(5)修道会設立の引見(いんけん)

新たなワルド派なのか 1-3-5-1教皇がアッシジのフランチェスコとその十二人の弟子を引見（いんけん：＝目上の人が招き入れて会うこと）したのは、ちょうどこの異端征伐（せいばつ）にとりかかった時期であった。1-3-5-2当然教皇はワルドのことを思い出したに違いない。1-3-5-3たとえ彼が思い出さなかったとしても、顧問（こもん）の枢機卿（すうきけい、すうききょう：＝教皇の最高顧問。司教の中から選ばれて、教会の行政や教皇の選挙に携わる僧職）たちの一部は明らかに危険を感じていた。 1-3-5-4フランチェスコはあまりにもワルドによく似ている。1-3-5-5あのように極端（きょくたん）な理想を説く者は必ずや教会に対して不満を持ち、結局は教会に対して牙（きば）をむくに違いない。1-3-5-6許可をお取り消しになっては、と彼等（かれら）は教皇に迫（せま）った。 毒（清貧）をもって毒（清貧）を制す 1-3-5-7だがイノケンティウスは賢（かしこ）い教皇だったから、今（いま）異端（いたん）諸派を支（ささ）えている民衆的（みんしゅうてき）基盤（きばん）をこちらに取り戻すことなしには教会の将来が危（あや）ういということを、痛感していた。1-3-5-8そのためには、正統（せいとう）の聖者がどうしても必要だ。1-3-5-9あのフランチェスコという若者がどれだけの器量（きりょう）か分からぬが、敵に回さず、育成すべきであろう。1-3-5-10こちらから追いやるのでなければ彼は決して異端者にはなるまい。 直感、引見の若者はワルドとは違う 1-3-5-11そこで教皇は夢の話をして反対を抑（おさ）えた。1-3-5-12「昨夜（さくや）私は夢を見た、このラテラーノ宮（ぐう）が今にも倒れそうに傾いている夢を。1-3-5-13一人（ひとり）の修道士が駆（か）けつけて、自分の肩（かた）で倒れかかった建物を支えてくれたのである。1-3-5-14今日（きょう）会ったあのフランチェスコという若者は、その夢の修道士と同じ姿、同じ顔立（かおだ）ちをしていた。1-3-5-15それゆえ私はその場で彼の願いを許した。1-3-5-16あのお夢はきっと神のお告げに違いなかろうよ」。

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ミチオ書・第一部・（文章）歴史物語・藤沢道郎 ページ製作者：ささくら修道会　笹倉正義

2014/10/25、2017/2/15、2018/12/22、2021/3/10 （ささくら宗）聖母マリヤ福音教会：通称：「オリジナル教会」