ書・第一部・（文章）歴史物語・藤沢道郎
ページ製作者：ささくら修道会　笹倉正義

2014/11/1、 2017/2/16、2018/12/27
（ささくら宗）聖母マリヤ福音教会：通称：「オリジナル教会」